国語施策・日本語教育

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次第 自由討議〔その2〕

鈴木委員

 あと何回,今期に関しては総会があるのか。

福島会長

 第12期審議会は,52年1月23日で終わることになっている。前回総会の時に,審議会も終わりの段階にきているので,1月に1度くらいの割合で総会等を開催するということを申し上げてあるから,10月の終わりか11月の初めに1回,そして12月に1回,1月の最終総会まで含めてあと3回ぐらいだろうと,私は思っている。
 そうすると,これは委員各位と相談しなければならないが,今までに了解したところでは次回に漢字表の草案といったものが出てくれば,それについての意見を伺い始めて,次回を含め3回くらいである程度の試案を一応公表して各方面の批判を求めるという予定である。
 その後,第13期の委員が任命されて,試案に対してあらゆる部門からの批判を受けた上で,2年くらいで結論が出せるというような段取りであろうと了解している。

鈴木委員

 大体3回として,その最後の会は,いわば12期の総まとめである。たとえ内容的には中間的であろうと,漢字表を中心とした,具体的な結論が出されるものと考える。
 そうすると,例えば今日の木内委員からの意見とか,佐藤委員ほかいろいろな方からの漢字表の基本的な考え方といったある意味では食い違った意見,対立的な内容の意見が出されたが,あと3回ではまとまらないから審議だけして何も外部に発表しないという解決も一つある。しかし,実際上はそうはいかない。どちらかというと,急転直下,いろいろな意見はあるが,結局はまとまることになるのではないかと考える。
 長い時間をかけて検討してきて,漢字を多少増やした表が,何かの形で,第12期の結論として外部に出るだろう。それについて,また新聞,印刷等の方からも,その程度ならば,というふうな反応もあるだろう。
 一番大事なことは,今期の終わりに出す漢字表の名前を,例えば当用漢字表を改定したものとするのか,それとも基本漢字表とするか,それとも最低漢字表とするか,ということであると思う。こうした名前の付け方によって,実際問題として,木内委員のお考えの問題は大部分……,細かな問題は一遍に出せないにしても,その趣旨は生きるのではないか。
 名前の付け方により,この漢字表の,日本の漢字の中における位置付けとか将来への展望とかが変わる。それから11期から12期の初めにかけて,目安なのか制限なのか,目安とは何かというふうな議論が随分あったが,それも「当用漢字表」という名前のままにしておくと,制限的なものにしないと言っても,いろいろ解釈が出てくる。日本基本漢字表とすれば,つまり,もっと使ってもいいが,これだけは中心になるという意味で,基本漢字表とか,そういう名前を早く決めないと,いろいろな方が不安を持ち逆行するのではないかとか,審議が収斂(れん)しかかるとまた振り出しにもどるとかいうことが残り3回の間に出てくる。そうすると,結局は,皆がそれならば良いという安心した気持ちで最後に賛成できないで時間切れでそこへ追い込まれていく,そういう心配を私はちょっと感じる。そこで,基本漢字表という名前にすれば,数はこだわらないという委員もおられるから,その名前を小委員会でもどこでもいいから決めてほしい。
 もう一つ,これも木内委員の意見に関連するが,漢字表委員会でも既に討議されたが,発表の際,前文というか,趣旨がつく。その趣旨の書き方次第では,極端なことを言えば,今までの漢字表をそのまま出してもいい。名前と趣旨,前文でうまくある方向をねらうことができれば10字や20字増やしたり減らしたりすることも必要でなくなる場合もある。また,これは実際問題であるが,前文と表を一緒に出すと,だれも前文の方はめんどうがって見ない。表の方をパッと見て100字増えたとか減ったとか言い,従来の漢字制限,当用漢字の発想の延長線でとらえられてしまう。そこで提案したい第2は,国語審議会で出す改定漢字表よりも遅くとも1か月か2か月前に,実際の字数とか,出し入れに触れないで,漢字に対する国語審議会の現時点の姿勢を一つの論文の形で出す。それが一応行き渡った段階で,1,850字より多少,現時点でいくと増えると思うが,2,000字を超さないようなものを出す。
 前文を切り離し,それに木内委員の考えなども多分に入れた,漢字の位置付け,反省,現状認識,将来の展望というものを盛り込む。そして,名前は「当用」ではなくて,「基本」または「最低」というふうにする。私は「基本」が一番いいと思っている。
 まとめると,今までの審議の過程を取り入れて,早く前文の骨子をまとめる必要があるのではないかということ,そして,できれば前文を漢字表と切り離して少し先に発表するということになる。
 もう一つ,今後出す漢字表は,「当用漢字表」を改定したというのではなく,制限的にしないという宣言を文字どおり表に表すためには名前を変えるのが一番いい。
 その2点を提案したい。

福島会長

 もっともだと思う。11期の段階で制限的なものにしないということに一応意向が一致した時にも,「当用漢字表」という名前の付け方がいいかどうかという議論があったが,発表が近づいた段階で解決しようということであったと思う。制限的なものとしないという注釈の付け方だけで一般に理解願いにくいかもしれないという心配は,その当時からあった。お説のとおり,あと3回くらい残っている段階で,その辺の意思の統一というか,意見交換をして適当な案を考える必要があるように思う。漢字表委員会か問題点整理委員会か分からないが,その辺のところを検討願った上で,総会の意見を伺う。試案の顔も見ながらその辺の心配を願うという段階がこの次くらいから出てくるのではないかと思う。
 ほかに何か意見はあるか。

林(大)委員

 木内委員から提出のものについて一言申し上げたい。
 非常に懇切な漢字のための解説であると思うが,これを基本漢字表なり最低漢字表なりの解説としてつけるかどうかは別にして,この審議会での漢字についての共通理解にしていくことができるかどうかということが一つ問題ではなかろうかと思う。この解説の大部分である前のところは,このごろ出ている子供用の漢和辞典とか学習辞典の付録などに書いてあるので,一般の子供たちは,こういう知識を与えられつつあると思う。ただ,そういうものに書いてないことで重要なことを木内委員はお書きになっていると思うので,それを申しあげる。すなわち,最後の結びとしての言葉のところに,特別な事情が二つあるとある。これは一般の漢字の解説書に余り書いてないことで,重要なことであると思われる。
 次に,これは,別にお書きになっていないけれども,というのは,漢字システムということでお書きになったからだと思うが,私は二つ付け加えたい。その一つは,先ほどから議論のあった教育の問題である。漢字はいかにして学習されていくべきかという問題についての解説も必要ではあるまいか。漢字表を作ったとして,それは教育とどう関係するかとか,漢字そのものがいかに教育に関係するかという問題があろうかと思う。
 もう一つは,10ページの終わりの方に,「特に最近は,科学技術の発達と共に漢字の持つ煩わしさの面が減量し」とお書きになっている部分についてである。ここが私は問題で,一つの大事なポイントとして,もう少し我々の共通理解を図らねばいけないのではないか,確かに機械によって我々の煩わしさの面は減量したが,その機械に対しては非常に問題があると思う。情報処理などという言葉を使わなくてもいいが,機械処理の面での問題をやはり漢字は抱えているといわなければならないので,ここでは主眼ではない話であるが,その点は改めて取り上げなければならないのではないかと感じている。特に標準漢字というか,基本漢字というか,そういうことを決めるということは,機械の面では必要なことではないかと感じている。
 教育では,共通にどれだけの字を最低教えなければならないか,機械には最低共通にどれだけの字を含んでいなければならないかというような問題があろうかと思う。
 私は,必ずしも1字でも減らせばそれだけ助かるなどということを申すつもりはないが,一字一字どれだけ経済的な問題があるかということについても,よく承知しなければならないのではないかと感じている。
 そのことを付け加えておきたい。

福島会長

 確かに情報処理上の問題に基本的な漢字の数は大いに関係がある。機械が登場したために漢字の字数が増えては困るという事情はあったと思う。しかし,機械ばかりが能ではないから,この審議会としては,その辺の問題も含めながら,基本ということになるか標準ということになるか,漢字の問題を考えていかなければならないと思う。
 ところで,岩淵主査,次の会の日取りはこれから相談申し上げるところであるが,次回は,「当用」であるか「基本」であるかは別として,漢字表の草案の報告をある程度いただけるというめどで計画してよろしいか。

岩淵主査

 全部まとまった形で提出できるかどうか分からないが,例えば先ほど鈴木委員から話のあった,前文はなるべく早くまとめなければいけないということは,漢字表委員会でも出ている。完全な文章にならなくても前文の要旨ぐらいはまとめられると思う。あるいは選定の方針など,今まで考えながらやってきているので,表自体はできなくても,こういう目でこういう字を選んでいくというふうなことはできるだろうと思う。私は,完全な形でないならばお目にかけて審議していただけるだろうと思うが,ここには漢字表委員会の他の委員も大勢出ておられるので,意見があったらおっしゃっていただきたいと思う。

渡辺委員

 これまでの統計資料調査は新聞とか雑誌などによっているが,漢字表の基本方針の2つの中では,法令,公用文書を一番初めに挙げてある。この法令,公用文書についてはどういうことになるのか。かなり参考にすべきではないかと思うが,その資料はあるのか。

石田国語課長

 法令,公用文書における漢字の使用状況についても,第11期に真田委員その他から,是非調査をするようにという話があった。そのことについて内閣法制局と相談をしながら何とか行政的な調査の形でやってみようということで計画した。そのときいろいろな法令,公用文のすべてについて調査をすることはできかねると考えたので,基本的な法令,それも法律に限定して,1,300件から1,400件の現存の法律のうち,重要と考えられる191件について,その本文中に「当用漢字表」以外の漢字がどのような語形でどれくらい使われているかという調査を,各省庁に協力を依頼して実施することとした。
 現在,各省庁からの回答を集計整理中である。もう間もなくその結果を漢字表委員会に出せると思う。
 渡辺委員の御質問は計量的な調査のことであるかと思うが,この法令中の表外字調査の結果について,今承知していることを少し申し上げると,最も頻度が高かったのは,「俸給」の「俸」の字であり,「戻」の字も頻度が高いと聞いている。その他,都道府県名に使われている漢字がかなり出てきているようである。

渡辺委員

 ついでにもう一つ質問したい。
 戸籍謄本は公用文書に入るのかどうか。もし入るとすると,人名問題が出てくる。人名に用いる漢字は,当用漢字表,人名用漢字別表,今度の人名用漢字追加表に示されている漢字に制限されている。法律的なことはよく分からないが,もし戸籍謄本が公用文書に入っているとしたら,その辺に矛盾のないような取扱いが必要ではないかと思う。

福島会長

 私はその辺のところはよく分からないが,戸籍謄本は公用文書であろうと思う。しかし,古くつけた名前も随分残っており,戸籍謄本という限りにおいては,生きている人全部の謄本,死んだ人のまで入るわけである。当用漢字表では固有名詞は別とされており,またこれから書く公用文書のためにということで,差し当たり問題は考えられるのではなかろうか。
 ほかに意見はないか。(発言なし。)もしなければ,本日の会議はこの辺にして,次回の予定について相談したい。次回は10月下旬ということになるが,会場の都合等により,11月5日の金曜日に全員協議会を開くということで,いかがか。(発言なし。)おって,事務局から通知を差し上げるようにしたい。漢字表委員会の検討も,その辺をめどにしてお考えいただきたい。
 次回も含めて,あと3回くらいでめどがつかなければ次期審議会に申し送るということになるわけであるが,岩淵主査,11月5日では時間的に短ければ,考え直してもよろしいが。

岩淵主査

 そのときまでに用意できるものを報告するようにしたい。

福島会長

 本日の会議はこれで終了する。

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