国語施策・日本語教育

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次第 仮名遣い委員会の審議状況について(報告)(2)

林主査

 それから,字音語すなわち「エーセー」とか「センセー」とか言う場合を長音と考えたとしても,「ねえさん」や「ええ」などが長音の中で極めて小さいグループになるので,その扱いが問題になるわけだ,こういう御指摘があった。
 次に5,四つ仮名の問題である。「現代かなづかい」細則第三に「と書く。……ただし(1)二語の連合によって生じたは,と書く。」例えば「はな」というのは「鼻」と「血」の二語の連合である。「三日」の「月」で「みかき」である。こういうが二語の連合。それから「(2)同音の連呼によって生じたは,と書く。」例えば「ちぢむ(縮む)」「つづく(続く)」は,「ち」に続く「ぢ」だから「ぢ」,「つ」の次にくるから「づ」というふうに書く,こういう規定がある。
 二語の連合というのは,どこまでを二語の連合と見るかによって疑義を生じ得るものであるが,これについては,お手元の資料の〔参考〕に出ているような「正書法について」ということで,昭和31年の国語審議会報告にこれを問題に取り上げており,こういうふうになるだろうという一つの解決の方向が示されているわけである。それは「かたづく」,「たづな」,「うなずく」,「きずな」,「こぢんまり」,「せかいじゅう」などというものであって,これによっても,どうしてこちらが「づ」で,こちらが「ず」なのか,これが「ぢ」で,どうしてこちらが「じ」であるかというようなことがなお多少疑義を生じ得る。「心中(ジュウ)」とか「講中(ジュウ)」とか「融通」とかいうのが,また字音の問題として出てくる。それから,「全治(ゼンチ)」と読めば,もちろん「ち」であるけれども,「ゼンジ」と言うときにどうするか。「根治(コンジ)」と言うときにどうするか。これは,呉音の「じ」ととるか,漢音の「ち」の連濁と考えるか,こういう問題がある。
 それから,同音の連呼というのは,「ちぢむ」,「つづく」,「つづる」などであるけれども,「いちじるしい」というのも「チジ」と続くではないか。「いちじく」という果物も「チジ」と続くではないか,こういう問題が問題としてあるというわけである。
 資料の〔参考〕は,昭和31年国語審議会報告で,いろいろ問題点はあるが,これは一応こういうふうに考えてはどうかということを,正書法の解決として考えられたものである。
 この問題のうち,同音の連呼については,同音の連呼の「つづく」「ちぢむ」などは小学生でもあまり間違えない。「つづく」は特に成績がよいというお話があった。これに対して,該当する語が少ないので覚えやすいのであろうという御意見。また,大体定着しているとすれば引き戻す必要もないであろうという御意見。それから,該当する語が少ないのなら何も例外規定を設けて「ぢ・づ」で書かなくてもよいという考え方もあるだろう。つまり,言葉が少ないのなら「つづく」も「つずく」と書いてしまっていいではないか,こういう御意見などがあった。
 次に二語の連合であるが,いわば連濁と我々の言っていたようなものだと考えていいと思うが,これについて,まず,二語ということを歴史的にどこまでさかのぼるか決めておく必要があるだろう。つまり,現代の意識で二語であるか,語源にさかのぼって二語というふうに考えるか,というようなことを決めておく必要があるだろうという御意見である。それから,二語というときの「語」の定義が必要だ。「講中」「融通」などの「中」「通」を語と認めて,「講中」は二語だ,「融通」は二語の連合なのだということにすると,「講中」というのは「中」が連濁で濁って「ぢゅう」になる。「融通」も「通」が連濁して「ゆうづう」になるんだ,こういうことになるはずである。また,その場合,「全治」と言うときの「ジ」が,呉音の「じ」であるか,漢音の「ち」の連濁で「ぢ」になっているのか,こういうことも問題である,という御指摘があった。
 さらに,和語については,どちらでもよいというゾーンを設けざるを得ないだろう。ほとんどの人が語源にさかのぼり得るようなもの,だれでも語源にさかのぼってこれは二つの語だ,こう思えるものは「ぢ・づ」を残しておく。その逆の場合──というのは,これは語源は何だか分からないというような場合──には「じ・ず」でよかろうが,その中間のものが人によって違ってくるだろう。そこで一応標準は決めても,この種のものはどちらでもよいということにすべきである。また,漢語については,一般に一語の意識が強いから語源意識を要求すべきでなく,「講中」は「こうじゅう」でよいと思う。すなわち,「講中」は二語だというふうには考えないで,一語の意識が強いから,「じ」でよいと思う。もっとも「世界中」とか「家中」とかいうときの「中」は「ぢゅう」と決めてしまうのも一法かもしれないが。こういう御意見である。それから,「〜ズク」とあれば一律に「づ」で書くというように決めた方が覚えやすくないか。例えば「片付く」「小突く」というようなのは「づ」にしてあるけれども,そのほかの「ツマズク」とか「ヌカズク」「カシズク」というのも,「カシ」が何だか分からないかもしれないけれども,それらも「つく」だから「づく」にしてしまったらどうか,こういう考え方もある。「チカズク」は「づ」で,「ヌカズク」は「ず」だ,などと言うから分からなくなってしまうという御意見。
 それから,全部「づ」にするくらいなら,むしろ全部「ず」にしてしまった方がいいじゃないか。「チカズク」も「ず」にしてしまったらいい。こういう御意見もある。
 それから,古典に親しむ足掛かりとする意味からも「づく」のような形は残しておきたいという御意見。

林主査

 それから,一律にどちらかに片付けるのではなく,やはり一語一語の問題だから,31年の「正書法について」を検討し直してはどうか。もう30年近くたっているので,語意識が当時とは変わってきているかもしれないから,手直しすべきものがあれば直せばよい,こういう御意見である。
 それから,再検討も必要だとは思うが,もう大分定着していると思われるので,そう大きくは変えられないであろう。教育でもほとんどこの点では支障なく行われてきていると思う,こういう御意見もあった。
 次に6,地方的な発音の問題である。「「クヮ・カ」「グヮ・ガ」及び「ヂ・ジ」「ヅ・ズ」をいい分けている地方に限り,これを書き分けてもさしつかえない。」というのが「現代かなづかい」の注意事項に載っている。これに関しては,実際問題として,新聞社でこれを取り入れて地方版を出したということも聞かないし,学校でこれを教えているわけでもない,という御意見。例えば「クヮ・カ」というように発音を言い分けている地方というのは,今日では,若い人の間では少なくなっている。新潟県とか,徳島県であるとか,あるいは九州のある地方だとかいうようなところで「クヮ・カ」を区別している人がいるけれども,それらの地方の新聞でこれを書き分けているということは聞いていない。また,学校でこれを教えているわけでもない。「さしつかえない」としてあるから書いても構わないけれども,現実にはそうはしていない。それから,四つ仮名の方は,高知県と宮崎県,鹿児島県辺りだが,その辺でもこれを書き分けているわけではない,ということである。
 次に,現在,発音上の区別も薄くなっているのなら,この規定は削ってもよいと思うという御意見。この発音は,大体老人の間に残っていて,これは「現代かなづかい」の一つの影響かもしれないが,終戦後30何年の間に,若い方の世代ではもうほとんど区別がなくなってきている。実態としてそうなっているのであるが,もしそうだとすれば,こういう規定は残しておく必要はないであろう,こういう御意見である。それから,正書法の立場からは,この規定は要らないということになるだろう。「クヮ」という発音を「くゎ」と書くということは決めておいてよいが,正書法としては「図画」を仮名で書くときには「ずが」であって,わざわざ「づぐゎ」と書いてもよいと言う必要はないわけである。以上が「グヮ・ガ」の問題である。
 次に7の「キ」「ク」の促音化に関する問題。促音化した「キ」「ク」の問題,こう言った方がいいかと,私は思うが,例えば「てきかく」か「てっかく」か,「すいぞくかん」か「すいぞっかん」か,「ぎゃくこうか」か「ぎゃっこうか」か,こういうふうな問題である。これは,「現代かなづかい」には,「促音をあらわすには,つを用い,なるべく右下に小さく書く。」ということが書いてあるだけで,「的確」を「てっかく」と書けというふうには書いてない。しかし,これが問題になるわけである。「的」と「確」という字であるから,「てきかく」というふうに書きたい気持ちもある。しかし,実際の発音は「テッカク」であるから「つ」になる。こういうわけである。
 御意見は,漢字が一次的に結合しているものは「つ」にしてもよいが,二次的に結合しているところでは「き」や「く」のままにしておくというのも一法だろうというのが一つ。例の「的確」では「的」と「確」というのが第一次的に結び付いている,このようなものは「てっかく」と書いてもいい。しかし「水族館」というのは「族館」に「水」が付いたんじゃなくて「水族」に「館」が付いた,これは二次的に結合しているところである。「水」「族」と一次的に結合して,二次的に「館」が付いたんだから,二次的に結合しているところは「すいぞくかん」と,こういうふうにしておく。同様に「逆効果」の「効果」というのは「効」と「果」で一次結合をしている。それに「逆」が付いたんだから,「ぎゃくこうか」というふうに「く」にしておくというのも一法だろうということである。ここに挙げてある「水族館」と「逆効果」というのは,実は非常に気になる言葉であって,実際には「スイゾッカン」「ギャッコウカ」と言わなくもないような気がする。そのほかの例で言えば,九段にある「科学館」というのも,普通のときは「カガクカン」とは言わずに「カガッカン」というふうに言っているわけであるが,そういうようなものも二次結合だから「かがくかん」というふうに書くことに決めてはどうかというようなことである。これはいろいろ例がある。
 次は,これに対して,一貫した方針は立てられないのではないか。ふだんは「テッカク(的確)」と言っていても,子供相手ならゆっくり「テキカク」と言ったりする。こういうふうに「テッカク」だか「テキカク」だか揺れているものは,なるべく元の漢字音を書いておきたい,こういう御意見である。
 それから,どちらで書いてもその漢字が想起できればよい,こういう御意見もあった。
 また,この問題は最終的には律しきれないという前提で,原則として一次結合のところでは促音化と見て「つ」で書き,二次結合のところでは「き」「く」を残す。例外的なものは具体的に示して,あとは類推に任せるというのはどうか,という御意見もあった。
 それから,「国旗」のように促音でしか言えないものは「つ」で書く。「国旗」というのを「コクキ」と言う人はほとんどない。だから「つ」で書く。「敵艦」「角界」のように「キ」「ク」で言えるものは「き」「く」で書くとしてもよいだろうという御意見。これについては後で資料で申し上げるが,辞書の扱いにもいろいろあって,辞書によって,同じ語の見出しが「つ」で書いてあったり,「き」で書いてあったり,揺れのあるものがあるけれども,「激化」というものになると,これはほとんどの辞書が「げきか」というふうに書いている。これは一次結合の例であるけれども,そういうように「げきか」と書いている。そういう例もある。それからまた二次結合の語でも「つ」で書いた形を見出しにしている辞書もあるわけである。

林主査

 それから,現行の条文では,促音については「つ」で小さく書くとあるだけで,実際にどの辺までこれを適用するかは示されていないので疑問を生ずるわけだが,個々の語について「現代語音」を決めていくというのも大変なことだ。例えば,「国旗」は「コッキ」でいいけれども,「敵艦」は「テキカン」でなければいけない。「角界」はこうだというふうに,一々の語を決めていくとすると,これは大変なことになる。この種のものはこう書くという程度にとどめておくべきであろう,こういう御意見もあった。なお,私どもとしては,辞書に出てくるような語で,「つ」で書くか「き」「く」で書くかということに悩みそうな問題のある語については,一応全部拾い上げて資料に作ってある。
 最後に,8,その他発音に揺れのある語の問題。これは,例えば「ほほ」がいいのか「ほお」がいいのか,「ホホ」と発音するんだとすれば「ほほ」と書くわけであるし,「ホオ」と発音するとすれば「ほお」と書く,あるいは「ほう」と書くか,こういうことになろうかと思う。「師走」というのは「シハス」というふうに言う人と「シワス」というふうに言う人とがある。これも発音が揺れている。それから,古い言葉で「さきわう(幸(さきは)ふ)」という言葉があるが,辞書などを見ると,ある辞書では,「さきわう」という見出しのところに注釈がつけてあるほか,「さきはう」「さきおう」という見出しもあって,「さきわう」を見よというふうになっている。辞書によって「さきわう」一つしか挙げてないものもあるが,こういう語にはまだ揺れがあるわけである。
 こういう問題が実はあるが,これについての御意見としては,現に発音が揺れているなら二様の表記が行われるのもやむを得ないと思う。どちらを標準と考えたらよいのかという疑問が教育の方面から当然出てくるので,規範的な観点から考える必要があるのではないか。仮名遣いはあくまである発音に対してこう書くということで,逆にこう書くからこう発音せよと決めるのは仮名遣いの越権ではないか。表記によって発音の方が影響を受けることはあると思う。こういう御意見などがあった。
 さらに,二様の表記が行われてよいということなら問題はなくなるというご意見もあった。もう一つ付け加えると,関東では「むずかしい」と言うけれども,関西では「むつかしい」と言う。こういう方言と,標準語の対応の関係で二つの言い方があるのもこの中に入る問題かと思う。
 以上,大変長くなったが,御意見の大要を,少し御説明を加えながら申し上げた。
 さらに,これらの討議に際して仮名遣い委員会に提出された資料についてちょっと申し上げておくと,これはここに刷り物としては用意していないが,一つは,小学校,中学校,高等学校で「現代かなづかい」がどのように習得されているか,獲得されているかという状況に対するテストの結果である。これは,文化庁の主催で毎年,国語問題研究協議会というのが,全国各地で行われてきたわけであるが,その際のいろいろな研究発表の中に「現代かなづかい」をどのように学校では教えているか,どのような効果を上げているかというテストをした報告などが,毎回たくさん出されている。それを国語課の方でまとめて利用のできる形にされたもので,それを我々は利用させてもらうことができるわけである。ただいまそれらのデータの全体的な集計も,国語課の方で進めておられる。そういう学校における児童・生徒の習得状況に関する資料というものがある。
 それから,現行の国語辞書,大体現代語の辞書であるが,その辞書の中に,いわゆる「じ・ぢ」「ず・づ」の四つ仮名の問題,あるいは先ほど出てきた「き」「く」の促音化の問題,そういったものに関係する言葉がどれくらい出てくるか,あるいはその他の仮名遣いの問題語がどれくらいあるかというようなことをまとめた資料も提出されている。
 それから,仮名遣い委員会には出されていないが,用意されているものとしては,ある辞書について,見出し語を全部国立国語研究所のコンピュータの中に入れてあるので,それから整理して問題語の一覧表ができている。大体仮名遣いの問題になるものはすべて取り上げられているわけである。
 国語の辞書は大体6万から8万ぐらいの間の語が挙げてあるような辞書を中心にして調べてあるが,そのほかに国語研究所の方で,外国人に対する日本語教育を行うための基本語彙というものの調査をやっているが,その第1次資料として,基本語彙として6千何百語かの表ができている。その中に仮名遣いの上から見てどのような問題語があるかというようなことも,一つの資料として作ってある。
 それからまた,実際の漢字仮名交じりの新聞紙面にどれくらい仮名遣いの問題語が現れるかというようなこと,これは国語研究所の新聞の語彙調査というものに,生のままの仮名遣い,これは活用すれば活用した形のものがそのまま挙がっているので,全体を見ることができるわけである。そういうようなものの資料も一通りは作ってある。
 仮名遣い委員会でもまだすべてをお目にかけてはいないが,そういうような資料を用意しているし,また用意をしつつあるので,それを申し上げておこうと思う。
 さて,以上のようないろいろの御意見があった中で,今後の問題として出てくる一つは,書き分けの問題である。歴史的仮名遣いにしても,「現代かなづかい」にしても,ある程度は仮名遣いの上で書き分けをするということがどうしても必要である。とすれば,そこの目印はどういうものであるか,どんなことが原則的に目印になるかというようなことを考えなければならないが,今日までの仮名遣い委員会での御発言の間から,それに関連する問題点の目印を取り上げてみる。

林主査

 一つは,問題の語が和語であるか,漢語であるかというような語種の問題。和語ならこう,漢語ならこう,といって書き分けてもいい場合があるのではないか。これは一つの目印になる。
 それから,和語としては,品詞の違いが問題になる。動詞ではこう,形容詞ではこうというように,それだけを取り上げることもあるいはできるかもしれない。活用に関するか,関しないかというようなことを一つの問題に考えてもいいかもしれない。
 それから,字音については,これが漢音であるか,呉音であるかというような,字音の性質によって分けるというようなことも考えられる。
 それから,語形については,これは「現代かなづかい」にあるように,同音の連呼であるか,二語の連合であるか,こういうようなことも一つの問題になろうかと思う。
 これらをすべて取り上げなければならないというわけではないが,御意見の中にそういうようなことがチラチラ出てきたのを,今申し上げているわけである。
 なお,その形に世間がどれだけ慣れているか,慣熟しているか,伝統性の問題。それはまた実際にどれくらい我々の目に触れるものであるか,出現頻度はどれくらいあるものか,使用率はどうであるかということが一つの問題になるかもしれない。そしてまた識別力は,それを書き分けることによって語がはっきり分かるか,あるいは言葉の切れ目がはっきり分かるか,分かち書きの効果を持つか,こういうようなことも一つの目印になるとして取り上げられたかと思う。
 これについては,私が今自分の言葉で申したから,御意見のままではないが,5回,あるいは10回の仮名遣い委員会の間に出てきた考え方の中には,こういうようなものが,あちこちに出てきたと思っている。それらが今後の問題になるわけである。
 以上,5回にわたる委員会の検討とその資料の大体を申し上げたが,今後の委員会の予定について申し上げたいので,もう少し時間をいただいてよろしいか。

有光会長

 どうぞ,よろしくお願いする。

林主査

 長くなって申し訳ない。今後に検討すべき事項としては,法則及び運用上の問題がある。これは,お手元の青いとじ込みの最初に,表があるので御覧いただきたい。その表の一の方が,ただいま一通り御説明したもので,二の方では(1)「仮名遣い」の共通理解ということは御説明した。次に(2)音韻組織の確認,(3)使用する仮名の確認というようなことだとか,(4)規則の立て方,すなわち構成,語例の挙げ方,旧仮名遣いとの対照,許容事項などをどうするかという問題。それから(5)規範性,これは許容とも関係する問題。それから,(6)適用の分野,文体等について,もう少し具体的に詰めていく問題があるのではないかということ。それから,(7)その他。
 こういうようなことについて,従来の検討の内容を踏まえて取りまとめていく必要があると思う。
 ところで,今期の国語審議会の任期は,来年,59年の3月4日までであって,最終の総会にはまた御報告を申さなければならないが,そこでは何らかの成案を提出するというところまではいかないと思うので,基本的な事項についての審議の大体を御報告することになろうかと思っている。しかし,それをめどとするにしても,審議を具体的にしていく必要があるので,今後,小委員会を設けて,問題を整理して,まず仮名遣い委員会の御検討を願うためのたたき台を作っていただいて,仮名遣い委員会の審議の能率を上げたいと考えている。小委員会の委員については,まだお願いをしていないが,比較的少数の方にお願いして,御協力をいただきたいと考えている。
 仮名遣い委員会のこれまでの審議経過については,前回,今回,そのあらましを御報告して,前回総会でそれについて御意見を伺い,また今日今から,承るわけであるが,時間の関係もあって,お一人お一人のお考えを十分に承ることができないので,小委員会の具体的な作業を進める一方で,総会のメンバーの全員に対してアンケートをさせていただきたいというふうに考えている。これは,前回,今回の仮名遣い委員会の報告と,それから総会における御発言を踏まえた上での各委員の御判断をお聞かせいただこうという趣旨であって,この際承っておきたい具体的なアンケートの項目については,今後10月に開かれる第11回の仮名遣い委員会で御相談して決めることにしたいと思っている。このことは9月の仮名遣い委員会でお話し合いをいただいている。
 アンケートを行う時期は,恐らく11月初めになろうかと思うが,アンケートの一方では,小委員会も進むので,アンケートをそれに反映させなければならないとすれば,できるだけ早くアンケートの結果を取りまとめることが必要である。そのため,比較的短期間のうちに御回答をお願いするというようなことになろうかと思う。その点どうかよろしくお願いしたいと思う。
 以上,5回の仮名遣い委員会の御報告と今後の予定,そしてアンケートのお願い,ということを申し上げたわけである。どうも長くなって失礼をした。

有光会長

 ただいま「現代かなづかい」の具体的な問題点を中心に,仮名遣い委員会でいろいろな角度からお話し合いが行われた様子を伺わせていただいた。前回の総会のお話と合わせて,これで大分問題の中身がはっきりしてきたように思う。
 なお,今後の委員会では,法則上の問題,運用上の問題として,現代の音韻組織や使用する仮名について,また規則の立て方等の問題を御検討になる予定だと伺った。そのための小委員会の設置もお考えのようであり,また更に具体的,専門的な検討をしていくための前提として,仮名遣いについての各委員の皆様方のお考えをあらかじめ伺っておきたいというところから,仮名遣い委員会の方から全委員に対して,アンケートを行いたいという御提案もあった。
 この前の総会でも,アンケート等の方法もあるという御発言があったように記憶しているが,これも大変有益な方法ではないだろうかと思う。

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