国語施策・日本語教育

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議事 第1部会の中間報告

土岐会長

 新聞社での送りがな実施に関して関係のかたから説明願いたい。

前田(雄)委員

 新聞社では,この取り扱いに関して,国語審議会でまだ審議されている当時から検討を重ねてきた。大臣に建議され,内閣告示となるのを見て,この8月,新聞協会用語懇談会としての最終的な結論を出した。これを各社の編集局長で構成されている編集委員会,さらに理事会の承認を得て,新聞協会案を決定した。この内容は,原則的に,本文1本でやっていこうという方式のものである。ただ,案の中には,暫定提出として,許容事項中の一部について,いくつかの語に限って省いた形を認め,別表を作成してある。この協会案は,新聞紙面に採用する場合の基準となるもので,現在,朝日,共同通信加盟の60社余りが採用実施中である。各社とも,実施にあたって,別表は使わないという形でこの案を採用する方針が強く,読売は1月1日からに実施に備えて独自のスタイルブックを作成中であり,毎日も来年から実施の予定とのことである。各社とも部分的には実行にはいっているが,全面的にこの送りがなによるのには,準備段階や試みの期間が必要である。したがって,できるだけ忠実に実行してみて,読者への公表は,その後の各社の話し合いでということになっている。今までのところ,実行に困難はない。複合名詞にさらに名詞のついたものは,原則では今までよりも多く送るようになっており,実行があやぶまれたものであるが,経過を見ていると心配はなく,見出しの場合でも省かずに送っている。ただし,通則20の「送らない慣用の固定しているもの」には疑問や紛らわしい点があるので,各社の希望により再検討しようと考えている。読売のハンドブックでは,通則20の用語をできるだけ限定する方向のように聞いている。

土岐会長

 では,第1部会の中間報告をしていただく。

原第1部会長

 第1部会は,5月から11月まで6回部会を開いた。この部会は,前の審議会の正書法部会の系列をひいているように了解できる。この部会での審議事項案として,法令用語の問題,固有名詞の文字の問題,術語のかな書きなどが委員から提出されたが,このほか,当用漢字補正案の取り扱いが問題となった。また,部会の中をいくつかの専門部会に分けることも論議されたが,取り上げられなかった。この「当用漢字補正資料」を初めに取り上げることに意見の一致をみた。これは,昭和27年から29年まで,国語審議会の漢字部会で扱ったものであり,当用漢字表全体にわたって検討した結論である。内容は,当用漢字表から28字削り,新たに28字加えるものである。当時,すぐ実施したいとの要望もあったが,しばらくこの案にたいする社会の批判を待ち,反響を見て,この案の実用性や適性さを確かめてからと考えた。主として,新聞報道関係で試験的に使用することとなったが,実行の結果,ほとんど支障がないことが報告されたために,審議会として,この補正案に対する態度を決めていい時期と考えられた。
 初めに,委員の希望により,補正案が決定されるまでの審議の経過,出し入れする28字についての理由づけや解決などを検討した。これを扱う態度として,補正案をこのまま認めて当用漢字表を改めるという意見のほかに,たとえ1字でも承服できない字があれな,補正案全体を流せという考え方もあった。
 削る字とされた28字については,だいたい削ってさしつかえないという線に落ち着いたが,加える字については,異論も多少あった。加える必要がないという意見のいちばん多かった字は,その意見の人の出席者全体に対する比率が50パーセントであり,少ない字で10パーセントぐらいである。傾向としては,加える字をさらに削る方向で,そうなると,当用漢字の数が1,850より少なくなる。削る字,加える字の審議がひととおり終わったので,前からの申し合わせにより,両方を比較検討してみたらどうかという提案をしてみたが,その必要はないとの意見であった。そのため,個々の漢字についての検討をやめて,補正案の取り扱いについての討議に移った。取り扱いについての意見は,次のようである。

  1. 補正案をそのまま,全面的に受け入れる。当用漢字表から28字削り28字加える。したがって,当用漢字表を変更したことになる。
  2. 補正案はもっともなものだと認めるが,当用漢字表は改めない。したがって,実質的には,28字ふえたこととなる。言いかえると,当用漢字表は変えないが。補正案は認めるということである。
  3. この程度の審議のままで,ふたたび世間に発表し,反応を見る。

 この三つの意見に共通していることは,どれを採るにしても,1,850字について根本的に審議したいということである。このほかに,当用漢字表を再検討する際の参考案を申し上げる。これは,当用漢字表と補正資料の範囲内で,社会的な重要度によって漢字を幾段階かに分類するものであり,この案によると,補正資料も生きるし,当用漢字表の再検討にもなり,使う人の便宜のうえでも有効であろうという専門家の意見である。
 以上が審議の報告であるが,これらの点についての総会の意向をお聞かせ願いたい。

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