国語施策・日本語教育

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次第 かな部会(佐々木部会長)

前田会長

 続いてかな部会長から御報告いただきたい。

佐々木かな部会長

 かな部会では,小委員会を設けないで,なるべく全員がつごうのつくかぎり出席して討議することにした。昨年11月9日から今月の22日まで,最近は,ほとんど毎週部会を開いて審議を続けたが,2月いっぱいは,学校関係のかたがたが多忙であるので,部会を開かなかった。この間,部会を11回開いたが,そのだいたいの審議経過を報告する。
 かな部会も,漢字部会と同様に,試案を公表した。その結果,各種団体や個人から提出された意見のうち,検討すべきであると思われるものを部会所属の各委員から提出してもらった。この中からどれを取り上げて審議すべきであるかについて第1回と第2回の部会で検討した。その結果は資料「かな部会の審議」に見られるとおりである。すなわち,まず基本方針として,(1)全体の構成のしかたについて再検討する。(2)例外と許容とについてはいろいろの意見が出ている。ことに許容は今回の試案の中では新味のあるというか,新しい構想というか,一つの分野を占めているが,これに対して賛成・反対,双方の意見が出ている。そこでこれを取り上げて再検討する。さらに,(3)複合語について検討する。この中で,ことに複合名詞を単独の語と同じように考えて扱ってよいか,それとも特別に配慮すべきかという大きい問題があるので,これを取り上げることにした。
 このような各事項に注意しながら各通則ごとに検討すべく審議を進めている。ただいままでのところ,基本方針では(1)と(2)について,また通則では,単独の語の活用語(通則1,通則2)のあたりまでがいちおう検討を終わっている。
 ただ,いろいろの意見がかわされ,これについて審議に審議を重ねて今日に至っているのが実情であって,その概要を申し上げる。
 まず,全体の構成であるが,これは試案の前文にあるとおり,(1)「活用語は,その活用語尾を送る。」ことを最も主要な原則として通則を立て,通則ごとに必要に応じて,例外・許容を設けるという構成であり,(2)「適用する語の分類を品詞別にしないで,便宜上,大きく『単独の語』と『複合語』とに分け,さらに,これを『活用語』の場合と『活用のない語』の場合に分けた。」この第2の点は現行のものと根本的に構成が違うところであり,また「便宜上」というのは学問的というより,一般の使用者にわかりやすいということを主とする意味である。そこでこの構成について意見が提出されているのであるが,その大要を報告する。いずれも公的な機関から出された意見であるが,日本新聞協会からは「現行の品詞別主義を捨てて語形主義をとった点は改善の努力が認められる。」という意見が出ているし,新潟県教育委員会からは「送りがなを理解するのによいので賛成である。」という意見が出ている。他方,個人の意見として,ある高等学校の先生からは,「動詞・形容詞・形容動詞を一括して活用語とされたのは見よいし,便利な整理案だと思いますが,むしろ,まず語を活用語と活用のない語とに大別し,それぞれの中を単独の語と複合語に分けたらどうか。そのほうが見やすく便利になると思う。」という意見が出ている。
 構成についての大きい意見はこの2種であるが,いちばん大事なことは,どのような構成をするのが使用する者にとって便利であるかという点である。そこでこの意見を取り上げて,佐藤委員に御研究を願った。その結果を第3回部会で検討したが,後段に紹介したような新規の構成をとると,いくつかの問題点がでてくるということであった。
 そこで審議を進めるためには,各通則の例外・許容の問題を審議し,さらに複合語の審議をかたづけたあとで,この組み替えをするのかどうか決めることがよいと考え,あとの論議にまつことにした。このことは第3回のかな部会議事要旨にあるとおり,「便宜上」というのは使用者の立場に立っているのであるから,構成を変える必要はないという意見が多かった。そこで,いちおう問題点を認識して各通則を検討するうち,どのようにすべきかの結論が出てくるのではないかと考え,結論を保留にした。

佐々木かな部会長

 次に例外と許容とについては,一般から削除すべきであるとか,またはできるだけ整理すべきであるとかの意見があり,部会の中でもそういう意見が出ていたので,その方向で検討してきている。
 通則1では,例外(1),(2)のありかたについて,試案のままでよいとする意見と組み替えてはどうかという二つの意見があった。組み替え案は四つ出たが,そのうちで,例外(1),(2)はいずれも一定の法則的なものであるから,本則に組み入れて,本則としたらどうかという案が有力であった。しかし現在のところ,しいて組み替える必要はないという試案を尊重する意見のほうが多いようである。
 問題は,例外(1)である。今までも,許容や例外を認める場合に慣用の固定しているものを尊重してきたが,この場合慣用の固定を判断するための客観的な目安が必要であると考えた。そこで,(1)内閣官報局「送仮名法」(明治22年),および,国語調査委員会「送仮名法」(明治40年)(2)文部省国語調査室「送りがなのつけ方」(案)(昭和21年),総理庁・文部省編集「公用語の手びき」(昭和24年),文部省著作教科書「中等国語」の送りがな(昭和23年)など,現行の告示が出る以前の資料,さらにまた,(3)現行の告示以後の資料として各新聞社の用語集とか手びきの類を参考とすることによって,慣用の固定度についての一つの客観的な目安になると考えて,これを資料とした。そこで,これらの資料によると,例外(3)は,表現の辞句については考慮すべきであるが,だいたいこのまま認めてよいのではないかということに落ち着きかけている。
 次に通則1の許容は,試案作成の段階では,現行の告示ではこのように書き表わすことになっており,既に10年以上も経過し慣用としてかなり固定しているとみられるものであるから,改定してむだな混乱を招かないように許容としたのである。しかしこれについても各方面からいろいろの意見が出ている。また部会の中でも,たとえば「表す(あらわす)」は「表す(ひょうす)」と誤読の関係があるから,「表わす」とすべきであるという意見,しかしそれとの関係で「著」も「著わす」ではないかという意見などがでている。これもさきほどの各種の資料を調べると「断る」,「行う」以外の語は,戦前も戦後もだいたい活用語尾の前の音節から送っていたことを客観的に確認した。そこで結果的には,そのような慣用を尊重して試案のままとするか,または例外・許容を整理するために構成を変える程度になるのではないかと思っている。
 通則2は,いわゆる派生・対応関係にある活用語についてであり,これについてはいろいろ議論した。各方面から提出された意見の中にも,通則2は「活用語は活用語尾を送る。」という原則の単なる例外にすぎないのではないか,あるいは,これらの語も活用語尾だけを送ることでもよいのではないかという意見もある。現行の送りがなのつけ方が,10年以上も経過しているものを,今またこれを改めるとなると,特に教育界等に混乱が起こることが懸念される。そこで,これらの語については試案のように通則2として認めたわけである。なお,通則2の「許容」に関しては,改定音訓表(案)に載っている同類の語174語を取り出して分類し,どのように送りがなをつけるのかを,各委員にアンケートを徴するとともに,さきほど申し上げた慣用に関する各種資料によって,送りがなのつけ方の変遷を分類したものを参考にして検討した。その結果,現在のところ,「許容」に例示してある語の中で言えば,「照す」,「暮す」,「冷す」,「当る」,「替る」というような書き方は許容しないことになった。
 なお,かな部会に所属していない委員にも出席していただき,意見を伺うことになっていたがあまり出席がなかった。そこで,いずれ,かな部会に所属していない委員のかたの出席が願える適当な機会を設けて意見をかわしたいと考えているのであわせて報告しておく。

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