国語施策・日本語教育

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次第・議事要録 第2委員会の審議状況について2

水谷(第2委員会)主査

 オ)からは,かなり具体的な事柄なので,ずっと読んでいく。

オ) 日本語教育に対する需要の増大と多様化に応じて日本語教育に関係する機関も多様なものとなっている。日本語教育に関する施策は需要が急激に増大したこともあり,それぞれの機関が取りあえず対応するというような傾向が見られたことは否定できない。今後は日本語教育についての基本的な理念を整理した上で,日本語教育関係機関の連携を一層推進し,長期的・総合的な視野に立った施策を強力に推進すべきである。
カ) 日本語教育に対する需要の増大と多様化に伴い,指導内容・教材・指導方法等の研究開発,各種情報機器の活用,優れた指導者の養成等を積極的に進めるべきである。
 また,専門的な知識を持った日本語教師の重要性について社会一般の認識を深める必要がある。
キ)国内の外国人登録者数の総人口に占める割合は既に1%を超え,今後も,地域社会で生活する日系南米人,技術研修生,外国人配偶者等の外国人の増加は続くものと考えられる。このような地域社会における国際化の進展に伴う日本語教育の需要の増大に,的確に対応することが求められる。特に,地域の日本語教育における日本語教師の重要性とボランティアとの関係については,双方の役割分担や相互の協力関係について,十分に研究する必要がある。
ク)外国人子女や帰国子女に対する日本語教育の論点として,以下の3点がある。
@外国人子女の多様化にどう対応するかの問題
A日本語教育についての専門的知識を持った者による指導体制の整備の問題
B海外・帰国子女の日本語保持能力と日本人としてのアイデンティティーとの関係の問題

 Bの問題はかなり重要な課題で,これはきちんと押さえておく必要がある。言葉の問題だけではない,ほかの領域の問題との関係の追求の必要性を示唆している課題だと思う。


ケ) 我が国がその国際的影響力に見合った役割と責任を的確に果たすためには言語の問題はゆるがせにできないことであり,国際機関や国際会議の会議用語の問題は重要な視点である。現在,ILOでは日本側の経費負担により総会の半分程度の会議で日本語が使われている。英語等が異言語文化圏間の媒介語となっている現状を踏まえつつ,国際機関や国際会議の会議用語としての日本語の役割の増大について検討する必要がある。
コ) 特に,日本語を国連の公用語(現在は英語,フランス語,ロシア語,中国語,スペイン語,アラビア語)に加えることを我が国として積極的に主張すべきかどうかについては,今後各方面で十分議論されることが期待される。

 その下の方に,参考として「積極的に主張すべき」と「慎重に対応すべき」との意見を列挙してある。アラビア語が,オイルの問題と関連して,アラビア語圏の人たちの積極的な働きかけで公用語に加えられたという経緯などについても話題が提供されて,議論が一しきり活発に行われた。
 以上が,第2委員会の国際化に対応する項のまとめである。

水谷(第2委員会)主査

 次に,資料3の方を御覧いただきたい。こちらは「ワープロ等における漢字の字体の問題について」ということで,ワーキング・グループが4回にわたってヒアリングを行ってきた結果と,事務局が周辺の情報の収集をしてくださったことを簡単にまとめたものである。
 これも見ていただければ分かるのだが,読ませていただく。

1 常用漢字表審議の過程での表外字の字体についての考え方
(1) 昭和52年「新漢字表試案」の説明資料では「新漢字表は目安であるから,表に掲げていない字でも,字体を考える必要がある。「へん」「にょう」等は,新漢字表の字体に準じて統一することができよう。「つくり」については,機械的に安易に統一することはつつしむべきである。今後,十分時間をかけて具体的に検討する必要がある。また,同一字種に対して二つ以上の字体が生まれるようなことは避けるべきである。」としていた。

 このあたりから問題が始まっているわけだが,このワーキング・グループではヒアリングだけを行ってきており,議論をほとんどしていない。一体,ワープロにおける漢字の問題はどこに問題があるのかということをヒアリングの中でいろいろ伺いながら考えていても,実態というものはなかなかつかみにくい。問題解決をどうすべきかというのは,更に難しいという感じがする。慎重にやらなければならないと思っている。
 昭和52年以降の「へん」「にょう」の問題に関しては,(3)にあるようなことが,54年の中間答申と56年の「常用漢字表」の前文に書かれたわけである。これが国語審議会絡みの「常用漢字表」周辺の情報である。
 ヒアリングの結果私どもが知ったことは,分野によって,領域によって,この問題に対する態度に違いがある。新聞等では,常用漢字以外の文字について略体を使うということについてで割合に緩いところがある。しかし,出版界の方では厳しい意見を主張をなさるというようなことがあって,一体どのようにしてコンセンサスが作り得るのかということに困難を予想させる。
 2の「人名漢字の字体」は法務省令の戸籍法施行規則の関連である。そこに「尭」「弥」「遙」など50字程度の略体が含まれている。
 3の「新聞における表外字の字体」。これはヒアリングの中ではっきりしてきたことであるが,朝日新聞は昭和30年代から略体をかなり大幅に採用している。略体採用の方針は新聞社によって違っていて,読売新聞・毎日新聞は,「しめすへん」「しんにゅう」「食へん」に限って略体を採用して,そのほかの文字はいじっていないというような状況である。
 4の「書籍出版における表外字の字体」については,表内字は新字体で,表外字は伝統的な旧字体でという考え方が,出版界では定着しているという話がヒアリングの中であった。
 5の「辞書における表外字の字体」についても,そこにあるような形で得られた情報が載せられている。
 6の「教科書における表外字の字体」はどうかということであるが,常用漢字表以外の漢字の字体については,慣用を尊重するということになっている。人名漢字の新字体のようなものは,慣用の熟したものを取り上げるということだそうである。
 7の「JIS漢字における表外字の字体」。この辺りが直接ワープロにおける漢字の問題につながってくる事柄であるが,昭和53年制定のJISを,58年に改正した際に――ここが一番問題を起こし始めたところであるが,第1水準の中の表外字の字体を「鴎」「涜」「屡」等の略体の形で示したことから,ぼつぼつ問題が表れ,混乱が生じ始めたということが分かってきた。
 実際の実情はパソコン系のワープロでは余り問題がないけれども,ワープロ専用機の場合には,キーボードをたたいて打ち込んでも,期待する字が表れてこないという問題が確かに生じている。そういった問題の解決には統一したルールを設定することもあり得るけれども,これについては技術的な問題は余りないようだが,一方では経済的な問題もある。そういうことが少しずつ分かってきている。そういう言い方をしてもいいのかどうか,議論していないので多少心配ではあるが,問題が少しずつ分かってきているという段階である。
 もう一つだけ加えておくと,9の「学術用語における表外字の字体」の問題があって,これもヒアリングの中で受けとめた問題なのだが,例の中にあるような「と」という字,「頚」「躯」といった類の字体が学術用語集で用いる360字の表外字中に確かに入っている。こういった問題をどう我々は考えていくかということが,これからの審議の課題になっていくだろうと思われる。
 この後,第2委員会及びワーキング・グループは,更に第6回,7回の委員会,あるいは第5回,6回のワーキング・グループを来年の1月にかけて予定しており,その中で現在の検討事項で積み残した外来語の問題を含め,審議を継続していく予定である。

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