国語施策・日本語教育

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国語問題要領

5 国語問題審議の基準



 以上に述べたような国語の現状と国語問題の歴史とから見て,新しい国語審議会がその任務をつくすには,国語の理想的なありかたについて,たえず現実に立脚しながら,慎重に考慮しなければならない。それについては,まず次のようなことが考えられる。
 義務教育を容易にすることができるかどうか。国語の学習は義務教育の基礎であり,国語教育の目的は,国語による表現を確実にし,理解の能力を進め,社会生活にさしつかえないようにすることである。国語を覚えるために,児童や生徒にむりな負担がかかることは避けなければならない。
 一般の言語生活,特に文字の使用と理解とを能率化することができるかどうか。文化の向上が,少数のすぐれた人たちを必要とすると同時に,一般の水準を高めることももちろん必要であって,多くの人々が容易にまた正確に,理解したり話したり書いたりできるように方向づけなければならない。特にその方法は,あくまでも現実に即した,実行可能のものでなくてはならない。
 公衆に対する言語として適用できるかどうか。公衆に対する言語は,新聞・公用文などのように文字によるものと,講演・放送などのように音声によるものとに分けられる。文字によるものについては,印刷などに関する諸問題を考えに入れることもちろんであり,字体のことも研究しなければならない。
 文化を創造したり受けついだりするのに,どんな影響を与えるか。これまでの文化遺産を受けつぐ一方,創作の自由をもさまたげないためには,国語教育のありかたや国語改善の方針などについて,たえず反省する必要がある。しかも,これは決して単独な問題でなく,前に述べた諸問題とたがいに関連させて適切な判断をくださなければならない。
 国語審議会は,およそ以上のような諸条件のもとに,現在考えられる限りのいろいろな立場を,できるだけ客観的に取りあげて議題とし,それをまずそれぞれの部会で討議し,その緒果を少数意見とともに総会に提出する。総会ではさらにそれを検討し,なお順次に新しい議題を定めてゆく。
 会議は原則として公開であるが,必要に応じて懇談会のようなものを開くことも考えられる。議決の結果は,その実施を政府に建議するばかりでなく,広く世論に訴え,一般社会の協力による文化運動として強く推進してゆかなければならない。

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