国語施策・日本語教育

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次第 仮名遣い委員会の審議状況について(報告)(1)

有光会長

 続いて本日の議事に入りたい。前回の総会では「現代かなづかい」を検討するための基本的な問題について,いろいろ御協議をいただいたが,仮名遣い委員会では,その後引き続き「現代かなづかい」をめぐって検討を進めていただいているので,林主査から御報告を伺い,その後,御報告に関連して協議に入りたいと思う。
 それでは,林主査,どうぞ。

林主査

 御報告を申し上げる。
 前総会以後,5回委員会を開いたので,その経過を御報告するとともに,今後の委員会の予定をどう考えているかということを申し上げたいと思う。
 まず,前総会では,ただいまの議事要旨の中にもあるように,一般的な問題として,次のような項目について自由討議を行った経過を御報告した。(ア)「「現代かなづかい」はどのくらい定着しているか」,(イ)「「現代かなづかい」はどのような体系を持っており,その中にどういう矛盾があるか」,(ウ)「「現代かなづかい」の矛盾点がどのように受けとめられており,コミュニケーションの上でどういう問題を持っているか」,(エ)「「現代かなづかい」の実施がどういう影響を日本人にもたらしたか,その得失」,(オ)「規範性の問題」,(カ)「適用分野をどう考えるか」,(キ)「現行告示の書き方の問題,規則の立て方,語例の挙げ方など」,(ク)「固有名詞の表記,外来語の表記との関連」,さらに(ケ)「仮名遣いと古典教育」,大体以上のようなことについて5回にわたって御検討願ったその概要を,前総会では申し上げたわけである。
 前総会以後,4月22日に第6回を開いてから,9月9日の第10回までの前後5回では,具体的に検討すべき事項として,仮名遣いの内容,表記上の問題点を個別に取り上げたわけである。その取り上げた項目については,お手元の青いとじ込みの第一枚目に挙げてある。これは,皆様のお手元にもお送りしてあるそうだが,この「表記上の問題」という8項目について,5回にわたって話し合いをしたわけである。すなわち,(1)助詞の「を」「は」「へ」の問題。(2)オ列長音をめぐる問題。(3)ウ列拗長音,「言う」という言葉を含んで,それに関連する問題。(4)「えい,けい,せい,……」とエ列長音の問題。
 それから(5)四つ仮名の問題。ここでちょっとお断りするが,前回の総会で,私,不用意に四つ仮名という言葉を使って,分かりにくかった筋があったかと思う。実は,「じ・ぢ」「ず・づ」というのが,なかなか発音が厄介なもので,つい私,慣れた四つ仮名という言葉を使ったが,これは,国語学の方で,江戸の初めから「じ・ぢ」「ず・づ」のことを四つ仮名と言っているので,ついそのまま申し上げてしまったわけである。今はもうお分かりいただいていると思うが,どうも失礼をした。
 それから(6)地方的な発音。「カ・クヮ」「ガ・グヮ」と今の「ジ・ヂ」「ズ・ヅ」が地方的な発音として残っている問題。
 (7)「キ」「ク」の促音化と言うか,促音化した「キ」「ク」の問題。
 それから(8)その他ということである。
 以上の8項目のそれぞれについて,検討の際に出た各委員の御意見の概要を,ここに今日用意された資料,「仮名遣い委員会での討議の概況」というものに従って御説明することにする。私,主査としては,それぞれの項目について,できるだけ各委員の御意見を出していただくことに努めたつもりである。それは毎回の議事要旨としてお送りしてあるので御覧いただいていると思うが,今日のこの資料は,事務当局のお骨折りを得て,議事要旨から更に内容の主な点をできるだけ公平にと思って抜粋して取り上げたものである。ただ,ここに掲げた,一つの意見が必ずしも一人の方の発言によるものとは限らず,合併してあるものもある。全体として傾向の見られるものもあるが,これで結論を出したというようなものではない。そのことを最初にお断りを申し上げておく。
 さて,この資料であるが,仮名遣い委員会,第6回ないし第10回で取り上げて検討を行った表記上の諸問題と意見の抜粋とあり,さきの8項目の検討に関連して,最初に,基本的な問題が二,三話し合われている。
 検討の基本的な方向について。まず,「現代かなづかい」を基本的に崩さないという申合せをしておく必要があるのではないかという御意見があった。それから,根本的に変えるべきだとか変えるべきでないとかの議論自体はあってもよいと思う。こういう二つの御意見があった。
 それについて,小中高を通じて,今までやっている流れがあるので,大きく変えることは混乱を招く。常識としても,大きく変えることはできないと思う。また,大きく変えないという線で進んでいただきたいと強く主張する。こういう御意見などがあり,今後の議論の中で自然に方向が出てくるのではないか,という御意見もあった。
 それから「現代かなづかい」から出発して最も使いやすい仮名遣いという方向で検討すればよいのだろう。こういう御意見があると同時にまた,「現代かなづかい」,歴史的仮名遣いということにとらわれないで大きく変えることもあってよい,という御意見もあった。
 これが基本的な方向についてざっと出てきた御意見である。

林主査

 次に,「仮名遣い」というものについて共通理解をしておく必要があるだろうということで意見交換を行った。それについては,まず,日本語,ここではいわゆる和語と漢語──前回の総会で仮名遣い委員会としては,外来語の問題は将来に残すことにしようということを話し合ったことを申し上げたが,外来語を一応除くとあと和語と漢語というようなものになろうと思うが──和語と漢語を仮名で書くときの決まりを一般的に仮名遣いと考えておくということではどうであろうか。それは日本語を書き表すのに漢字をどう使うか,漢字で書くとすればどうするかということが「常用漢字表」で,あるいは「送り仮名の付け方」で決まっているが,仮名で書くとすればどういうふうに日本語を書くかということを一般的に仮名遣いと呼ぶとしておいてはどうだろうか,こういう意見である。従来,仮名遣いというと,同音の使い分けというのが仮名遣いであるというふうに考えられていて,これは言わば限定された意味での仮名遣いであるが,我々としては,同音の仮名の使い分けというだけでなくて,セットの中で──セットというのは,例えば「いろは」というような47字とか48字とかいうセットの中の仮名でどう書き表したらよいかということを考えていけばよいと思う,こういう意見である。
 それに対して,和語と漢語と外来語と今申したが,擬音語というものがあるが,それはどうか。擬音語は日本語の音韻体系に入ってくると思うけれども,一般に擬音ということになると,ちょっと扱いにくいだろうという御意見があった。
 それにつけて,鈴虫の「リーン,リーン」は,こういうふうに書けば書けるわけであるが,そのほかにもう少し虫らしい,あるいは飛行機の音らしい音を人間の発音で出すという擬音があるが,そういうようなものまでここで考える必要はなかろう,こういう御意見があった。
 擬音語に関する問題は,現行の告示では全然触れていないので,言わば自由領域だ,表現の仕方は自由だと考えてもいいのではないか,こういう意見である。それに付け加えて,特殊な方言音や擬音は,我々のただいま議論する仮名遣いの問題とは別に考えておいてよかろう,こういうことである。特殊な方言音というのは,後に「カ」「クヮ」,「ガ」「グヮ」という方言音の問題があるけれども,それは別にして,方言の中には,普通にはちょっと仮名で書けないような方言音もある。例えば「ネァ」とか「ケァ」,「ナゲァエァダお待たせいたしました。これからケァケァ(開会)をいたします」という方言があるが,そういうようなものをどう書くかということに,ここでは議論を及ぼさなくてよかろうというわけである。まあ標準語というものがはっきり決まってはいないけれども,我々に標準語と考えられるところのものをここで考えていこうということになろうかと思う。そういう意見である。
 次に1から8の8項目の一つ一つについてであるが,1は助詞の「を」「は」「へ」の問題。「現代かなづかい」では,助詞の「を」は「を」と書く。それから助詞の「は」は「は」と書くことを本則とする。助詞の「へ」は「へ」と書くことを本則とするというような規定があるが,その「を」「は」「へ」の問題として,例えば「やむをえない」という言葉を,口の言葉では「やもうえない」と言っている人たちがいる。この場合「を」が助詞だという観念が薄れている面もないわけではない。「いわんや〜をや」というのに,「おやおや」の「おや」を書いている人がときどき見受けられる,こういう問題がある。それから「は」については,「私は」とか「東京は」というのは,よく分かるが,「では」「または」「あるいは」「さては」「もしくは」「とは」とかいうようなたぐい,それから「こんにちは」「こんばんは」「こんちは」というあいさつの「は」,それから言葉の中に入ってしまった「いまわの際」とか「かわたれどき」「すわ一大事」というのは語源にさかのぼると「は」であるが,この辺がどうだろうか。あるいは感動の助詞で「そうだわ」とか「降るわ降るわ」というときの「わ」,こういうものが問題である。それから「へ」の場合には「さえ」というのが助詞だけれども,それはどうなるか。ただいま普通には「さえ」は「え」と書いているかと思うが,こういう問題がある。
 こういう問題をめぐって,御意見は,書くときの都合からだけでなく,読む上の便宜からも考える必要があるだろう。それから,助詞には分かち書きの効能がある。助詞の「を」を「お」にすると,敬語の「お」と紛らわしくなる。後の語についてしまうということである。それから,助詞の「は」を「は」と書くことは読み取りやすくて非常によいと思う。現在のとおりでよかろうと思うという御意見。助詞の指導は,小学校では大切である。初めは間違っても,後では書けるようになる。「わたくしは」と書くときに「はたくしは」と書くような子供たちがいるとかいうようなことが,いろいろあるわけだが,初めは間違っても,後では書けるようになるので,現在のままでよいと思うという御意見もある。「こんにちは」というのは感動詞として,助詞の「は」の適用から除いて「わ」としてはどうかという御意見。それに対して,漢字で書く場合など「わ」というのはおかしい。「こんにち」というのを「今日(こんにち)」と書いた後だと,「わ」がつくのはおかしな感じがする。発音どおりでなくても,教えれば覚えるものであるからその辺は考慮する必要があるだろうという御意見がある。
 さらに,「こんにちは」については,「は」「わ」のどちらか一つに決めてしまうか,片方を許容とするかという扱い方の問題もあるという御意見もある。それから「は」については,語によって段階の違いがあることは確かだという御意見。また,「へ」の問題については,助詞の「へ」は「え」にしてしまったらよい,こういう御意見もある。これは,「へ」を本則とするというようなことにしないで,すべて「え」にした方がいいという御意見である。

林主査

 次に2のオ列長音をめぐる問題であるが,オ列長音の一般則と紛らわしいものがある。「オ列長音は,オ列のかなにをつけて書くことを本則とする。」こういうふうになっている。大体はそれで済むわけであるが,ほかに細則の第一の三に「と書くもの」という項目があって,「とお(十(とを))」というのが挙がっている。これは,学校で仮名遣いのテストをすると,ほとんど大多数が「とう」と書いているわけである。これはもともと仮名で書かなければならない場合というのはほとんどなくて,「十」と書くか「10」と書くか,それで済んでいるところなので,仮名遣いとしても余り有効ではないかもしれない。
 そのほかにもう一つ,「に発音されるは,と書く」という項目がある。これは,歴史的仮名遣いで「かほ」と書いていたのは「かお」と書くことにするというようなものであるが,それにひっくるめて,「おおかみ」とか「こおり」というものがもともと,「おほかみ」「こほり」であったものだから,「おおかみ」「こおり」と書くことになった。これが,「おうかみ」か「おおかみ」か,「こうり」か「こおり」かという問題を引き起こしたわけである。その紛らわしいものは,大体次の20語である。「おおい(多い)」「おおきい(大きい)」「おおう(覆う)」「おおかみ(狼)」「おおせ(仰せ)」「おおむね(概ね)」「こおり(氷・郡)」「こおる(凍る)」「こおろぎ(虫の名)」「とお(十)」「とおい(遠い)」「とおる(通る)」「とおり(次のとおり)」「いきどおる(憤る)」「とどこおる(滞る)」「ほお(頬・朴)」,これには「ほほ」か「ほお」かという問題もある。「ほのお(炎)」「もよおす(催す)」,こういったものがあって,紛らわしいというのは,大体これだけと考えてよいかと思う。
 こういうオ列の長音の問題があるが,これに対する御意見としては,オ列の長音については,その概念をもう少しはっきりさせておく必要があるのではないか。特に和語の場合,長音とみなすかどうか微妙なものがある,というのがある。和語の場合というのは,例えば今申し上げた「おおい」とか「おおかみ」とか「おおむね」とか,そいういうたぐいを長音とみなすかどうかという点で,微妙なものがある,という御意見である。
 それから,いわゆる長音という考え方は明治以来の仮名遣い改定案では,元来字音仮名遣いの問題として出てきたものだろう。「現代かなづかい」ではそれを和語の方にも適用して一緒くたに扱ったためにあいまいなところが生じたのではないか。字音語と和語とを区別して考えてみるのも一法だろう。こういう御意見である。
 それから現実的には,細則第九の「おおかみ」「こおり」等の語で「お」と書くところが長音と混同されて「う」と書かれやすいことが一番問題になるところだ。「オ列長音は,オ列のかなにうをつけて書く」という原則自体にはさほど問題はないのではないかという御意見。これは,原則としては今のままでいいんだろうが,適用する語の場合に「おおかみ」「こおり」等の紛らわしいものがある点が問題である,ということである。
 それから別の御意見として,この際「お」はやめて全部「う」にするのがよいと思うというのもあった。すなわち「おうい(多い)」「おうきい(大きい)」「おうう(覆う)」がちょっと困るが,「おうかみ(狼)」「おうせ(仰せ)」というふうにしていっていいんじゃないかという御意見である。
 それに対して,「お」で書く類の語の中にも,語によって,「う」に改めることに抵抗を感じるものと,そうでないものとがあるという御意見がある。「おうう(覆う)」「もようす(催す)」「ほのう(炎)」などというのは,ちょっと抵抗を感じる。ただし「もようす」については,私の見ているところでは,明治のものなんかに「もよふす」と書いたのがあって,これは「よ」の長音として「よふ」と書いたんだろうと思う。そういうことは大分前からないわけではないが,一般に「おおう」「もよおす」「ほのお」などは「う」に改めることに抵抗を感じる,そういうふうにおっしゃったわけである。
 それから,「とお(十)」は「とう」と書いてもそう抵抗はないという御意見。これは先ほどちょっと申し上げた。
 また,オ列長音をすべて「お」で書くという方法もあり得るが,ウ音便の「長ございます」などはいかにも変だという御意見。
 それから,字音語の場合「う」で書いてきた長い習慣がある。──例えば「とうきょう」などというのはみんな「う」で書いてきた──そういう長い習慣があるので,「お」ではどうしても違和感を来す,こういう御意見である。
 それから,「お」か「う」かということで統一するとすれば,「お」よりも「う」だということになるだろうという御意見。
 それから,「おおきい」などの表記もそれなりに定着しているので,これを改めるのは慎重にすべきだという御意見。
 それから,「思おう」「笑おう」などの書き方が気になる。「思わう」「笑わう」のように「ア列のかなに」とすることはできないか,こういう御意見も出たわけである。
 次に3,ウ列拗(よう)長音の問題であるが,これは「現代かなづかい」の備考第七に,「ウ列拗(よう)音の長音は,ウ列拗(よう)音のかなにをつけて書く。」とあり,「きうり」は「きゅうり」,「かりうど」は「かりゅうど」,また「うれしうございます」は「うれしゅう」,「すずしう」は「すずしゅう」というふうに書くということになっている。歴史的仮名遣いにおいては「きうり」「かりうど」「うれしう」「すずしう」ということであったわけであるが,ここのところを拗長音と認めれば「うれしゅう」「すずしゅう」というように書かなければならない。

林主査

 この問題に対して,まず,形容詞の「うれしゅう」「美しゅう」などの「しゅう」は気になる。字音語の「しゅう」と違って,意識としては「ウレシウ」「ウツクシウ」だから仮名遣いも「しう」としたいという御意見がある。この場合,「意識としては」というところでは,例えば「きゅうり」なんかも意識としては「キウリ」だというような御意見も出てくるかもしれないが,御意見としては,形容詞の音便形というようなものをお取り上げになったわけである。
 そこで,次に,字音語の場合は「しゅう」,和語の場合は「しう」というふうに書き分けることになるのか,こういう御質問が出たわけであるが,それに対して,和語でも形容詞の場合だけだ,名詞の場合は,発音と意識と同じだから今のままでよい,こういう御意見があった。それによると,例えば「しゅうと」というのは和語であるが,これは形容詞ではないから「しゅうと」というふうに書いていいということになるのであろうと思う。
 「うれしう」や「大きう」を認めると,「赤う」「高う」なども「あこう」「たこう」でなく「あかう」「たかう」と書いてはどうかという議論に発展するのではないか,こういう御意見も出た。
 それから,例外は原則として増やさないという立場から言えば,「しう」のようにはしない方がよいだろう。形容詞の語尾についても,現在のように「しゅう」としておいた方がよくはないかという御意見。
 さらに,「うれしゅう」のような書き方は個人的には好きではないが,今のままにしておくほかないだろう,こういう御意見もあった。
 さて,「言う」という言葉であるが,「言う」は普通には「ユウ」と発音しているわけである。しかしこれは「現代かなづかい」では,細則第六に「に発音されるは,と書く」とある原則を適用する語として,その語例に「い(言(イ)ふ)」として掲げられている。これに対して,「言う」を「ゆう」とすることも考えられる。口語の上では「言った」「言わない」を「ユッタ」「ユワナイ」と発音する傾向もある,という御意見があった。
 次に,4の「えい,けい,せい,……」とエ列長音の問題であるが,「えい,けい,せい,……」の例としては「えいせい(衛生)」「けいえい(経営)」「せんせい(先生)」「きれい」「せい」など。「せい」は,背の高さと言うのと,あなたの所為だと言うときの「せい」である。「せい(背)」は別であるが,主として字音語であって,これらは普通には「エーセー」「ケーエー」のように発音されることが多いわけである。しかし,これについては「現代かなづかい」では何にも規定をしていないので,「えいせい」「けいえい」と書くことになっている。こういう中央的な発音に対して,「エイセイ」「ケイエイ」「ヘイワ」「ケイザイ」というふうに「イ」と発音される方もないわけではないが,戦前の国語の教科書の指導でも,それからもう少し古く明治ごろからの国語教科書の解説でも,「エーセー」「ケーエー」のように,これを長音として発音するように指導があったわけである。これを長音と認めると,「列長音は,列のかなにをつけて書く」,という細則第十一との関係はどうなるか。「現代かなづかい」では,その細則の語例として,「ねえさん」,「ええ」という応答の言葉が例に挙がっているだけであって,「えいせい」や「けいえい」その他の主として字音語の「えい」「せい」についてはそこで触れていない。
 それについての御意見であるが,字音語の「えい」「けい」の類は,東京語系の自然な発音では「エー」「ケー」のように長音になるのに,「現代かなづかい」でこれらをエ列長音と結び付けて説明していないというのは不親切ではないかという御意見である。「現代かなづかい」はこの点について何も言っていないので,長音だと思っている人たちはどうしていいか,どうもよく分からないということがあるわけである。
 それから,子供は「えい」「せい」などの表記を文字の上で先に覚えてしまうので,指導上特に問題はないようだ,というようなことも学校の側からのお話としては出ている。
 次に,「現代かなづかい」では,字音は「エイ」「セイ」だと認めて,エ列長音とは見ていないのではないかという御意見。確かにエ列長音とは認めなかったということになるのではないかというふうに思われる。
 そこで,例えば「きれい」は「キレイ」から「キレー」まで実際の発音としては無限の幅を認めてよいということが,「現代かなづかい」制定の当時に説明があった,というような御注意もあったわけである。
 また,エ列長音を「エ列のかなに」とするのがよい。すなわち,「ええ」と書かないで「えい」と書く方を本則にしてしまう,その方がよい,こういう御意見もあった。
 それから,現状のままで何の矛盾も感じない。字音語の場合は,実際の発音はともかく,頭の中には完全に「えい」「けい」のように「い」で収まっている。「ねえさん」と「せんせい」とでは意識が違う。つまり,「ねえさん」の「ねえ」というところと,「せんせい」の「せい」というところでは意識が違うと思う,こういう御意見があった。

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