国語施策・日本語教育

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議事 国語審議会議事録意見の整理

(資料配布)

 ただ今お手もとにお配りした資料は,前回まで出たご意見を事務当局で整理したものである。いちおう読み上げる。


国語審議会議事録意見の整理(昭和37.3.15)

  1. 国語審議会は,これまで,いかなる方針のもとに,いかなる資料によって,いかに調査審議してきたか。
  2. 国語審議会は,国立国語研究所の研究をいかに生かしてきたか。また,今後はどうあるべきか。
  3. 国語審議会は,今後,いかなる態度で審議していくべきであるか。これまでの業績を分析評価して,基本的な態度を決めるべきか。
  4. 国語審議会は,何を審議すべきか。
  5. 今後,国語審議会の運営をどうすべきか。
  6. 国語審議会の審議結果は,いかに実施されるべきか。

 もっとも以上の6項目のうち,第5項は運営委員会の問題と思われる。なお,これ以外にお気づきの点があったら,出していただきたい。

西原委員

 6項目は,よく整理されている。
 これまで,この会で各委員が発言されたことは,次の二つに分けることができると思う。(1)は,自由討議で各委員が各自の言語観について話され,(2)は,そのはしばしに国語審議会の運営に関することが聞かれた。この資料の,1から3までは,国語観が出ており,これを運営の上からまとめると,このように6項日になる。

阿部会長

 なお,補足するが,特にご意見がなければ,この取り扱いは,運営委員会に任せていただきたい。その結果については,改めてご相談する。

金田一委員

 先ほどの運営委員会の委員に,言語関係といっても,特に国語関係のかたをもうひとり加えていただきたい。

中田委員

 金田一委員が適当と思う。

阿部会長

 会長一任ということで,金田一委員にお願いする。ほかにご意見がなければ,運営委員会の委員のかたがたには,あとしばらくお残り願うとして,きょうはこれぐらいでどうか。

中田委員

 運営委員会が開かれるについて,委員のかたにお願いしたい。昭和21年以来,国語審議会で建議したこと,それに伴って内閣から告示されたことがたびたびあるが,それらのものを手直する必要があるのではないかという意見がこの会の席上で出ていた。しかし,そういう前提のもとに,この審議会が進むことはよくないと思う。そういう前提に立たないで,反省,研究する必要がある。施策の内容のぐあいの悪い点を直すということでなく,公布されたものについて,世間がどういう利益を得ているか,また不便を感じているかということを客観的に調べ,感じ取る必要がある。すなわち,告示で出た施策が,どういう点で世間に不便を感じさせているかを調査する。そして,その上で,必要があれば手直しをするというふうにしなければいけない,今までの国語審議会は,こういう点を怠っていたのではないか,ということをよく反省してみることが必要である。このことについての反省,研究は新聞などの問題とせずに,国語審議会の問題として研究機関をもつなど計画してもらいたい。国語研究所のほうからも資料を出してもらってやるというようなやり方はないだろうか。以上のようなわけであるから,この運営委員会は,国語審議会の審議内容を束縛するような運営委員会でないようお願いする。

阿部会長

 運営委員会は,内容にははいらない。その点は,じゅうぶん注意する。

鈴木委員

 一言希望を述べる。運営委員会が設けられたが,これまでのところでは,世間で国語審議会を注目しているわりに,本質的な問題にはいっていかないような感じがしている。運営委員会ができれば審議が進められるだろうが,どうか早く世の中の意見が会議の議題にのるような形にしていただきたい。

阿部会長

 今までのところ,車が走っているだけで,行く方向がわからない。今後はっきり決まるだろう。

吉田委員

 鈴木委員の意見に賛成する。現在の国語審議会の様子が,たとえば,ただ今配布された資料のような形でこのまま新聞に出た場合,社会の期待はずれになる。現実に感じていることは,当用漢字,現代かなづかい送りがな,教育方法等,実際問題についての審議が切実に考えられているわけである。このうちのどれかに国語審議会が取り組んでいくのだということを運営委員会が出して早く方向を決めてほしい。

浦上委員

 きょうの資料は,第1回と第2回の結果を主としたものと思われる。第3回には,何を審議すべきかというこれから進む方向についての意見も多少出た。今度の第1回の国語審議会の大臣のあいさつでは,原理的な根本方針をということであった。国語審議会は,現実のことに方向づけることが必要である。この,点について運営委員のかたがたにご努力をお願いする。

阿部会長

 6項目は最大公約数が出ているので,運営委員会で考えれば,実際にはもっと具体的な話が出るだろう。

古賀委員

 今すぐ手直しに取りかかることは,かえって混乱をきたすという注意があったが,なるほどそのとおりである。たとえ改善を要する部分があっても,それも実施に移す時期が問題であり,その取り扱い方についても研究しなければならない。すなわち,まず,手直しの必要があるかないかの研究をする必要があり,もし,あるならどんなふうにやっていくかという方法をも同時に考えていかなければならないだろう。さらに項目の第6に関連して,国語審議会で決定したものを実行するに先だって,試験期間をおき,世間の反響を見,検討を経た上で実行に移すというようなことが必要ではないかと思う。
 学会で用語を整理する場合,同じ事がらを,二つも三つものことばで表現しているようなとき,これを一つのことばに整理するのだが,この場合委員会の手で立案した結果を相当期間流して,意見を聞いた上で,さらに必要に応じて修正を加えて最終的に決めるようにしているが,割合うまくいっている。国語問題においても,同様で,学校教育においてどういうように実施され,反映されるかということが大きな問題である。小学校,中学校の学校教育では,国語審議会で決めたことをかなり忠実にやっているが,進学に際して問題がある。つまり,現実には,大学の入学試験の漢字などは,この点にもむとんじゃくである。こういうことをどうしたらよいのか。こういうことに結びつけて考えていかないと国語審議会から出したものが宙に浮いてしまうことになる。大筋もたいせつだが,こういうこともたいせつなことだと思う。以上,国語の利用者であり,場合によっては被害者である立場から申し上げた。

西原委員

 今まで総会が4回行なわれた。今までの会議の進行ぶりから見てだいたい妥当であると思う。これまでの会を反省してみて,はじめに総会を重ねて,自由討議で各委員がめいめいの言語観を中心にして,体系的に話されたかた,部分的に話されたかたもあったが,これらは,後ほどの会議の進行に関連してくる。この基礎の上に立って運営委員会が開かれれば話がしやすいと思う。

中田委員

 今までの国語審議会から建議したものの内容について一般社会が不便に感じていることは,どの点かということを客観的にはあくする必要がある。細かい調査の資料がほしいが,そういうものを国語審議会から国語研究所に依頼することができるかどうか。そういうことをするか,どうかは,運営委員会の仕事かもしれないが……。

阿部会長

 そういうことは,できなくはないと思う。国語研究所に依頼するのもよいが,そういう資料は,新聞社がいちばんたくさんもっていると思う。新聞社にお願いできないか。

浦上委員

 各社ごとの資料なら提出できると思う。なお,送りがなについては,各社で自主的に研究している。

阿部会長

 放送局にもあると思う。

中田委員

 これを国語審議会の問題として,自主的にやっていきたい。

梅棹委員

 わたくしとしては,今度の国語審議会は,前の国語審議会と切り離された新規なものという感じがするが,これはおかしい。
 どういう点に国民が不便を感じているか,また,反対が出ているか。これを調査する前に,国語審議会として独自の荒い整理が必要である。国語研究所に調査をお願いしても,研究所としても,信頼できる資料を出そうと思うと相当時間がかかるだろうと思うし,国語審議会の歩みとあわないと思う。ともかく前の審議会と関連なしに,新しい国語審議会ができたような感じがし,これまでの審議会との続きぐあいがはっきりしない。

阿部会長

 どう取り扱うかは問題になる。

中田委員

 前のことを反省するだけでなく,同時にもっと違ったことを国語審議会で研究すべきである。たとえば,固有名詞によく使われる漢字について,その中の人名については,人名用漢字別表が公布されて,世間の要望にこたえたが,地名に使われる「阪」とか,[[岡」とかは,なんの処置もされていない。そこで,当用漢字表に,「阪」とか,「岡」とかを入れたほうがよいという声がある。こんなふうにいろいろ問題がある。国語審議会は歩調をなるべくおそくしていかなければたらない。2か年の任期中に必ず建議しなければならないということはない。過去の反省と同時に,新しいものを研究することの必要も生じてくると思う。
 国語審議会は,臨時行政調査会のやっているように,国民一般からの意見を受け入れる態勢を整えてやるというようなことはできないだろうか。

阿部会長

 それはできるだろう。

千種委員

 そういう意見を各方面に聞くことはできないだろうか。

西原委員

 文部大臣と次官のあいさつについて,この会としての受け取り方をはっきりさせておく必要がある。受け取った人の感じで違うと思うが,わたくしは,今までのことの反省,整理と受け取った。運営委員会の問題として第1に,大臣,次官の話,今までの自由討議で出た意見を総合し,どうまとめて審議するか。国民一般の共感を得ることがだいじであるから,これらをまとめて発表すること。第2に,具体的なことになるが,国語研究所のことは,最初に前国語研究所長の西尾委員から話があってよくわかった。国語研究所については,今後,国民も期待しているし,国語審議会も期待している。第3に,専門調査員をおく必要があるかどうか。第4に,一般社会に対しての窓をつくって,国語審議会の審議内容を世間に示し,また,世間のことばを聞くこと,これには,公聴会によるとか,方法はいろいろあると思う。しかし,あまり細かいところまで窓を開いておくとかえってやりにくくなる。

村上委員

 早く具体的な問題にはいれということはもっともである。国語改善について基本的な方針を明らかにすることがたいせつである。基本的な考えから個々の考え方が出てくる。教育の現場からいえば,具体的に困っているものがある。これに先んじて,国語に対する考え方を明らかにしなければならない。

鈴木委員

 教育の現場関係の者として申し上げる。国語を教える立場からいうと,相当問題がある。先生,児童,生徒,父兄からも問題をもちかけられる。町で見る国語の環境は混乱しているように思う。たとえば,バスの車体の標示にしても,車体の左からと右からとで「東京都営」「営都京東」と読めるような書き方をしている。小学校でも,国語の教科書は縦書き,算数の教科書は横書きになっている。日本の国語として,これらも考えなくてはならない問題である。送りがななど直接の問題もあるだろうが,国字をどうするかというような,根本を考えるところは国語審議会である。将来,実施するかしないかはともかく,将来の国民生活の問題が議題になってもいいと思う。
 送りがななど,しじゅう変わると,前にはこう,今度はこうということになり,これでは,父兄も先生もこどもに教えることもできなくなる。国語審議会で,日本の将来の国語について基本的な方向を考えることが必要である。

阿部会長

 いろいろ話が出たが,いずれ運営委員会でよく考えられることと思う。

梅棹委員

 小委員会(部会)をつくることなども,運営委員会で決めるのか。

阿部会長

 今は何も考えてはいないが,いずれそういうことになるのではなかろうか。

金子委員

 「国語審議会は,何を審議すべきか」というのは表現としておかしい。どういう問題を審議するかということであろう。運営委員会では,ここで出た問題を拾っておいていただきたい。言語観の問題や,送りがなをまた改めると混乱が起こるだろうが,それをどう取り扱ったらよいかの問題など,具体的な問題が出ていると思うから,それらを拾ってまとめてほしい。

藤堂委員

 運営委員会は,手続きの問題だけを考えるといわれたが,具体的に取り上げる問題,部会をつくるかどうかなどまでのおぜんだてをしてもらっていいのではないかと思う。

金子委員

 わたくしも同感である。運営委員会では,今までに出た具体的な問題も取り扱ってほしい。

吉田委員

 手直しという話が出た。前の国語審議会は,最後にああいう騒ぎになって散会した。これは,国語審議会の内部だけの問題であったのか,対社会的な面もあったのか。今回の国語審議会の存続している理由は何であるか,それは,今までのものを手直しする必要があるからだと思う。そのへんをよく見きわめて社会の要望にこたえる必要もある。
 審議を続けていく大きな目的は,どこにあるかという点を明らかにして,うまく運営してもらいたい。

横田委員

 わたくしは運営委員として指名を受けたが,反省だけの運営委員会になっては意味がない。手直しをするという前提でないほうがよいという意見があったが,手直ししないという前提で運営委員会が進むのなら意味のないことになる。今までに出たいろいろの施策は相当年代もたっているし,杜会の情勢も変わっているのだから,当然手直しをする時期にきている。反省の結果がはっきりしてくれば,手直し,修正,改正ということもありうる。慎重な態度でやることが正しい道であろう。

八木委員

 国語の専門家でないので,わからないことがあるが,わからないままに申し上げる。国語の問題については新聞で承知していた。委員になってからはほうぼうから関係の刷り物が多くくるが,国語の問題より国字の問題を論じている団体からのように思われる。国語審議会の初期は問題が国字に限られていたせいかと思うが,国語審議会は国字の審議だけであっていいか。国語問題の審議はどうするか。今日国語が混乱している。これには外国語の移入ということもある。国語は権力をもって変えることはまちがいであって,自然に移り変わるものと思っていた。かつて使っていた「そうろう文」は,今は使わなくなった。明治時代のことばでも,今日廃語になったものはたくさんある。だからといって,放任しておいてよいともいえない。法律などによることはいけはいが,マスコミで使われれば,世間で広く使われるようになる。しかし国語審議会からある意見が出れば,早く流動して変わってくると思う。国語審議会は国字だけを審議するものであってはいけない。漢字,かな,送りがななどは国語の問題というよりは,国字の問題らしい。国語についてもっとほかに問題があるのではないか。国語審議会は,国字審議会ではなさそうだということを強く感じるようになった。

古賀委員

 だいたい意見は出尽くしたように思われる。まず運営委員会でどんな問題を取り上げるか順序を考えて全体の会議にご提案になると思う。こうしてもらいたいという意見もあった。ただ今八木委員は,単に国字だけでなく,広い範囲の国語を考えるべきであるということを述べられた。このへんで方向づけをしてほしい。国語は規則づくめでできるものではないと思う。国語についての方向づけの役割をするということが国語審議会の道と思う。権威のあるかたがたがこぞって賛成し,新聞,報道方面で実行され,大部分の入が実行できる手本を示すということで国語審議会の役割を考えることである。手直しということの裏には,今までに決めたことに欠点があるから,それを修正するという意味があると思うが,いったん決めたものでも,その方法さえよければ改めてもいいと思う。広い目で見,時間の経過に従って,その時代に即したものに直していくべきである。

滝川委員

 これまでの国語審議会と今回の国語審議会との関係,つまり名称や政令は同じでも,内容が違っているかどうかについて説明がほしい。

阿部会長

 だいたい意見は出尽くしたようである。きょうは,このへんで閉会とする。なお,運営委員のかたは少しの間お残りいただきたい。

細川委員

 日常の国語を審議するのに病的にやられたのでは,いい国語は生まれない。世の中を引きずっていこうというのでなく,大らかな気持ちで,なるべく国民の利益をはかってやること,進みすぎないようにうちわにやることである。世の中に応じた筋道を示すことである。また,前の審議会とは関係があるようなないようなことではなかろうか。

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