国語施策・日本語教育

HOME > 国語施策・日本語教育 > 国語施策情報 > 第8期国語審議会 > 第65回総会 > 次第 木内提案について > 提案理由

次第 木内提案について

2 提案理由

 一  第8期国語審議会は去る4月以降,漢字,かな両部会を設定して具体的審議に入りましたが,その審議は,いわゆる"問題点を洗ってみる"という性質のものであります。洗ってみて問題点が明確になった暁には,どのような考え方に基いて,どのような対策を打ち出すべきか。この点については未だ全く白紙の状態にあるといってよいと考えます。
 二  両部会設定以前において相当回数の総会が持たれ,率直な意見の交換があり,その結果,なんとなく"制限漢字の字数は増やす""カナ使いについてもあまり無理ないものに改善する"といった気分が,暗黙のうちに諒解されたことは事実として認めていいと思いますが,ただそれだけのことでは,問題を洗ってみた上の両部会が,さてそれではどうしようか,といって考える場合,そのための指針は全くのところ与えられていないに等しいといえましょう。例えば漢字をふやすといっても何字増やすのか,その増やすとは,どのような字を増やすのか,拠りどころは今のところ全く与えられていないのであります。
 三  この状況に対し,第8期国語審議会の任期は餘すところ必ずしも長くないことを考え合わせれば,いまから両部会の審議に並行して,今後の国語施策を考えるための大きな指針に関連する事柄について考慮を回らしておく必要が感じられます。そしてその考慮には,此の際,ことの根本に返って「戦後新らしい国語施策が実施された当時の根本的な考え方」について,回顧反省してみるのが最上であり,それをおいて今後の国語施策を正しく考えて行くことは,不可能に近いと考えられます。
 四  第8期国語審議会の当初の総会において、文部大臣諮問案の意味に関し,それは"従来の国語審議会の業績の上に立って考えることを前提としたものだ"というような意見を述べられた方もありましたが,諮問案は,暗黙のうちに,より根本的な検討の必要を認めているものと考えます。また仮りに,諮問案の真意がどのようであろうとも,戦後の国語施策の実施の状況を眺め,そこに生じた各種の問題を通覧してみれば,いまこそことの根本に立ち返ってみる必要がある,といわざるを得ないのであります。現に両部会の討議を拝聴しておりましても,各委員の発言の裏には,この提案に列挙したような問題を意識しておられることが感じられるのであります。それならば,正面からの問題を取り上げ,各自一応の意見を出し合ってみたらどうか,と考えるのであります。
 五  提案は(一)と(二)が戦後の国語施策の実施方法に関する問題,(三)と(四)が考え方の根本に関する問題,そして,最後の(五)と(六)とは,戦後の国語施策に直接の関係はないが,研究してみたら多分サイドライトを与えてくれるであろうと考えられる問題であります。この他にも重要な問題がありましょうし,研究すれば参考になる問題があると思われますが,一応この6項目に触れてみれば,「考え方の再吟味」という目的は達せられると考えます。各自意見を出し合ってみれば,多くの委員がまるで反対の考え方に立っていることが,明らかになるかもしれませんが,存外,帰一するところが,多いことを発見するかもしれません。いづれの場合にも,結果は必らず第8期国語審議会の審議に益するところがあろうと考える次第であります。

(以上)

トップページへ

ページトップへ