国語施策・日本語教育

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議事 審議

土岐会長

 ただいまから第27回総会を開く。お忙しいところお集りいただきありがとうございます。初めに,保科委員の病状について国語課長から報告をしてもらう。

白石課長

 (保科委員の病気経過報告。)

土岐会長

 お手もとにさしあげた〔資料30〕は,前の総会でお話しした,29年度にやった実験調査の結果を要約したものである。これについて説明を願う。

白石課長

 これは,初等中等教育局で行ったものであるが,わたくしから説明する。昭和29年度に,東京の久ヶ原小学校と神奈川県の御所見小学校の2校で1〜3年の児童について実験調査した結果の学校側の報告の抜き書きであって,初等中等教育局からは,いずれまとめたものが出るはずである。〔資料30〕は,1年生でかたかなを学習させた実験の結果である。現在の制度(2年からかたかなを教えるたてまえ)を,たてまえをあまりくずさないで1年でもかたかなを学習させた実験である。現在の教科書を修正して教え,他の教科または生活環境から語いを補ったものである。

(以下〔資料30〕について説明。)

土岐会長

 ただいまの説明について質問はないか。

白石課長

 なお,これは,ひらがな文の中でかたかなを指導した形となっている。先生がたは,1年生でも指導がよければある程度かたかなの習得ができると報告している。

田 口

 現在の状況は,この中〔表30〕のABCDEのコースのどれに似ているか。また,A〜Eのコースはそれぞれちがう先生が教えたのであるか。

白石課長

 教科書以外の教科で教えるという方法DEなどが現行のものに似ているといえる。現在は,1年ではかたかなは教えていない。2年生以上はAになる。また,各コースは,皆ちがう先生が指導した。

時 枝

 この調査は,どういう目的でしたものであるか。

白石課長

 かたかなの学習をどうしたら効果があがるかということである。指導しない字というのは,学校で教えなくとも知っている字を調査したということになる。ここのひらがな・かたかなのいずれを先に教えるかという問題とは直接には結びつかない。

土岐会長

 1年でかたかなとひらがなを併行して習わしていくことの可能性を調べたものである。つまり,1年でかたかなを習うようにしたらどういうことになるか,指導の可能性について実験調査をしたものである。

時 枝

 これには,混用の問題は出てこないか。

白石課長

 さらに申し上げる。かたかなでもひらがなでもどういう方法で指導したら効果があがるかという実験の結果である。かたかなで書く習慣のあるものを1年生で教えたのである。その部分がこの会議に関連があると思って載せた。習得状況を問題の部分だけ数字で示した。これをどう利用するかということと,この実験の目的とには多少のずれはあると思う。また,混用の問題は当然実験している。しかし,先生の指導によって防げるという報告があった。

大 塚

 このクラス以外で,在来のやり方をしているクラス(1年でかたかなを教えないクラス)のかたかなの習得率はどのくらいであるかわからないか。対照となるものがほしい。

白石課長

 29年4月の事前テストの成績が参考となるだろう。

時 枝

 さきに,きょうの審議の方針を伺っておきたい。

土岐会長

 今までの資料の中に〔資料30〕のようなものはまだなかったので,これも参考として,さきの3回の総会の意見とあわせて今後どうやっていくか。だいたい方向はついているようであるが,まだまとまらないので,小委員会を設けてまとめるか,また,このまま総会でまとめるかをおはかりするのである。

時 枝

 どうも問題点がはっきりしないので,どう考えていいかわからない。

遠 藤

 かたかな先習の論と,従来の論の根拠とを整理してから考えないといつまでも同じことをくり返すことになる。整理したものをよくたたきこんだところから手がかりで出るのではないか。

土岐会長

 前回に出した分類表(第26回総会議事録別紙)が整理したものと思う。あの中のどの部分のどれをとるかということで考えていけば,まとまっていくのではないか。

遠 藤

 その後に出た意見もあるのではないか。それらも広く当って分類したら,もう少しはっきりした根拠となるものが出てくるのではないだろうか。

土岐会長

 あのへんのところで,考えられる線は出ているのではないだろうか。それ以上は,材料はふえるがある線は出尽しているように思う。意見は出せば出るだろうが,どの部分が多く出たということになるだけで,いろいろの線はもう出ていると思う。

遠 藤

 かたかな先習論でいえば,文字の難易がおもで,教育上の立場からの論,現在の言語環境からこどもには,かたかなを先にしたほうがいいという立場の論などそれぞれの立場からの根拠であるということが出てこないと判断が出てこない。それが前ので出ていればいい。

土岐会長

 学習には,どちらを先に与えてもさしつかえない。学校では混乱なく教えうるという資料は出ていたと思う。

白石課長

 前の分類は必ずしも立体的に整理したものではない。

遠 藤

 そういう点でわかりにくいのではないか。

中 島

 現実の社会では,ひらがな漢字まじり文,かたかな・ローマ字が使われているが,審議会としてこれらをどうしたらよかろうかという意見が裏にあるかどうか。現実に即して教育をどうするかという問題はないか。

土岐会長

 中央教育審議会の答申に基くものであって,国字論的の問題はない。

中 島

 しぼって言うと教育の問題になるのではないか。(1)現行のまま,(2)かたかなの先習,(3)併用(正書法)の三つのほかに,(4)現在かたかなの教育が手薄であるからどうしたらよいかの問題になる。教育の問題となると,国語審議会としてどう取り扱ったらいいか。

時 枝

 教育の技術の問題である。

土岐会長

 教育技術の問題であるということがはっきり出れば,国語審議会としては,この問題についてはそれで審議を果したことになる。あとは,教育課程審議会でやるということでいいのではないか。その旨を文部大臣へ回答すればいい。

吉 田

 教育技術の問題ということは,明らかであるが,大きく考えれば国語政策とも考えられる。そうなると問題ではないか。

土岐会長

 ひらがなを先に習っている現在に対しての問題であって,優劣論ではない。両方とも重要であるが,いかに習わせるかということは,教育技術上の問題になるのではないか。

有光分科会長

 国語教育技術上の根本論の中の正書法を確立するということを認める。

土岐会長

 正書法として考えれば,できるだけ早く両方を教えることが必要である。教育技術だけでなく,社会生活にも必要であるから,国語政策としても重要なことである。

中 島

 ひらがな・かたかなを両方ともなるべく早く習わせるべきであるという結論に対する反対はないか。

吉 田

 異論はないのではないか。

松 坂

 国語教育の4団体の声明書によると,現場では現在の方法がよいと思っている。現代かなづかいの時にも例があった。国語教育技術の問題であるといって逃げるのはよくない。

土岐会長

 国語審議会としての回答を一応出し,そのあとでもっと広い立場から問題を論議するのはよいと思う。総会の限界はそこにある。ひらがな・かたかなのどちらを先にするか,方法の問題であって,全部かたかなにかえることとは別の問題である。

時 枝

 将来のことではなく,現実にどうしたら効果があがるかということである。

照 井

 わたくしの経験から,できるだけ早く両方教えることが必要である。かたかな・ひらがなを同時にやっていく。3年の終りには,簡単な読み物が読めないと困る。昔は,1学期にかたかなを終り,2学期にひらがなにはいっていった。かたかなのうしろにひらがながはいっているカードで自習させる。筆記の誤りも少なかった。今の場合と反対で,併行していたが少しも困難を感じなかった。

中 島

 提出している問題,困っている問題は,全部かたかなでやれということではない。現状で併用されている。かたかなをどう使うかという方法も別として,2年の終りにかたかなを全部教えきれるよう努力する。その方法を考えることである。諮問に対する答としては,1年ではひらがなを教えている。2年でかたかながじゅうぶんには習得されない。かたかなをもっと学習すべきである。これは技術的な面であるということで,あとの技術論をここで決めるのはむずかしい。学習の方法論を言われると困る。実験は貴重であるが,意図的にやられたものであるから,実験の結果をいくら集めても結論は出ない。

土岐会長

 現在では,1年をかたかなだけでやるという実験はない。かたかなをどれだけ多く取り入れるかというものだけである。

中 島

 現行の方法を尊重してやることとして,かたかな学習の状況は悪いということに反対論はないか。

遠 藤

 現状維持論に二つある。(1)今のまま(ひらがな先習,2年からかたかな)でいいとするものと,(2)文字環境から考えて(1年からかたかなを与える)改善,拡充する論とである。

有光分科会長

 現状は,かたかながどれだけ使えるか。ひらがなと同じようにかたかなを使わせなければならないか。読ませるだけでよいのか。

中 島

 電報などだいたい読めないと困るだろう。読めないと社会的支障をきたす。しかし,現在では読めない。

有光分科会長

 1年生で電報が読めないというのがいけないのであるか。そのころから教えれば,社会人となってからもよく覚えているというのであるか。これは,何を求められているのであるか。

颯 田

 中島委員は方法を述べているし,松坂委員は将来の問題を述べており,まったく違う意見である。諮問の要点にあった回答をすべきである。質問の要点を確定する必要がある。

土岐会長

 内容はすでに何回も確認されている。ひらがな先習に異論があるから考えろという答申が課題なのである。この課題の限界の中で考えればいい。ほかに大問題があるといういうことと,それらを回答といっしょに出すかどうかということは別である。中央教育審議会のは,異論があるから考えろということで,かたかなにするとは答申の中に出ていない。

中 島

 限界を誤るとたいへんなことになる。現行のものをもととして考えなくてはならない。2年までに両方100パーセント近くなるには可能なりや否やの実験をした結果を出してやればよい。将来のことは別に考えるべきである。

土岐会長

 〔資料30〕は,一応そういう形が出ているものとみてもいいのではないか。

照 井

 期間はそう長くしなくても,両方習得させることはできると思う。

石 井

 方法・技術について,技術は単なる技術ではない。国語教育では,現在の文字をなるべく早く身につけさせることである。どういう順序で,どのくらいの時間でやるかということが国語科での問題になってくる。国語審議会では,かたかなはどういう場合に使うかが論議されている。かたかなが読めないといわれているが,電報の読めないのは,文字が読めないばかりでなく電文という文章が読めないのである。現状は2年ではじめてかたかなが出てくる。また,かたかなで書くべきものも,1年ではひらがなで出ている。ここに問題があるのである。これは,教育課程の問題である。国語の時間が少ないというのも,カリキュラムの問題であるから,これらを他のところで研究しろというのは国語審議会の責任回避ではない。

土岐会長

 きょうまで4回総会を開いた。今までに出た意見を文章にまとめるような作業にかかってはどうか。

中 島

 回答案をまとめることにしてはどうか。

颯 田

 回答案はもう出ているように思う。これをまとめて,あとのことは,国語審議会がイニシアチブをとっていけばいい。中島委員の案に賛成。

上 野

 回答案は一つではなく,いくつか作って,さらにそれらを検討するようにしてはどうか。

中 島

 回答案をいくつも出されては困る。一つの案の中に二つなり三つなりを含めることはいい。かたかなの学習について国語審議会としてはこう考える,技術的には考えてくれという回答案を出せばいい。

時 枝

 いろいろな問題はあるが帰するところは教育技術の問題であるから,国語審議会としては,こう考えられるというふうにすればよい。

土岐会長

 いろいろなケースがあるが,国語審議会としては,こういう形が考えられるというところであろう。

松 坂

 細かな教育技術は専門家に任せるのはよいが,現在のかたかな学習は不満である。両方ともなるべく早く習得できるようにするというような条件でならいい。

照 井

 技術を細かい技術と考えられては困る。教育全般に具体化されるようなものでなくては困る。

土岐会長

 小委員会を作ることをおはかりする。
 (異議なし)

時枝・中島

 回答案を起草するだけで,研究するのでないから,会長・副会長に一任したい。

土岐会長

 では,次の10人のかたがたに小委員をお願いする。
 なお,これに会長,副会長を含める。


回答案作成小委員会委員
有光,石井,遠藤,照井,時枝,中島,野間,波多野,松坂,吉田
各委員


 第1回の小委員会は,6月23日(木)午後1時半から開催する。
 きょうは,これで終る。まだ時間が多少あるから,自由に懇談をお願いする。ありがとうございました。

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