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2 正書法の問題

正書法について(報告)2

 「言う」はユウという発音もあるが,「現代かなづかい」において「いう」とするのは,その語幹が動かないという意識によるものである。
 「現代かなづかい」の2語の連合における連濁の「ぢ」「づ」の書き方は,語の構成意識をかなづかいの上に表わしたものであるが,しかし,2語とは「ぢ」「づ」に始まる語の語意識によって前後の部分が二つの部分からできている意識のあるなしによって決まると考えられる。その意識は,後半を漢字で書く際の書き方,後半の語を含む語群との連想,その語と派生関係にあると思われる語との連想がささえとなる。
 もっとも,これらのうち,「家中」「一日中」の「〜中」などは,「〜じゅう」とすることに多少問題はあるが,しかし,ジュウと発音するものの中に「ぢゅう」と書かなければならない語がないから,「じ」と書いてもよいことになる。のみならず,「家中」「一日中」の「〜中」は,いっぱいの意味を添える接尾辞に転じて,語原とは離れてきているから,語原によらず「じゅう」と書いてもさしつかえない(3)。
 このように,語意識というものを導入すれば,「現代かなづかい」の中の難点といわれるものに対して説明がつき,「現代かなづかい」の適用もいっそう合理的に扱えることになろう。これは,「現代かなづかい」が歴史的かなづかいの体系にもどることではなくて,音韻表記の性格を保ちつつ,われわれの現代日本語の語意識を基としようとするわけである。
 「現代かなづかい」の連濁の問題点について具体的に説明すれば,次のようになる。


 「ぢ・じ」「づ・ず」の書き分けについて,語意識の考えを導入し,疑問の語を処理してみると,「2語の連合によって生じたと書く。」という場合の「2語の連合」ということばは,その解釈に幅をもたせる必要が生じてくる。2語の連合といっても,必ずしも独立する語どうしの結びつきに限らず,接頭辞・接尾辞のような接辞と独立が明らかな語との結合をもその中に入れて考えられる。こう考えてくると,現代語として語構成の分析的意識がある場合には,と書くことになる。このときは,漢字の連想を伴う場合もあろう。
 以上の考え方に従えば,たとえば次の語にはを使うことになるであろう。


正書法 ぢ・づ


 また,次のような語は,現代語としては,語構成の分析的意識のないものと考えられよう。したがって,これらには,を使うことになるであろう。


正書法 じ・ず


 語構成の分析的意識は,現状においてはかなり個人差のあるものであるから,以上の判定についても見解の相違はあろう。(たとえば,特に,*印をつけてあるもののごとき。)しかし,「現代かなづかい」を前提とすれば,この程度の判定を認めることによって正書法の解決に一歩近づくことができるであろう。
 今期の国語審議会においては,かなの学習についてかたかなの教え方を正書法の問題として位置づけたが,さらに「現代かなづかい」の適用上の問題点を考え,また,「当用漢字表」による漢字の置きかえについても,その一部分について成案を得たわけである。
 われわれは正書法の確立について,今後さらに広く実践と研究が行われることを期待するものである。

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