国語施策・日本語教育

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U 現代の国語をめぐる諸問題(委員から出された主な意見)

4 国際社会への対応, 日本語教育に関すること

(1)  現代の外来語・外国語の使われ方は多様で一概に論断できないが,生の外国語(主として英語)が日本語の中に入り込んで使われる傾向は問題ではないか。

   例えば,テレビのニュースでも英語そのものが流れるし,流行歌の中でも使われるという状況がある。
   そのような状況が確かにあり,それが外来語の広まる原因になっているのかもしれない。そういうものが好まれる社会の風潮が問題である。
   アナウンサーの実況放送などにも外来語・外国語を持ち込むことが多い。放送の大きな責任でもあり,反省点でもある。
   最近,企業や団体名などのアルファベットの略称が多く用いられるようになったが,読み方や意味の分からないものも随分多いように思われる。

(2)  官庁等における片仮名語の使用には慎重であるべきではないか。

   明治期に大変な数の外国語を訳しておいてくれたおかげで, 日本語は哲学や科学の論文を書ける世界でも数少ない言語の一つになった。今は,外国語を日本語に訳す努力は行われていない。流行語は別に構わないし,民間企業の使う片仮名言葉にとやかく言うつもりはないが,せめて政府・行政機関だけは日本語で言えるものは日本語で言うよう,国語審議会から要望してよいのではないか。
   政府関係の文書ではむやみに片仮名語を使わないようにという意見に賛成である。
   官公庁で外来語・外国語を濫用しないようにということを緊急に提案したい。

(3)  日本語の伝達機能を高める等,これからの国際社会での日本語の在り方について留意することが必要ではないか。

   日本語が日本人のものだけではなくなってきている現在, 日本語の伝達機能を高め,コミュニケーシヨンの手段としてのカをよりー層強くするよう心掛けていくことが必要である。
   外国人から見て, 日本人の話し言葉の分かりにくさの一つは敬語の問題だが,もう一つはあいまいな言葉が多いということである。国際的な場では, 日本人のあいまいな言葉遣いが相手によく伝わらず誤解を招く面もあるので,明確な表現をする必要があると思う。

(4)  日本語の基礎語彙(い)・基本語彙の設定,簡約(簡略)日本語の研究に前向きに取り組むべきである。

   日本語教育の指針を示すとともに, 日本語学習者のための基礎語彙・基本語彙を設定することも国語審議会の考えるべきことではないか。
   日本語の国際化ということを視野に置くと, 日本語学習者向けの簡約日本語の研究も必要なことである。
   外国人のために国語を簡単にする必要はない。 日本の文化になじみにくくさせるので,むしろ望ましくない。

(5)  日本語教育の教材,指導方法の開発と教員の養成を推進すべきである。

   国として日本語教育をもっと振興すべきであり,特に教員の養成を緊急に行うべきである。
   日本語教育のより一層の効率化を図るためのパソコン等の情報機器の開発(文章,音楽,図形,映像などを統合的に取扱うことができるマルチメディアソフトの開発)には国としてもカを入れるべきである。

(6)  「国語」と「日本語」という呼称について,その概念の区別と使用範囲を明確にしておくべきではないか。

   「国語審議会」という名称は「日本語審議会」とする方がよいのではないか。
   「国語」というのは,日本でもイタリア( lingua nazionale )でも,近代国家の成立に伴い政策的な意図で統一され,人為的にルール化されたものであって,政策的な審議になじむものである。
   「日本語」は自然言語的なものであるのに対して, 「国語」は明治になって成立し,以来人工言語的に整理されてきたものと言ってよいのではないか。
   「日本語教育」 と 「国語教育」という区別に日本の言語文化を伝えていく上の二重構造の問題があると思う。今これを一本化するのは無理だと思うが。
   「国語」というのは自国語に対する自覚に基づいたものと考えたい。 したがって,国民教育の上では「国語」でなくてはならないと思う。
    「日本語教育」という場合の「日本語」は英語におけるEnglish as a second languageに相当するものだろう。

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