国語施策・日本語教育

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I 言葉遣いに関すること

2 言語環境の重要性

(1)言語環境の整備

 「言語環境」とは,言語生活や言語発達にかかわる,文化的,社会的,教育的等の環境を言う。特に言語形成期・発達期の子供たちにとって,学校,家庭,地域社会,新聞・放送等の言語環境が及ぼす影響は大きいと思われる。

ア 学校における言語環境の整備
 学校教育においては,国語科はもとより各教科その他の教育活動全体の中で,適切で効果的な国語の指導が十分に行われるよう,指導方法の改善などを図る必要があろう。すなわち,国語科担当の教員だけでなく学校教育に携わるすべての教員が,美しく豊かな言葉について関心を持ち,児童生徒の言語環境の整備について更に積極的にかかわることが望ましい。
 大学では,教員を志望する者の基礎的教養として国語に関する知識能力を重視することが望ましい。また,大学の教員が言葉について関心を持ち,学生が表現や伝達を的確に行うための言語能力を拡充するよう支援することが望ましい。

イ 家庭における言語環境の整備
 子供の言葉の習得と発達にとって,家庭が果たす役割は重要である。したがって,家庭においては,家族間のコミュニケーションが十分に行われるよう心掛け,子供の発達段階に応じた言葉遣いの指導に留意することが望ましい。また,学校教育や社会教育との関連を考慮することも大切であろう。

ウ 地域社会等における言語環境の整備
 言語環境の整備は,個々の学校,家庭等が努力するだけでなく,地域社会全体として取り組むべき課題である。このため,学校,社会教育機関・団体,新聞・放送等が連携し,総合的に言語環境を整備する体制を整え,これを推進することは生涯学習の面からも望ましい。具体的には,例えば,青少年期における読書の意義について認識が深められ,読書の習慣が普及するよう,地域や学校の図書館の整備充実を一層推進することが必要であろう。

エ 新聞・放送等の役割
 世論調査(平成7年文化庁)において,「新聞や放送などは,そこでの言葉遣いが子供などに与える影響を自覚することが必要だ」について,「そう思う」と答えた人の率は9割近かった。
 テレビ・ラジオ等の放送,新聞・雑誌等の出版物など様々な媒体は人々の言語生活に対して大きなかかわりを持っており,特にテレビの娯楽番組等や広告・宣伝の言葉遣いが幼児や青少年に与える影響は大きいと言われている。
 したがって,新聞・放送等においては,言葉遣いについて更に配慮するとともに,その活動を通じて国語に関する国民の意識が高められるよう努めることが期待される。

オ 国の役割
 言語環境を整備し,美しく豊かな言葉の普及を図ることは国の重要な役割の一つである。このことを推進するには,まず,言語環境と言語発達の相関についての調査・研究が急務であろう。 それらの成果に基づいて,学校,家庭,地域社会や新聞・放送等にも言語環境の整備改善を要望しつつ,国民全体が国語に対する意識を高め,国語を大切にする精神が養われるよう,次のような方策に努めることが必要である。
@ 学校,家庭,地域社会等を通じた言語環境の整備の重要性を提言すること。
A 文化庁の「ことば」シリーズやビデオテープ「美しく豊かな言葉をめざして」は,多くの国民が言葉について関心を持ち,日常生活の中で言葉について話し合う機会を広げるためのきっかけ・参考となることを意図しているが,これらの事業の一層の充実発展を図ること。
B 国語問題研究協議会,国語施策懇談会等を一層発展充実させるなどして,多くの国民から幅広く言葉に関する意見を収集し,それらが施策に反映されるよう図ること。

カ 国語研究の振興
 国語研究はそれ自体重要な価値を有するとともに,国語施策の立案や国語教育の基礎ともなるものであり,更なる振興を図る必要がある。
 特に,国立国語研究所は我が国の国語研究の中核を成す機関であり,一層整備充実されることが期待される。
 言葉は時代とともに変わるものであるが,それぞれの時代ごとの十分な用例を収録した国語の大辞典を編集することは,国語の歴史を明らかにし,国語の伝統を継承するために極めて有意義である。また,このことは言葉を大切にする心を養い,国民の国語に対する意識を高めることにもつながるものである。現在,国立国語研究所で編集の準備作業が行われているが,このような事業を更に積極的に進めるよう,体制の整備を図る必要がある。

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