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3 かなづかい・漢字の問題 現代かなづかいの適用について

 この問題について,部会では,(1)現行のものの適用上の疑問点について語例を示せばよいという現状維持説と,(2)現行のものは,歴史的かなづかいを残存し,現代語音にもとづくという趣旨が徹底していない部分があるから,これを改訂すべきであるという改訂説の二つの意見に分れた。改訂説の中にも,全面的改訂の意見もあれば,部分的改訂にとどめる意見もあり,だいたいの空気としては改訂説のほうが多かったが,一方,今現代かなづかいを改めることは時機が早すぎるという意見も強かった。
 そこで,第24回総会(昭和30.3.2)に中間報告をして,その点について総会の意向をただした。総会では,現状維持説がやや強く,しかし,一部分を改訂するくらいのことはやむをえないだろうということであった。
部会は,総会の意向に沿って,現代かなづかいの告示を改訂しないたてまえで,その適用上の不明確な点について一語一語審議し,「現代かなづかいの適用について」という成案を第29回総会(昭和30.11.10)に提出した。
 この案は,

  1. 現代かなづかいの細則第3のただし書き@「2語の連合によって生じたと書く。」を適用するもの。
  2. 現代かなづかいの細則第3のただし書きA「同音の連呼によって生じたと書く。」を適用するもの。
  3. 現代かなづかいの細則第9「に発音されると書く。」を適用する語で,長音とまぎらわしいもの。
  4. 現代かなづかいの細則第4のただし書き「助詞のは,と書くことを本則とする。」を適用するもの。

について,用例を豊富に示したものであるが,総会では,1.について,「ぢ・じ」「づ・ず」の書き分けの基準が明確でないため異論が出て,ついに決定するに至らなかった。
 なお,部会の意見として,部会長の審議報告の最後に,次のような希望がつけ加えられている。
 今回は,いろいろな事情を考えて,現代かなづかいの告示を改めない範囲で,適用上の疑点を解決することに努めたが,なにぶんにも,現代かなづかいは,成立当時の事情によって,歴史的かなづかいとの対比の上に組み立てられ,部分的に旧かなづかいの残存した箇所もあり,これらは成立当時においてはやむをえない処置であったが,今日では,現代語音にもとづいて,これらに整理を加える必要があると考えられる。これは審議中にもしばしばくり返された。しかし,これに対しても部会の中には反対の少数意見もあり,少数意見ではあるがなかなか強いものであったし,また,逆に全面的に改訂するという強い意見もあった。なお,世論を聞き,各方面に与える影響を考えると同時に,学術的調査研究をも行って,慎重に検討しなければならない大きな問題である。部会は,総会でこの問題の解決が考慮されるよう希望するものである。


(注) この現代かなづかいの適用上の問題については,その後,正書法小委員会で正書法の立場から審議され,一応の結論に到達した。(「2正書法について」を参照。)


 その後,部会は新しく同音の漢字による書きかえの問題を取り上げて審議することになった。

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