前田会長

　次いで文部大臣からあいさつがある。

　本日，国語審議会の今期第１回の総会の開催にあたって，一言ごあいさつを申し上げます。
　このたび国語審議会の委員をお願いいたしましたところ，みなさまには御多忙にもかかわらず，快くお引き受けくださいましてまことにありがとうございます。新たに発足した国語審議会には数名の新しい委員をお迎えしましたが，前期の委員のほとんどのかたがたに引き続いて委員をお願いいたしました。前期の審議に際しては，なみなみならぬ御尽力をいただき，深く感謝いたしているしだいでありますが，今期も同様によろしくお願いいたします。
　昭和41年６月，ときの中村文部大臣から国語施策の改善の具対策について諮問がなされました。この諮問に対して審議会はまず当用漢字音訓表，および，送りがなのつけ方を取り上げ，過去４か年にわたって熱心な御審議をいただき，さる５月の総会で，それぞれ関係部会から試案が報告され，一般にも公表し，各方面の意見を求めることとされました。今期はこれまでの審議の成果のうえにたって，さらに審議をお進めいただくとともに，先に諮問いたしておりますその他の事項についても逐次審議を進められるようにお願いいたします。
　国語問題の解決には幾多の困難があり，みなさまがたにおかれましては，御審議にあたりいろいろ御心労が多く，御苦心を要されることと思いますが，国民の日常生活はもとより，わが国の文化のあり方に深いかかわりをもつ重要な課題でありますので，なにとぞよろしく御尽力いただき，適切な御答申をくださいますようお願い申し上げ，ごあいさつといたします。

前田会長

　前期の審議経過報告をお願いする。

安達次長

　従来の審議経過について御報告申し上げる。ただいま大臣のあいさつにもあったように，昭和41年６月13日に開いた第58回の総会で，当時の中村文部大臣から「国語施策の改善の具対策について」という諮問があった。その諮問の内容としては「検討すべき問題点」として，次のことが掲げられていた。

　そして第８期，第９期では諮問の「検討すべき問題点」のうち，主として当用漢字の音訓と送りがなのつけ方について審議を行ない，その成果として，さる５月27日に開かれた第74回総会で，漢字部会からは「当用漢字改定音訓表（案）」が，かな部会からは「改定送りがなのつけ方（案）」が，また，一般問題小委員会からは審議経過が，それぞれ報告された。そのうち，両部会の報告は，これをそれぞれの部会の試案として公表し，各方面の意見を求めることとなった。試案の公表については，総会の直後，新聞に発表したほか，現在，次のような方面に資料を配布し，いちおう９月末日を期限として意見を求めているところである。
　まず，法令関係としては衆議院と参議院の各法制局，内閣の法制局，公用文関係としては衆参両院の事務局，国会図書館，各省庁，地方公共団体等に配布した。次に，報道関係については，日本新聞協会，日本専門新聞協会，全国地方新聞協会といった新聞社の団体のほか，各新聞社115社に，また放送関係ではNHK，民間放送連盟および各放送局82社に，それぞれ資料を送付した。それから関係団体ということで，日本文芸家協会，日本書籍出版協会，日本雑誌協会，日本図書教材協会，全日本広告連盟，日本広告協会，日本速記協会等にも配布した。その他，国語学会の会員，全国大学国語国文学会関係者，各都道府県教育委員会といったように，各機関，団体，個人あてに，既に文書で依頼をしているところである。また一般の希望者の求めに応じ資料を配布，さらに文部広報に試案の全文を掲げる等，広く国民各層に知らせるように努めたしだいである。参考までに申し上げると資料は4,000部ほど刷り，文部広報は13万部ほど発行した。国民各位の意見を聞くための手はずとしては，わたしどもとしては最善を尽くしたしだいである。なお，あとで御相談申し上げることであるが，東京と名古屋で試案の説明会を開催する予定でいる。
　以上のような状況であるが，今後，音訓と送りがなについては，９月じゅうに寄せられる各方面からの意見，また内部での意見等も参照して，なるべくすみやかに御答申いただければありがたいと考えている。そのほか大臣からも申し上げたように，検討すべき問題が，まだ相当に残っているので，よろしく御審議をいただきたい。