国語施策・日本語教育

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議事 文部大臣あいさつ

橋本文部大臣あいさつ(要旨)

 本日は,国語審議会第38回総会が開かれるにあたり,一言ごあいさつを申し上げます。
 国語の問題は非常にだいじなことですからどうかよろしくお願いします。きょうは,ゆっくり御意見をうかがいたいところですが,国会で予算委員会のさいちゅうであり,はなはだ残念なことと思っています。
 このたび,皆様におかれましては,御多用のところを国語審議会の委員として御就任くださいまして,まことにありがたく,深く感謝いたします。
 国語国字の問題は,教育・学術・文化の発展に深い関係があり,また,日常社会生活ともきわめて密接なつながりをもっているものであります。したがって,政府といたしましても,早くから,国語国字の改善を重要な国策の一つとして取り上げ,多年努力を続けてまいったのであります。しかしながら,この問題は,その影響するところがきわめて広く,かつ深く,その解決にはなみなみならぬ困難が伴っているのであります。国語審議会が長年にわたり,この困難な仕事の解決にあたられ,幾多の業績をあげてこられましたことは,まことに敬服にたえないところであります。建議されました改善策が政府部内だけでなく,広く社会の各方面にも採用され,国民の理解と協力とを得てわが国文化の向上に貢献してまいったことは,御同慶に存ずるところであります。
 国語問題の解決を考えることは,わが国の進歩発展にとりましてますますその重要性を加えてきているもののようであります。これは,単に日本の社会が現在当面している問題に対処するだけのものではなく,国家の将来に対しても深い関係を有する重要なことであります。そのため,皆様におかれましては,このうえともいちだんの御尽力をお願い申し上げたいのであります。
 わたくし,昨年暮れ,灘尾文部大臣のあとはからずも文部大臣を拝命しました。今日まで政党生活12年,その間,党の政策を担当し,主として経済基本計画,社会保障,文教政策に身をいれてきました。文教方面の責任者としては,はじめてではありますが,戦後12年間この方面に深入りしてきました。広範な文教政策についていろいろの面の問題があるが,できるだけ落ちのないよう考慮したつもりであります。もちろんその間にことの軽重があり,全体とのバランスも考えなければならないが,なんといっても義務教育の充実,科学教育に重点をおくべきであろうと考えられます。この根底にあることは,精神的には,まじめな国民を養成するための基礎教育であり,形に表われた学問的なものとしては,国語・算数の基礎を守ることであります。ことに,国語の問題は,国民の日常生活に対処するだけでなく,国民全体の生活の基礎になるものであります。戦後,国語に混乱があり,今日でもいろいろの面でふじゅうぶんであります。基本的には,国語国字の伝統文化のよいところは学んでゆくのであるが,たとえば,康煕字典にある漢字をすべて学びとれるものではありません。老いやすい少年時代にそれさえ覚えていれば国民文化の花を咲かすことができるということを基礎として,そのうえで古典など高度のものの研究をすることであります。義務教育の内容としての国語の問題については,新しい学修指導要領をもとに真剣に考えています。
 わたくしは,個人的にも,国語国字も問題について多少の関心をもっており,二,三十年来やっております。国語国字の問題は,あせらずに,無理をせずに真剣に,文字・言語に対する愛情をもとにしながら,いいことば,いい字を感じやすい少年を対象に教えこみうるものでなけばなりません。このことは,過去を理解し,文化の発展を考えるべきで,理屈で考えるほど簡単なものではありません。改良もいいが,現実に困るものであっては困ります。やさしい日本語があるのにわざわざむずかしいことばを使わなければ学問的でないという考え方は,やめたいものであります。平易で美しい日本語を学校教育でやると同時に,そういう知識をもって世の中に出れば,それだけでりっぱに通用するという状態になればいいと思います。国語審議会は,義務教育の基本である国字国語について,わきから目を注ぐとともに,世の中のことがうまくいうように指導することを考えていただきたいとお願いします。こういうことは法律を出してやれるものではありません。わたくしも,大臣でいるかぎりは,真剣にやりたいと思っております。皆様がたからよい知恵を出していただいて,そこに出てきたものの実行面についてもいちだんとお力添えをお願い申し上げるしだいであります。そのつちかわれた知識の上にたって,日本民族の築き上げた文化を理解するための国語国字の改良をやることであります。こういう問題は,政治的にも問題はあるけれども,あわててかけ出すことはしないで,じゅうぶん考えてしんぼう強く,ごく常識的に効果のあるようにやりたいと考えます。
 御審議をいただきましたことについては,できるかぎりその趣旨の実現に努力してまいりたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
 いろいろお話を伺いたいのですが,残念ながらこれからまた国会のほうへまいりますので,これで失礼いたします。

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