国語施策・日本語教育

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議事 ローマ字調査分科審議会

有光分科会長

 ローマ字調査分科審議会は,昭和29年11月1日に第1回の会議を開き,きょうまでに合計11回の会議を重ねた。分科会が審議すべき事項のうち,さしあたって重要な大きな問題としては,教育の問題とわかち書きの問題とがあるが,今回はまず教育の問題を取り上げることとなった。ところでこの問題は,教育課程審議会の審議事項とも関連が深いので,分科会としての審議を始めるにさきだって,教育課程審議会と話し合って,互にローマ字教育に対する意向・見解を承知しておいてはどうかとの意見が出され,これについて検討の結果,採択されたので,当局を通じて分科会の意向を先方に伝えたところ,当時教育課程審議会は委員の発令が済んだばかりで,事実上の発足をしていないということであったので,やむをえず,同審議会との話合いは一応延期し,分科会として独自の線で審議を進めていくこととなった。その後審議の方向を見いだすために,数回にわたって自由討議の形式で話し合った結果,だいたい次のようにして審議を進めることになった。

  1.  まず,現行の検定ローマ字教科書が,いわゆる「ローマ字のよさ」をどのように利用しているかを調べる。
  2.  どのような教科に,ローマ字を用いれば効果の上がる学習指導が行えるかについて検討する。
  3.  現在の国語教育における問題点とか困難点とかについて,一応ローマ字教育とは切り離して,実際に現場の声を聞く。

 以上の方針を定め,資料を集めて審議を進めた結果,分科会としては現在までのところ,次のような見解に達している。
 国語教育の目的の一つとして理論的に表現し,理解する力をつけることに努めることがたいせつであると考える。

  1.  この点から考えて,小学校における文法教育を考えてみる必要がある。
  2.  それには,ローマ字文をもっと実質的に利用することがよいのではないかと思われる。(現行の時間を増すという意味ではない。)
  3.  これはやがて,論理的思考の確立,および広い意味の文法教育である音声教育に役だち,さらに文体の改良,標準語の普及にも役だつであろう。

 だいたい以上に述べたとおりであるが,今後なお,慎重に検討を続け,妥当な結論を得たいと思っている。

土岐会長

 ただいまの報告について質問はないか。なければ第2部会の報告をしていただく。

颯田(第2部会長)

 第2部会では,放送・映画・演劇・教育の各部門を通していろいろなふだんの会話について審議したが,けっきょく,話しことばをよくするには,


 望ましい話しことばのあり方とはどんなことか。
 それを普及するにはどうしたらよいか。


ということを研究するのがたいせつな仕事であると考え,まず,(1)望ましいことば,(2)望ましくないことばの実際を尋ねてみた。


(1) 望ましいことば

   ことばの選択が庶民的で親しみのあること。また,言いまわしが自然であること。
(NHK放送録音の「ある郵便配達人の話」)
   分の思うことを自分たちのことばで自由に言う傾向が見られるようになったこと。
(NHK連続放送番組録音「青年の主張」)

(2) 望ましくないことば

   一般にむずかしいことばや言いまわしが,ふだんの会話にまだかなり行われている。特に文字に書いてみなければわからない語がなお多い。(例は時間のつごうで省く。)
   ある限られた職場で使われている専門語,または略語をそのまま一般の話しことばとして使おうとする傾向がある。(例は略す。)
   流行語のために,望ましいことばが消えていくことがある。
   学校教師が,教科の内容を伝えるときに,用語の選択や言いまわしに対する注意を怠ることがある。
   さまざまの対人関係を表わす会話の用語が適当でない場合がある。
 例 先生,夏休みにどこへ行った。

 これらの実情については,われわれ自身大いに反省しなければならないが,しかもそこには徐々ではあるが進歩の状態が見られ,今後一般の反省と努力しだいで,これからの日本語が大いによくなっていく希望をじゅうぶんにいだくことができる。ここでわれわれは,(1)細部にわたって,望ましいことばのあり方を尋ね,(2)望ましいことばを普及する方法を研究していかなければならない段階にたちいたった。ついては,これについての資料の提供の機関がほしい。国宝保存機関のような大機関を作ってよいのではないかという意見も出ている。われわれは方針は一致しているが,方針の実行手段についてはまだ一致していない。国家が機関を作ってくれるよう希望する。

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