国語施策・日本語教育

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議事 第2次アメリカ教育使節団の報告書について

佐 野

 わたくしのようなしろうとが報告書に関係するようになったのは,使節団に対する接待員として教育刷新審議会の委員中から7人出ることになり,わたくしがそのひとりとして国語問題を担当したからである。
 国語問題については,9月6日大倉集古館で,7委員のほかに土岐・安藤・有光・西尾諸氏の参加を得,わたくしが司会者となって,約1時間,先方のかたがたと会って事務的に説明をした。
 まず,わたくしが,当用漢字表・同音訓表・同別表・同字体表・現代かなづかいなどが制定され,これが政府のほか有力新聞・月刊雑誌などの同調を得て,国字の平易化が推進されたこと,公用文の口語化,ローマ字についての実状,国語研究所の設立,国語審議会の改組とローマ字調査審議会の国語審議会への統合,国語問題要領のこと,国語審議会の現状,その他について説明した。
 次いで,安藤氏が国語改革とローマ字について,土岐氏が文体の平易化について,西尾氏が国立国語研究所について,有光氏が学術用語問題について,ともども所見を述べられた。
 9月16日には,個々面接があり,わたくしと西尾氏とが使節団のホックウォルト氏に1時間会い,国語改革について種々質問を受け,これに答えた。たとえば,国語の改革は進化的なものと革命的なものとどちらの方法がよいか,進化的な方法がよいとすれば,その方法にはどんな道があるかなどという問を受けた。これに対して,それには

  1.  漢字を制限して使っていく方法
  2.  かなだけを用いる方法
  3.  ローマ字による方法

の三つの道があると答えた。また,自然科学者のなかにローマ字を好んで用いている人があること,ローマ字の3式の実行状況,現在国語審議会ではこの3式統一の審議が行われていること。もし si とshi とはどちらを用いてもよいというように3式が協調すれば,案外統一は早くできるのではないかと思うというような意見,その他を,先方の質問に応じて答えた。

千 葉

 ただいま,たとえば si とshi とどちらでもよいというような許容を設けたほうがまとまりが早いと言われたが,この問題は審議中であって結果はどうなるかわからない。それは,個人として答えられたことか,審議会として答えられたのか,影響が大きい問題だから一言伺っておきたい。

佐 野

 まったく個人の資格で会い,答えたのである。

千 葉

 さきほど,安藤委員も許容を認めたほうが早くまとまるだろうと言われたが,それも審議中であって,決議されたことではないと承知してよろしいか。

安 藤

 さしつかえない。

土岐会長

 次に,局長から報告書の取扱その他についてお話を伺いたい。

関口局長

 報告書は,使節団から連合軍総司令官に提出されたものであってC.I.Eがそれを好意的に教育刷新審議会と文部省とに参考として示されたのである。ゆえに,これに対するこちらの態度は自由である。これをこちらが取り上げてS.C.A.Pの許可があった場合に,それはS.C.A.Pのポリシーになる。したがって,日本側でなにか具体策を立てる場合の本文としては,文部省の訳文によることになっており,ただいま翻訳を急いでいる。国語問題についての勧告に対しては,国語審議会の意見を伺った上で,われわれの考えをまとめたいと思っている。

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