国語施策・日本語教育

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議事 国語教育におけるローマ字教育について

土岐会長

 続いてローマ字調査分科審議会の報告をお願いする。

有光分科会長

 ローマ字分科審議会は,17回にわたって分科会を開いた。最初,ローマ字教育およびわかち書きのどちらを取り上げるかについて自由討議を行った結果,ローマ字教育を取り上げることに決まった。この問題は,教育課程審議会と密接な関連があるので,連絡しながら審議を進めたかったが,教育課程審議会の発足が遅れたので,話し合う機会がもてず,こちらだけで審議を進めたのである。
 ローマ字教育は,昭和21年に設けられたローマ字教育協議会が出した「ローマ字教育を行ふについての意見」を参考として決定された「国民学校におけるローマ字教育実施要項」によって昭和21年度から始められ,現在は学習指導要領に基いて実施されるわけであるが,分科会としては,ローマ字教育の目的や方針が実際の現場の教員に,なお,じゅうぶんに徹底することが必要であることを認めたわけである。
 審議を進めるにあたって,まず,次のような事がらを考慮しながら行うことが必要であることを確認した。(1)現場ではローマ字教育がどんなふうに行われているか。(2)制度と現状とを考え合わせ,現状から出発して考えていくこと。(3)社会一般ではローマ字教育に対する認識がまだまだ浅い。(4)小学校から中学校へのつながり。(5)教師養成の問題。(6)小学校に置ける文法的内容についての学習指導に,ローマ字文・ローマ字書きを利用すること。以上によって審議を進め,現行の検定ローマ字教科書にあたったり,現在の国語教育上の困難点とか問題点とかを調べたりした結果,(1)小学校の国語教育における文法的内容についての学習指導を考え直してみる必要があること,(2)それにはローマ字文をもっと実質的に利用する方法を考えてみること,(3)なお,これはやがて発音教育や標準語教育にも役だつものであることなどに考え及んだのである。
 このようにして,今期における分科会のローマ字教育についての審議の対象は,最終的段階としてではないが,一応,国語教育における文法的内容についての学習指導ということにしぼられてきたわけである。つまり,分科会としては,小学校における文法的内容についての学習指導において,ローマ字文・ローマ字書きを積極的に利用することは価値のあることと考え,その具体的方策について審議を進め,さらに全般を見わたしてローマ字教育の位置づけなどについても考えていく予定であったが,まだその段階に至らないうちにわれわれの任期が終ることになったのである。そこで,分科会としては,これまでに審議を尽して確認された事がらを取りまとめて,次のように報告するしだいである。(資料〔総5〕「国語教育におけるローマ字教育について」読む。)

土岐会長

 ただいまの報告について,質問・意見はないか。なければ承認されたものとして決定する。
 次に,前例によって今期の国語審議会報告書を出すことになるが,今までの報告・議事録等で訂正を要する箇所があれば,国語課のほうへ至急ご連絡願いたい。
 なお,正書法について,さきほど残した部分について議事を続ける。

金田一副会長

 資料〔総1〕の4ページ,「もっとも,これらのうちには」以下「『じ』『ず』と書いてもよいことになる。」までを,「もっとも,これらのうち,『家中』『一日中』の『〜中』などは,『〜じゅう』とすることに多少問題はあるが,しかし,ジュウと発音するものの中に,『ぢゅう』と書かなければならない語がないから,『じ』と書いてもよいことになる。のみならず『家中』『一日中』の『〜中』は,いっぱいの意味を添える接尾辞に転じて,語原とは離れてきているから,語原によらず『じゅう』と書いてもさしつかえない(3)。」というふうにしたらどうか。

松 坂

 たいへんけっこうである。

土岐会長

 これは最大公約数的なものである。学問的には多少意見があるかもしれないが,このへんで御了解いただきたい。
 異議がなければ,これで承認されたこととして決定する。

 これで本日の審議は全部終った。きょうは今期の最後の総会で,任期を無事に終ったことはまことに御同慶に堪えない。長い間熱心に審議に御努力いただき,まことに御苦労でした。厚くお礼を申し上げ,めでたく閉会することにする。

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