国語施策・日本語教育

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I 言葉遣いに関すること

1 基本的な認識

(2) 言葉遣いの標準の在り方

 国が言葉遣いの問題にかかわることについて,一般の人々はどのように考えているのであろうか。
 世論調査(平成7年文化庁)によれば,「国が言葉遣いについてゆるやかな基準を示すことが必要だ」について,「そう思う(46.5%)」人は半数に達してはいないものの,「そうは思わない(40.2%)」人よりは多く,また,「言葉は時代とともに変わるものであり,自然に任せた方がよい」についても,「そうは思わない(48.6%)」人の方が,「そう思う (38.7%)」人より高い割合になっている。しかも,「国が日本語の正しさや美しさの保持に努めることが必要だ」や「国は言葉遣いの大切さについて国民の意識が高まるよう努めることが必要だ」について「そう思う」とした人が約7割という数字もある。これらのことから,多くの国民が国に期待を寄せていると考えられる。このような期待にこたえるため,国語審議会は言葉遣いに関する今期の審議の成果をどのような形で生かすことができるのであろうか。
 一つには,国が美しく豊かな言葉の普及のための施策を更に推進するよう,また,新聞・放送,学校教育等の分野における取組や,民間の出版物としての手引書の類の作成が一層活発に行われるよう,提言を行うことであろう。また,国語が「平明,的確で,美しく,豊か」であるためには,一人一人がそれぞれ言葉の美しさや豊かさを判断する言語感覚を持つことが基本であり,国語審議会としても,それを支援するための方策を考える必要があろう。その一つとして考えられるのが,後述する「言語環境の整備」である。
 今一つには,国語を大切にしようという提言や,言語環境の整備を効果的に行う上で,言葉遣いについての何らかの標準を示すということである。言葉遣いの問題は,その対象となる範囲が広く,多面的かつ多分に流動的であるため,緩やかであるにせよその全体を覆うような標準の類をまとめることは非常に難しいが,その中にも適否の判断が比較的可能な分野がないわけではない。しかも,教育界などではそのような判断を求める声が高まっていることも事実である。
 世論調査等によって問題の実態を把握しつつ,慎重かつ十分に審議を重ねた上で,言葉遣いの理念を示し,具体的な事柄についてはそれぞれ本来の語形・用法,変化の方向性を示すことが国語審議会の責務とも言える。さらに,将来はその見識に基づいて,言葉遣いに関する,強制力のない緩やかな標準を示すことに取り組んでいく必要もあろう。ただし,標準を示すとしても,その性格は,緩やかな目安・よりどころという程度であり,なおかつそれを必要とする人の参考に供することを旨とするにとどまるべきであろう。


付 言葉遣いの標準の現状等
   言葉遣いについて何らかの標準を示すものとして,従来国語審議会によって示された建議等のうち,今期国語審議会の検討にかかわるものとしては,次のようなものがあるが,今期は特に「これからの敬語」の再検討を中心に論議を行った。なお,新聞・放送,書籍・雑誌等の分野においても,それぞれ「用字用語集」「発音アクセント辞典」の類を定めるといったことが行われている。
    @ 「これからの敬語」(建議 昭和27年)
    A 「標準語のために」(標準語部会から総会に対する報告 昭和29年)
    B 「話しことばの改善について」(建議 昭和31年)
    C 「語形の「ゆれ」について」(第2部会から総会に対する報告 昭和36年)
    D 「発音の「ゆれ」について」(同前 昭和40年)
   言葉遣いの標準についての判断基準としては,国立国語研究所の「語形確定のための基礎調査」(同研究所年報7 昭和32年所収)に掲げられた,ゆれのある語について標準的なものを選ぶ場合の判断基準30項目などが参考になろう。例えば,一般的/特殊的,共通語的/地方語的,使用地域が広い/狭い,規範に合う/合わない,増加の傾向にある/減少の傾向にある,ロ頭語的/文章語的,語感が良い/悪い,言いやすい/言いにくい,聞き分けやすい/聞き分けにくい,などである。

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