国語施策・日本語教育

HOME > 国語施策・日本語教育 > 国語施策情報 > 第4期国語審議会 > 「送りがなのつけ方」について(建議)

「送りがなのつけ方」について(建議)

昭和33年11月18日

  文部大臣 灘尾弘吉殿

国語審議会会長 土岐善麿

「送りがなのつけ方」について(建議)

 国語審議会は,国語表記のうえで送りがながさまざまに行なわれている現状にかんがみ,そのつけ方のよりどころを定める必要を認めたので,正書法部会においてこの問題を審議した結果,昭和33年11月18日第37回総会で別冊「送りがなのつけ方」を議決しました。
 社会の各方面における送りがなを急速に整理統一することは,送りがなというものの性質上きわめて困難なことだと思いますが,この「送りがなのつけ方」がよりどころとして用いられるよう適当な処置をとられることを要望します。
 なお,まえがきの〔注意〕4のことがらについては,その調整をはかるための機会が必要であると認められます。

送りがなのつけ方

まえがき

  1.  この「送りがなのつけ方」は,当用漢字・現代かなづかいによる現代口語文で,漢字・かなを用いて語を書く場合の送りがなのよりどころを示したものである。
  2.  この「送りがなのつけ方」を定めるにあたっては,方針として次の3項を考えた。
    (1)活用語およびこれを含む語は,その活用語の語尾を送る。
    (2)なるべく誤読・難読のおそれのないようにする。
    (3)慣用の固定しているものは,それに従う。
  3.  この「送りがなのつけ方」の通則は,便宜上品詞別に配列した。

[注意]

  1.  この「送りがなのつけ方」にあげた例の中に,漢字を用いてあっても,かな書きにするほうが望ましいものもある。
  2.  通則6・17・19のただし書きの「省いてもよい」とある項の適用に迷う場合には,それぞれの通則に従って送りがなをつける。
  3.  通則20の適用に迷う場合には,通則19によって送りがなをつける。
  4.  通則20を適用する語は,例としてあげたものだけで尽くしてはいない。送らない慣用が固定しているかいないかについては,なお検討を必要とする。

通則

第1 動詞

  1. 動詞はその活用語尾を送る。
    <例>
     書 読 生きる 考える  
    ただし,次の語は活用語尾の前の音節から送る。
     表す 表れる 現す 現れる 著す 著れる 行う 脅す 断る 賜る 群る 和げる
  2. 活用しない部分に他の動詞の活用形またはそれに準ずるものを含む動詞は,その含まれているものの語尾から送る。
    <例>
     動す(動く) 照す(照る) 及す(及ぶ) 積る(積む) 聞える(聞く) 浮ぶ(浮く) 向う(向く)
     語う(語る) 計う(計る)
     起す・起る(起きる) 終る(終える) 悔む(悔いる)
     定る(定める)
    ただし,次の語は含まれているものの語尾を送らない。
     押える(押す) 捕える(捕(と)る)
  3. 活用しない部分に形容詞の語幹を含む動詞は,その含まれているもの以外の部分を送る。語幹が「し」で終わるものは,「し」から送る。
    <例>
     近づく 遠のく 重んじる 赤らめる
     怪む 悲む 苦がる
  4. 活用しない部分に形容動詞の語幹またはその一部を含む動詞は,その形容動詞の送りがなから送る。
    <例>
     確める 暖まる 静める 異なる
  5. 活用しない部分に名詞を含む動詞は,その含まれているもの以外の部分を送る。
    <例>
     色づく 傷つける 黄ばむ 先んじる 指さす 春めく 横たわる
  6. 動詞と動詞とが結びついた複合動詞は,前のにもあとのにも送りがなをつける。
    <例>
     移る 思 流 譲
    ただし,誤読・難読のおそれのないものは,かっこの中に示したように送りがなを省いてもよい。
    <例>
     打切る(打切る) 差上げる(差上げる) 取扱う(取扱う)
     引受ける(引受ける) 受取る(受取る) 繰返す(繰返す)
     乗換える(乗換える) 割当てる(割当てる)

[備考]
「呼びかける」「払いもどす」のようにあとの動詞をかなで書く場合には,前の動詞の送りがなを省かない。


第2 形容詞

  1. 形容詞はその活用語尾を送る。語幹が「し」で終わるものは,「し」から送る。
    <例>  
     暑 白 高 若
     新い 美い 苦い 珍
    ただし,次の語は活用語尾の前の音節から送る。
     明い 危い 大い 少い 小い 冷い 平
  2. 活用しない部分に他の形容詞の語幹を含む形容詞は,その含まれているもの以外の部分を送る。
    <例>
     重たい 憎らしい 古めかしい
  3. 活用しない部分に動詞の活用形またはそれに準ずるものを含む形容詞は,その含まれているものの語尾から送る。
    <例>
     勇しい 輝しい 頼しい 喜しい 恐しい
    ただし,次の語は含まれているものの語尾を送らない。
     荒い 悔しい 恋しい 
  4. 活用しない部分に形容動詞の語幹を含む形容詞は,その形容動詞の送りがなから送る。
    <例>
     暖い 細い 柔らかい 愚しい
  5. 動詞と形容詞とが結びついた複合形容詞は,その動詞にも形容詞にも送りがなをつける。
    <例>
     聞しい 待しい

第3 形容動詞

  1. 形容動詞はその活用語尾を送る。
    <例>
     積極的
  2. 活用語尾の前に「た」「ら」「か」「やか」「らか」を含む形容動詞は,これらのなかから送る。
    <例>
     新だ 平だ 静だ 確だ 穏やかだ 健やか
     明らかだ 朗らか
  3. 活用しない部分に形容詞の語幹を含む形容動詞は,その含まれているもの以外の部分を送る。語幹が「じ」で終わるものは,「じ」から送る。
    <例>
     清らかだ 高らかだ 同
  4. 活用しない部分に動詞の活用形またはそれに準ずるものを含む形容動詞は,その含まれているものの語尾から送る。
    <例>
     切だ 晴やかだ 冷やかだ

第4 名詞

  1. 名詞(活用語から転じたと感じられなくなった名詞を含む。)は,送りがなをつけない。
    <例>
     山 春 桜 湖 鶏
     扇 頂 帯 趣 畳 隣
    ただし,次の語は最後の1音節のかなを送る。
     哀 後 幸 互 半 情 斜 誉 災
  2. 活用語から転じた感じの明らかな名詞は,その活用語の送りがなをつける。
    <例>
     動 戦 残 苦しみ
     遠 近
    ただし,
    (1) 誤読・難読のおそれのないものは,かっこの中に示したように送りがなを省いてもよい。
    <例>
     現れ(現れ) 行い(行い) 断り(断り) 聞え(聞え)
     向い(向い) 起り(起り) 終り(終り) 代り(代り)
    (2) 慣用が固定していると認められる次の語は,送りがなをつけない。
       組 恋 次 富 恥 舞 巻 卸 話 光 雇 志
  3. 語幹の一部から送る形容詞の語幹に「さ」「み」「げ」などがついて名詞になっているものは,語幹のその部分を送る。
    <例>
     大さ 正さ 明み 惜
  4. 活用語を含む複合名詞は,その活用語の送りがなをつける。
    <例>
     心構 日延 物知 山登
     教子 考方 続物 包
     大写 長生 早起
     歩 見送 読
    ただし,誤読・難読のおそれのないものは,かっこの中に示したように送りがなを省いてもよい。
    <例>
    綱引(綱引) 帯止(帯止) 気持(気持) 封切(封切) 金詰り(金詰り) 心当り(心当り) 身代り(身代り) 大向う(大向う)
    物(編物) 受身(受身) 掛図(掛図) 死時(死時) 合せ鏡(合せ鏡)
    切り(打切り) 売出し(売出し) 落着き(落着き) 申込み(申込み)
    り(取締り) 果し合い(果し合い)
    い合わせ(向い合せ)
    入れ時(書入れ時) 切抜き帳(切抜き帳)
    出し電話(呼出し電話)
    せ会(打合せ会)
    [備考]
    「置きみやげ」「払いもどし」のようにあとの部分をかなで書く場合には,前の動詞の送りがなを省かない。
  5. 慣用が固定していると認められる次のような語は,送りがなをつけない。
    <例>
    献立 座敷 …係(進行係) 関取 手当 頭取 仲買 場合 番付 日付 歩合 物語 役割 屋敷 夕立 両替 …割(2割) 小包
    植木 織物 係員 切手 切符 消印 立場 建物
    請負 受付 受取 書留 組合 試合 踏切 振替 割合 割引 浮世絵 貸付金 借入金 繰越金 小売商 仕立物 積立金 取扱所 取締役 取次店 取引所 乗換駅 乗組員 引受人 代金引換 振出人 待合室 見積書 申込書
  6. 数をかぞえる語尾の「つ」は送る。
    <例>
     一 二 三

第5 代名詞

  1. 代名詞は送りがなをつけない。
    <例>
     私 君 彼 彼女 何
    [備考]
    代名詞はなるべくかな書きにする。

第6 副詞・接続詞

  1. 副詞は最後の1音節を送る。
    <例>
     必 少 再 全 最
    ただし,次の語はその前の音節から送る。
     直
  2. 他の副詞を含む副詞は,含まれている副詞の送りがなから送る。
    <例>
     必しも 少
  3. 名詞を含む副詞は,その名詞の送りがなから送る。
    <例>
     幸に 互に 斜
  4. 活用語を含む副詞は,その活用語の送りがなから送る。
    <例>
     絶ず 決て 少なくとも 大
    [備考]
     副詞・接続詞はなるべくかな書きにする。
    [注意]
     表に記入したり,記号的に用いたりする場合には,「晴(れ) 曇(り) 答(え) 終(わり) 生(まれ) 押(す)」のようにかっこの中の送りがなを省いてもよい。

[参考資料]

「送りがなのつけ方」用例集

  1.  この用例集に掲げた語は,国語審議会の正書法部会で送りがなのつけ方について審議した結果を五十音順に配列したものである。
     1〜26の数字は,よりどころとなる「送りがなのつけ方」の通則の番号,「た」はただし書き,Aはただし書き(2)を示す。
     たとえば,「打ち合わせ 19・2」は,通則19によって,活用語の送りがなをつけ,通則2によって「わ」を送るということである。「生き恥 19・17たA」は,通則19によって活用語の送りがなをつけるが,通則17のただし書き(2)によって「恥」には「じ」を送らないということである。「高まる 3(2)」は,通則3によって形容詞の語幹以外の部分「まる」を送っていもよいし,通則2によって「高める」との関係で「まる」と送ってもよいし,二つの通則のどちらにでもよることができるということである。
  2.  「送りがなのつけ方」では,通則6・17・19のただし書きで,誤読・難読のおそれのないものは,かっこの中に示したように送りがなを省いてもよいとしている。
    <例>
    切る(打切る) 差上げる(差上げる) 取扱う(取扱う) 引受ける(引受ける) 受取る(受取る) 繰返す(繰返す) 乗換える(乗換える)  割当てる(割当てる)
    れ(現れ) 行い(行い) 断り(断り) 聞え(聞え) 向い(向い) 起り(起り) 終り(終り) 代り(代り) 綱引(綱引) 帯止(帯止) 気持(気持) 封切(封切) 金詰り(金詰り) 心当り(心当り) 身代り(身代り) 大向う(大向う)
    物(編物) 受身(受身) 掛図(掛図) 死時(死時) 合せ鏡(合せ鏡)
    切り(打切り) 売出し(売出し) 落着き(落着き)申込み(申込み)
    締まり(取締り) 果し合い(果し合い) 向い合せ(向い合せ)
    入れ時(書入れ時) 切抜き帳(切抜き帳)
    出し電話(呼出し電話)
    せ会(打合せ会)
    しかし,この用例集では省かない形で示した。 
  3.  この用例集は送りがなの用例を示したものであって,漢字で書くかかなで書くかを決めたものではない。
  4.  検討の際,一部分ないし全体をかな書きにするほうが望ましいとされた語については,参考のためそのようにかな書きにして掲げておいた。

「送りがなのつけ方」用例集

トップページへ

ページトップへ