国語施策・日本語教育

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かな部会 概況 第11〜24回

<第11回〜第22回>

 新しい送りがなの法則を考えるためには,現行の告示から離れて審議する必要があろうということになった。そこで,告示の品詞別による語分類に,新しい観点を加えて語例を分類しなおした資料「送りがなのつけ方に関する語の構造別語例一覧」〔かな-9〕によって,各語群ごとに語例の審議を続けた。
 この過程では,語例審議と同時に,より適切な語分類をするという観点からも検討を加えていった。必要に応じて,補充資料を作成し,より多くの語例にあたって審議した。この段階で指摘された問題点や意見のおおよそは次のとおりであるが,これらは,審議状況に合わせて,第66,67,68回総会で,そのつど報告した。

 「動かす,励ます」などのように,従来から活用語尾以外の部分を送っていたものと,「終わる,聞こえる」のように,一般社会で告示が出てから多く送るようになったものを区別して考える必要がある。
 「変わる,落とす,尽くす」などのように,活用語尾以外を送ることにしたために,漢字の受け持つ音節が1音節となったものは,特に抵抗に感じるので別に考える必要がある。
 「異なる」は,文語の形容動詞のいわゆるナリ活用であると考えられるので,現行のとおり「異なる」と送ってもよいのではないか。
 「群れる,明ける」との関係を考えて「群らがる,明かるい,明きらか」とすることも考えられるが,「群(むら)」「明(あか)」を,まとまるのあるものと考えて,現行どおり「群がる,明るい」としてよいのではないか。
 「少ない,大きい,小さい」は,告示以前からこのように送っていたと考えられる。しかし,「少ない」については「少い」としていた例もかなりあると考えられる。
 「新ただ,静かだ,柔らかだ」などの形容動詞については,「新(あら),静(しず),柔(やわ)」などを,まとまりのある語根と考え,「た,ら,やか,らか」を接尾語的なものとして考えれば,現行どおり送ることも考えられる。
 その他,世間では現行告示の影響からか,「補なう,驚ろく,承わる,促がす」などのように現行以上に多く送る例を見受けるが,これらについては特に取り上げる必要はない。
 しかし,「伴う,貫く,実る」の3語は,明治40年に出た国語調査会の「送仮名法」でも,「伴なう,貫ぬく,実のる」と送っているし,これらの漢字の受け持つ音の意識から考えても,「伴なう,貫ぬく,実のる」としてもよい。
 動詞の連用形の名詞的用法については,動詞として扱うか,転成名詞として扱うかの結論は出ていないが,いちおうこれらの送りがなのつけ方について,次のように語分類して考えた。
(1) 動詞の意識が残っているものについては,送りがなをつけることを原則とする。
 例  入り,泣き,動き,泳ぎ など
(2) もとの動詞が連想されないもの,慣用的には名詞の意識が強いものについては,送りがなをつけないことを原則とする。
 例  帯,恋,係,光,祭 など
(3) その語の用い方によって,送りがなを使い分けたいものについては,送りがなをつけても,つけなくてもよいとする。
 例  行(き),組(み),包(み),焼(き) など
(4) 「当たり,代わり,暮らし」などは,もとの動詞「当たる,代わる,暮らす」の送りがなを決めてから考慮するものとして,いちおう保留とする。
 本来の名詞については,いちおう現行の「哀れ,後ろ,幸い,互い,半ば,情け,斜め,誉れ,災い」のうち,「哀れ,後ろ,半ば」の3語以外は送りがなをつけなくてもよいのではないか。
10  複合動詞については,動詞と動詞の結びついたものの前の部分の送りがなが問題になる。「取り扱う,組み立てる,打ち出す」など,前の部分が2音節のものについては,原則として送りがなを省いて「取扱う,組立てる,打出す」としてもよいのではないかとも考えられる。しかし,「打ち倒す」が「打倒す」となったり,「折り合う」が「折れ合う」かわからなくなるような場合は,前の部分も送る必要があるのではないか。
11  複合名詞については,語の構成別に補充資料を作って語例を補い,さらに「複合名詞の送りがなについての考え方」〔かな-10〕によって審議した。その場合,他の語との関連を考慮する必要があるというので、「語の種類別送りがなのつけ方比較検討表」〔かな-11〕を作成した。
 この審議の過程で示された考え方は,次のとおりである。
(1) 他の活用語から転じた部分は、すべて、その活用語尾を送ることを原則とする考え方。
 例 編み物,手当て,積み立て,小包み,乗り換え駅
(2) 語によって活用語尾を送るものと送らないものとに分ける考え方。
従来,送らない慣用のあるものには,送りがなをつけない。
 例 建物,夕暮,受付,大詰,貸付金
活用語が前の部分にある場合,それが2音節のものは原則として送りがなをつけない。
 例 泣声,枯木,埋立て,取調べ
後ろにつく語の関係で前の部分の送りがなを規制する。
「道,方,手」などのつく語は前の部分の送りがなを省かない。
 例 抜け道,聞き方,干し物
誤読のおそれがあるものは,送りがなを省かない。
 例 生(き)物,刺(し)殺(し),大笑(い),食(い)物・食(べ)物,取(れ)高・取(り)高
対語または並列の関係にあるものは送りがなを省かない。
 例 明け暮れ,抜き差し,乗り降り
複合動詞の名詞形かどうか考えてみる。
 例 手伝い(手伝う),売り出し(売り出す)
 金持ち,船乗り,売り食い
前あるいは後ろの部分がかな書きの場合は,送りがなを省かない。
 例 置きみやげ,追いはぎ,すそ回し
(3) 名詞は送りがなをつけないという考え方に合わせて,複合名詞も送り仮名をつけないことを原則とする考え方
 以上のような種々の考え方について検討したが,結論を得るには至らず,今後の審議にまつことになった。

 以上の語分類を修正,加筆したものが,第69回総会に提出した「かな部会審議経過報告」,および〔参考資料〕「送りがなのつけ方に関する審議のための語の分類表1,2」である。

<第23回〜第24回>

 これまでのかな部会の審議の内容を,どのようにまとめて報告するかについて審議した。この過程では,送りがなというものの本質等について,かな部会としての見解をまとめた。
 また,送りがなのつけ方に関する新たな基準を,どのようなものにするかについても討議してきたが,これまでに示された考え方は,おおよそ次のとおりである。

 細かな通則は示さないで,大きな原則を示すにとどめ,その応用に関しては各人の判断に任せる。
 法則的なものを示すよりも,一語一語の送り方を定め,送りがな用例集として示す。
 例外・許容を認めないで,できるだけ簡明な原理・原則で貫かれた法則を示す。
 単一の送りがな法を定めるのでなく,語によっては,いくつかの送り方の類例を並列して掲げ,そのうちのどの送り方を採るかは,各分野・各個人の判断に任せる。
 その場合の類型は,送りがなを必要にしてじゅうぶんな程度にとどめるものと,できるだけ親切に送るものとが考えられる。

 以上のような考え方が示されたが,審議の過程では,教育界等の実情を考慮して,やはり,単一の基準を制定する必要があることが強調され,統一した見解を得るには至らなかった。
 最後に,第8期かな部会の最終報告案をまとめ,これを第69回総会に報告した。

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