国語施策・日本語教育

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U 情報化への対応に関すること

3 ワープロ等における漢字の字体の問題

(2)字体の問題についての考え方

 今回の課題は,「ワープロ等における漢字の字体の問題」の現状を明らかにし,その対応策について検討することであったが,その前提として,ワープロ等に搭載されているJISの第1水準,第2水準と「常用漢字表」とは全く性格が異なる漢字表であるという理解が必要であると考える。すなわち,固有名詞を対象とせず,また各種専門分野や個々人の表記にまで及ぼそうとするものではない「常用漢字表」の性格と,逆に,そこをも対象とした情報交換のために作られているJIS漢字表の性格との違いを,十分認識しておくべきである。
 まず,JIS規格の昭和58年改正に際して行われた字体の変更によって,現在,ワープロ等で発生している字体の混乱,具体的には「おう」が出ないというような状況の改善を図るという問題を考える必要がある。このような状況は,固有名詞の表記において用いたい字体が使えないなどの不自由をもたらしているとも考えられ,なるべく早急に解決することが期待されているからである。そういう意味では,固有名詞などの表記の多様性に応じた各種の方法,例えば,既にJIS規格として出されている「補助漢字」をワープロ等に搭載することで,解決を図るということも一つの方法となろう。なお,この問題については,今後,更に論議を進め国語審議会としての考えをまとめることとしたい。
 ただ,今回の課題の背景には,表外字全般の字体をどう考えるかという問題が存在しているのも事実であり,根本的な解決には表外字の字体そのものの検討が必要となろう。しかし,表外字については一切字体の変更を認めるべきではないという意見と,常用漢字に準じた整理を及ぼすべきであるという意見が,以前から深く対立しており,今回の一連の「字体に関するワーキンググループ」における聞き取り調査でも,この二つの意見が深く対立する形で出されていたのが実情である。
 また,文化庁が平成7年に行った世論調査でも表外字の字体については,ワープロから「鴎」のような漢字(略体)が出てくることは構わないとする人が42.0%,ワープロからも「おう」のような漢字(いわゆる康熙字典体)が出てくる方がよいとする人が41.3%,という結果が出ていて,現時点で表外字の字体を扱うことの困難さを示している。
 表外字の字体については,手書き文字や低画素数(画素(がそ)…コンピュータのディスプレイなどの画面を構成する最小単位の点。単位面積当たりの画素数が多いほど精密な表示ができる。)の文字のことは一応別のこととして,社会一般における印刷文字の安定すなわち異体字をこれ以上増やさないという観点から,伝統に基づく標準性,略字的なものの現在の普及度,機械や技術の進歩による将来性などを総合的に検討しながら考えていく必要があろう。そういう意味での一つの考え方として,現在の社会生活での慣行に基づき,康熙字典体を本則としつつ,略体については現行のJIS規格や新聞などで用いられているものに限って許容していくという方向も考えられる。今後,表外字全般の字体の問題に取り組むことについて更に論議を続けることとしたい。

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