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6 ローマ字教育の問題 ローマ字調査分科審議会2

 第3回分科会(昭和30.1.26)では,ローマ字教育のあるべき望ましい姿,ないしは,ローマ字教育が国語教育において占める位置というような全般的な事がらについて検討した。これは分科会における,この問題に対する審議の方向づけとみられるもので,この結果,ローマ字教育の問題に関して審議していくには,次のような事がらを考慮しながら進める必要があることを確認した。

  1.  現場におけるローマ字教育の現況を分析して,ローマ字文の学習指導が実際にどのように取り扱われているかを知ること。
  2.  現行の制度と現場における実際の取扱とを考え合わせ,現状から出発して考えていくことが必要ではないかということ。
  3.  教育関係と新聞関係とはわりあいに理解があるが,社会一般では,まだ,ローマ字教育に対する認識が浅いということ。
  4.  小学校と中学校とのつながりは,制度や指導法としては整っているが,実際はどうであるかということ。
  5.  教員養成機関に,ローマ字教育に関する講座とか単位とかを設けることについて,および,教員免許状の交付について,なんらかの考慮をする必要はないかということ。
  6.  小学校における文法的内容についての学習指導に,ローマ字文・ローマ字書きを利用すること。

 以上の諸事項を頭におきながら,第4回分科会(昭和30.2.24)以後しだいに審議を進めていった。第5回分科会(昭和30.3.11)から第11回分科会(昭和30.10.17)へかけては,現行の検定ローマ字教科書が,いわゆるローマ字のよさをどのように教科書面に利用・活用しているかを,実際の教科書にあたって調べ,また,どのような種類・内容のものにローマ字文を使えば,効果の上がる学習指導を行うことができるかについて検討し,さらに,現在の国語教育における問題点とか,困難点とかについて,実際に現場の声を聞いたりなどした結果(これをまとめたものが,資料〔教5〕である。),次のような考えに到達した。
 国語教育の目的としては,いろいろなことが考えられるが,その一つとしては,事実を正しくつかみ,それを効果的に,的確に表現し,また,理解する力をつけることにあるということができる。

  1.  この点から考えて,小学校の国語教育における文法的内容についての学習指導について,考えなおしてみる必要があると思われる。
  2.  これには,ローマ字文をもっと実質的に利用する方法を考えてみる必要がありはしないか。もっとも,これは,現行制度の時間数などを増すことを意味するものではない。
  3.  ローマ字文の実質的な利用は,やがて,発音教育にも役だち,また,文体の改良や標準語の普及にも役だたせることができよう。

 以上のようにして,今期の分科会は,その審議の対象を,一応,国語教育における文法的内容についての学習指導ということにしぼり,第12回分科会(昭和31.1.27)から第16回分科会(昭和31.5.24)に至る5回の審議において検討を加えて,分科会としての考えをまとめていった。もっとも,この点にしぼって考えたというのは,最終的結論として,この点にしぼるという意味ではなく,一応の段階としてである。
 すなわち,分科会としては,小学校の国語教育における文法的内容についての学習指導において,ローマ字文・ローマ字書きを積極的に利用することは価値のあることと考え,その具体的方策について審議を進め,さらに全般を見わたして,国語教育におけるローマ字教育の占める位置を明確にし,ローマ字教育の目的・方針などについて詳しく再検討する予定であったが,その段階に達しないで,任期が終ることになったのである。
 そこで,第16回分科会において,国語審議会総会に対する報告に盛るべき内容をどうするかについて話し合い,今期の任期内に早急に最終的結論を見いだすことはとうてい不可能であるから,この際は,これまでにじゅうぶんに検討し,確認された事がらをまとめて,ありのままに報告すべきであるという意見が出た。これに基いて作成された「報告(案)〔教7〕」を第17回分科会(昭和31.6.14)において検討し,多少修正の結果,〔教8〕を作成した。なお,念のため,これを分科会の全委員に郵送し,意見を求めた。
 その結果としてまとめられた「国語教育におけるローマ字教育について」を分科会長から,第32回国語審議会総会(昭和31.7.5)に報告し,同総会はこれを可決して,同日付で文部大臣あて報告した。

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