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次第 文部大臣あいさつ

文部大臣あいさつ

 国語審議会第51回総会の開催にあたりまして,一言ごあいさつを申し上げます。本日は,ご多用のところをご出席くださいまして,まことにありがとうございます。
 皆様がたには,ご就任以来,国語改善の基本的な考え方について,また,これまでの国語施策について,さらに,これから改善をはかる必要のある問題について,それぞれ部会において終始熱心にご審議くださいまして,まことにありがとうございました。これらのことは,いずれも今後の国語の改善を考える上に,きわめて重要な,そして最も基礎的な事がらであると存じます。国語の問題は,まことにむずかしく,世上にもいろいろの論議の見られるところであります。皆様がたには,ご審議にあたりまして,定めしひとかたならぬおほねおりのありましたことと存じ,深く感謝いたします。
 国語の問題は,国民の日常生活はもとより,わが国の教育,文化に深い関係があり,国の将来に大きな影響をもつ重要な事がらであります。したがって,常に国語のあり方について検討し,国語の正しい発達に努めることはまことにたいせつなことであると思います。今後とも,この問題の解決のために,いっそうのご協力とご援助とを賜わりますようお願い申し上げます。これまでのご尽力に対しまして,心からお礼を申し上げます。

阿部会長

 では,審議を続ける。

中田委員

 助詞「は,ヘ」は,現在も広く一般に行なわれているし,初等教育上も児童が案外まちがわないものである。ただし,「現代かなづかい」で「わ,え」の使用を許容しているために,かえって混乱しているように思える。

相良部会長

 発音に即して,「わ,え」一本に統一するという考え方もあろう。この種のよく使う助詞などに許容の形を認めておくのは問題であり,むしろ許容の形を削ったらどうかというのが部会で出た意見である。

吉田委員

 「なお,現代かなづかいは,歴史的かなづかいの関連において…」という段落にも問題があろう。これらの関係や広くはかなづかい全般の問題についても,今後早急に検討する必要があろう。

森戸委員

 報告では「は」と「ヘ」とを同列に扱っているが,理論的にはともかく,現実では,「は」を「わ」と書くことは少なく,「ヘ」を「え」と書くことは多いのでないか。

相良部会長

 多少の違いはあるかもしれないが,区別して扱うほどのことではない。

金田一委員

 (注)の(3)の「削る必要があるか」を削り,「許容の事項をどうするか」とすればいい。(賛成)

相良部会長

 特に意見がなければそうする。

藤堂委員

 「これまでの施策について」の10行目ほどの「一律」のあとに「早急」を加えたほうがいい。(賛成)その3行上の「個々の施策については」は,「個々の施策の実施に当たっては」と改めればいい。(賛成)

浦上委員

 「」は,このままでよいか。

内山課長

 戸籍事務上では,沖「」県として扱っているとのことである。

吉田委員

 あまりこだわらなくてもいいと思うが,「」に()をつけておけばいい。(賛成)

金田一委員

 初めの部分に,戦後の国語施策は表記の基準を示したという意味で意義があったという趣旨が述べてあるが,このほかにも,国語をやさしく,わかりやすくしたという利点もあろう。第1部会の報告にも国語をやさしくする必要が述べてあるので,その点に一言ふれてはどうか。

吉田委員

 かつて第2部会で,戦後の文章が全体的に平易になったのは,新聞や文学者などの理解や努力の結果によることが多いのであって,必ずしも国語審議会の功績だけではないという意見が出たはずである。

相良委員

 部会でも論議されたが,原文のままでいいであろう。

八木委員

 第1部会の報告の中に,よく理解できない点がある。「2 文字」の最初の3行の文章からは,文字は思想感情を表わすものでないこと,文字はことばを視覚的に表わすもので,文字とことばとははっきり区別されるもののように受け取られるが,表音文字ではそうであっても,漢字はそれ自身で思想感情を示しているのではないか。次に文字が少なくなるほうが文化が進んでいるという意見のようにとれるが,ことばについてはふれていない。漢字が少なくなり,それに伴ってことばが少なくなったほうがいいのか。また,「文字を機械にのせるさいの問題が,ことに重く考えられるようになった。」 と述べてあるが,機械は進歩するものであるから,現在の機械の状態を固定して考え,そのため審議が制約されることは納得できない。
 第2部会の報告の初めの部分に,「戦後の国語施策は,……社会的教育的意義があったと考えられる。」と述べてあるが,必ずしもそうでなく,実際には混乱させ,迷惑をかけたものとして非難する論者も少なくない。この点も考慮する必要があろう。

熊沢委員

 文字は,直接に思想感情を表わすものでなく,語を通してそれを表わすものである。この点は,表音文字でも漢字でも変わりがなく,多くの学者が肯定しているところである。漢字は意味を表わし,意味と深く結びついてはいるが,やはり語を通して意味に結びついているものである。
 機械にのせる場合の問題については,八木委員のような意見も織り込んで報告が作成されている。
 ことばと文字の違いについては,ことばは文字に比べて人為的な制約を加えることは非常に困難である。短時間では意を尽くせないが,文字に対するような解決は,はかりにくい。したがって,この報告のことばの部分は改める必要はないと思う。

吉田委員

 「1 ことば」の「したがって,ことばは単なる手段以上のものであるといわなければならない。」というところに,歴史と伝統に根ざし,国民感情をつちかうものであるという意味のことをつけ加えて述べておきたい。

村上部会長

 その意味のことは,他の筒所に出ているので,重複させてここに述べる必要はないのではないか。

吉田委員

 平明簡素ということばが随所に出ている。それに対して歴史と伝統の重視をもうたっておきたい。

藤堂委員

 この報告は,「2 文字」の後段や「3 むすび」の部分で,二つの立場を認めながらも中立の立場を一貫させているのであるから,原文のままでいい。

高木委員

 報告の中では,吉田委員のような意見もかなり重視されているのだから,さらに原文を改めなくてよかろう。(賛成)

横田委員

 報告全体について見れば,だいたいいいのではないか。

阿部会長

 これまでの論議は内容についての本質的な立場の相違というよりは,概して表現上の問題が主であったように思える。他に意見はないか。

吉田委員

 第2部会の報告の中で,現代国語,現代語音など現代ということばが使われているが,その内容,範囲が明確でない。この点の検討,決定を次期の審議会に申し送るよう希望しておく。なお,第1部会では「ことば」といい,第3部会では「語」といっているが,別の内容でなければ統一しておいてはどうか。

熊沢委員

 第1部会では現に広く一般に使うものという意味で「ことば」とした。第3部会では,さらに細かい問題となるので,ことばの一つ一つという意味で「語」としたのである。

金田一委員

 第3部会の「わかりやすい語」「必要のある語」の「語」は,「語句」と改めたらどうか。

岩下委員

 「語句」と改めていい。

古賀部会長

 異議がなければ,そう改めることにする。

阿部会長

 これまでの修正箇所を確認したい。(修正点を朗読。) これらの点を改めれば,これを今期の報告としていいかどうか。(異議なし。)
 では,ご承認いただけたものとする。次に,文部大臣にこれを報告する形式については,内容に変更をきたすものではないのであるから,会長にお任せいただきたい。(異議なし。)

内山課長

 従来,1期ごとにまとめて報告書を作成する慣例になっており,その中に総会の議事要録を採録することになっているので,この点ご了承を得たい。なお,要録の中のご発言に関して修正する点があれば,後日,ご連絡いただきたい。

阿部会長

 長期にわたって審議を重ね,きよう報告をまとめることができた。これまでのご努力に対し,会長として厚くお礼申し上げる。今期は基礎を固めるだけで,今後にまつことが多いが,次期以降の審議に期待するとして,今期の総会はこれで終わりとする。

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