国語施策・日本語教育

HOME > 国語施策・日本語教育 > 国語施策情報 > 第19期国語審議会 > 現代の国語をめぐる諸問題について(審議経過報告) > U 現代の国語をめぐる諸問題(委員から出された主な意見)

U 現代の国語をめぐる諸問題(委員から出された主な意見)

5 国語教育に関すること

(1)  漢字を読む能力を伸ばすことが必要ではないか。

   常用漢字以外は仮名書きにするということでなく,振り仮名などによって読める漢字を増やすようにするとよい。
   読める漢字を増やすということに賛成。ただし,入試で難しい字を出すということにつながらないように気を付けてほしい。
   新しい指導要領では配当外の漢字を用いて振り仮名を振れるように,また,交ぜ書きを減らすようにという方向が既に出ている。教科書以外でも,新聞などで中学生には読めないような字には振り仮名を振るという配慮があるといいと思う。
   エレクトロニクスの急速な発達は従来の国語審議会の予測し得なかったもので,漢字を書くこと (入力)は簡単になり,それを読む能力が大切になってきた。 ワープロなどの普及とも関連して,読む漢字と書く漢字の区別,読める漢字を増やす必要があるかどうかなど,十分考える必要がある。
   学校教育における漢字の読み書きの指導については, 「常用漢字表」 を基本としており,読める漢字を増やすということでそれ以上の指導を行うとすれば,まず「常用漢字表」の見直しをする必要があるのではないか。

(2)  情報機器の発達は国語の教育の中でも有効に生かされるべきものではないか。

   ワープロは使い方によって,国語のカを伸ばすのに非常に役立つのではないか。
   児童・生徒がワープロ等を相手に漢字を出したり文章を書いたりする過程で,漢字や文章に興味を持つようになるという面もあるようだ。
   学校教育においては,児童生徒が自ら書くことによって書くカを育成することを重視しているので,学校教育の段階でワープロを安易に用いることは書くカの育成に支障を来すのではないか。

(3)  音声言語,話すこと・聞くことの教育を充実させることが必要ではないか。

   これからの国語審議会では音声言語の問題を中心に取り上げていくとよい。話し言葉にどういう問題があるかを詰めて,一つの指針を示すとよいと思う。学校教育だけでなく,社会教育,家庭教育の面でも提言や指針が示せるとよいと思う。
   昔は読み書きが重視されたが,今は入社試験でも筆記より面接が重視される。 日本語の面白さ素晴らしさが発揮されるためにも,話すこと・聞くことの教育を一層推進してほしい。
   きちんと意見の発表ができるということがこれからの日本人には非常に大切だと思うので,聞く・話すを重視すべきである。
   場合に応じた生き生きした言葉遣いを身につけることができるような教育をしてほしい。

(4)  朗読によって言葉のリズム・美しさを体得させることが必要ではないか。

    戦後, 日本語に朗誦性・伝統的な美しさが失われたのは,朗読に力を入れてこなかったのも一つの原因ではないか。そういう面での論議を期待する。
   源氏物語などを朗読すると日本語の美しさに感動する。中学生などにも近代文学の作品の朗読などを通じてその美しさを体験させてやりたい。良い文章を読むことによって言葉の美しさ・リズムなどを体から学ぶ機会がもっとあるとよいと思う。

(5)  国語教育の中にも国際化の視点を取り入れるべきである。

   これからの国語教育は, 日本語をよく知らない外国人に対してどういうふうに話すかなど,外国人への意思の疎通にも配慮したものになっていく必要がある。
   話すこと,聞くことにもっと重点を置き,きちんとした分かりやすい言葉で的確に伝達することができるようにする必要がある。

(6)  表現力,書写力をも重視すべきである。

   学力を伸ばす上で表現力というものがこれからますます大切になってくると思う。
   美しい文字を書くことも大切である。書写の指導に一層力を入れる必要がある。

(7)  教育関係者の国語の重要性についての認識を深める必要がある。

   教育の根本は言葉であるということを,教育関係者によく認識してほしい。
   教員養成に当たっても,国語に関する知識・能力を教員を志望する者の基礎的教養として, よりー層重視してほしい。


  (注)  その他,学校や社会の言語環境の乱れ,教員の言葉遣い,児童を国語嫌いにする入試問題,帰国子女に対する国語教育等のことも話題になった。

トップページへ

ページトップへ