国語施策・日本語教育

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次第・議事要録 第1委員会における論議の概要について1

清水会長

 先ほどもお話があったように,本日の議事は,第1委員会,第2委員会からの御説明をいただき,それに基づいて総会として御議論いただくということである。
 初めに,第1委員会からの御報告を北原主査にお願いしたい。

北原第1委員主査

 それでは,資料1を御覧いただきたいと思う。それに従って御報告させていただく。
 先ほど課長の方からもお話があったように,前回の総会以後2回委員会を開催した。
 特に,9月19日の第8回の方には会長さんも御出席くださって,しっかりと監督をしていただいた。
 論議の概要のまとめ方は,この前の3と同じような方向であり,前回報告したものに新しく出てきた意見を付け加える形になっている。例によって,最初に大体共通理解を得たようなところを書き,その後に○を付けたのが個人的な御意見,それから,*は総会でお出しいただいた意見で,それらを列挙する形でまとめてある。
 第1委員会も既に8回を数え,そのうちの2回が新しいということで,前回御報告したことを重複して載せている部分が非常に多いが,今回は少しまとめ方を変えたところがあるので,その辺を中心に御説明をさせていただきたいと思う。
 1は「言葉遣いと敬語」という新しい標題を立ててみた。これはこの前「検討範囲」という形で出しておいたところであるけれども,第1委員会の中では,敬語形式以外にも視野を広げて,敬語にかかわる様々な言語行動を含めて検討する必要があるという意見と,敬語形式にかかわる部分を中心とすべきだろうという意見があり,現段階では枠組みを大きく取って議論を重ねるということで,その二つの考え方の共通理解を求めていきたいと思っている。
 1ページ目の○は,全部前に出した御意見なので,御覧いただきたいと思う。
 2ぺージ目に行って,「検討の観点及び検討方法」。(1)の「検討の観点」は前回のものと同じであるが,@を「言葉遣いと「心」」というようにまとめてみた。この前,「言葉遣いの基本は「心」である」という形で書いておいたことをちょっとまとめただけだが,ここでは下の二つの*を新しい御意見として載せさせてもらった。しかし,これは総会での御意見であり,先ほど御承認いただいた議事録の14ぺージと16ページに書いてあるものなので,ここで読み上げることは省略する。
 要するに,「心」ということよりも敬語という形式が大事ではないかというような御意見に対して,そうではなくて,運用とか,使用する効果とか,そういうことを問題にしたいんだというような御議論である。
 2ぺージ目の方は,A,Bも全く変わっていない。「検討の観点」として,今の@,A,B,3ぺージに行っていただいて,Cの「国際化」も全く同じである,Dの「情報化」,Eの「方言」,Fの「使いやすさ―簡素な語形」,この辺の七つまでを検討の観点として挙げているのは,全く変わっていない。
 5ぺージの「3 敬語の標準」というところであるが,これも柱は変わっていないけれども,(1)の「標準作成への取り組みと国語審議会の役割」というような標題にまとめてみた。これは二つに分かれていた「国語審議会の役割」と「標準作成への取組」をまとめて,国語審議会が標準作成にどのように取り組むべきかというようなことをはっきりと出して書いてみたわけである。パラグラフが変わったところからちょっと読ませていただく。

第1委員会では,敬語の標準について,「敬語の標準を示すべきである」という積極論と,「敬語の標準を示すのは困難であり,示しても受け入れられないのではないか」という消極論とがあるが,両者は今後標準の性格や内容,適用範囲等を更に具体的に詰めていくことで歩み寄れるものと思われる。
 この取り組み方の姿勢は,ひとえに国語審議会の存在意義の認識にかかわるところであろう。国語審議会としてこの問題を取り上げ審議するからには,やはり現代の敬語の理念を示し,その理念を実現するための具体的な使い方を例示することが求められているという認識に立つべきではないだろうか。

 以上のようにまとめていて,6ぺージにあるように,「@積極論」と「A消極論」というふうに分けてみた。先ほどから申し上げているように,○とか*の付いているのは,新しく付け加えたという問題ではなくて,今までのものを「積極論」と「消極論」に並べ換えただけのことである。ここに出ているのは「論議の概要−3」にすべて出ているものである。
 6ぺージ,「敬語の標準」の「(2)敬語の理念」は,新しくまとめてみたものであるけれども,まとめている文章が全然なくて,そこに挙がっている御意見は今までのものである。先ほどから「標準」という言葉を使っているが,第1委員会の中でも「標準」という言葉には非常に抵抗を感ずるという御意見もあり,「敬語の在り方」というような言葉でもいいかもしれないが一敬語の標準,在り方を示すのであれば,昭和27年度に建議した「これからの敬語」は民主主義の時代の敬語というような一つの新しい理念をうたっていたわけだが,今度それに代わる我々のフィロソフィーのようなものが必要だという意見が多く出ていて,ここに出た御意見をまとめていこうということで,「敬語の理念」という柱を立ててみた。

北原(第1委員会)主査

 1番目と2番目の辺りをもう一度読んでみる。6ぺージの下から一つ目の*と最後の○である。

 敬語は社会や人間関係と密接に関係する。国語審議会は今後「これからの敬語」に代わるものを作る場合,21世紀の世界の中の日本語,その中の敬語をどう位置付けるかを問題にしなければならない。今までの日本社会を支えてきた敬語について客観的に社会の在り方との関係で分析することが必要である。
 日本がアメリカナイズされ,待遇表現にもアメリカ風の非形式表現・親愛表現・働き掛け方式などが入ってきている。アメリカの方式=近代化=進歩という考え方は間違っており,日本語の表現が西欧化するのがいいとは思わない。国語審議会として,流動する社会に対応する新しい言語生活のための指針を示したい。日本人が日本社会を支えている敬語を大切にし,さらに,非形式表現もできるような,多様な言葉遣いができるとよいと思う。

 以上のような観点から,現代の敬語の理念をまとめる必要があると思い,こういう柱を新しく作って,御意見をそこにまとめていくようにしようかと考えた。
 7ぺージにまいって,7ぺージの真ん中辺からのところが新しく付け加わった御意見である。
 「今,丁寧語の用途が非常に広がっていることを痛感する」という*の辺りから新しい御意見である。ちょっと時間がないので,全部御紹介はしない。
 括弧が付いていない数字を見出しとした大きな柱立てが5本あって,これが私どもの報告のまとめの柱になっているが,その4に進む。
 「4 敬語の概要」の項には全く新しいことは付け加わっていないが,7ページの下から4行目の(1)の「待遇表現と敬語」のところは,これからもう少し膨らませていかなければならないところだと考えている。
 それから,8ぺージの「(2)敬語の分類に関する考え方」もそのままであるが,これから敬語についてまとめていくときに,どういう分類をするか,どういう意味,概念規定を与えるかというようなことが非常に重要なことになってくるだろうと思う。難しいことを書いてもいけないし,そうかと言って,余り広げて書いてしまうと,分かりにくくなるというようなことがあるので,ここはこれから大いに審議していかなければならないことだろうと思う。
 8ぺージの下の方であるが,(3)の「敬語の歴史的推移」。
 これも全く変わっていない。我々の審議は研究ではないので,歴史的な推移を見ながら,それが現代の敬語をどうとらえるかということに役立つような扱いをしなければいけないと思っている。
 9ぺージにまいって,「(4)敬語の機能」。これは全く変わっていない。
 「(5)敬語成立の条件」も変わっていない。
 10ぺージにまいって,「(6)敬語回避,敬語形式によらない配慮の表現等」も,@からDまで全く変わっていない。
 (7)「個々の敬語形式における問題」も,11ページの下の方までにかけて,@からEまで新しいところはないが,このことについては,第1委員会ではまだ検討に入っていないというふうに書いてある。しかし,敬語形式というのは非常に大事な問題なので,これからまた行う世論調査なども踏まえて,具体的な審議をしていくことになるだろうと思う。具体的には,どういうのが正しいかということだけではなくて,どういうのが間違っているかというようなことも審議の対象になろうかと思うが,まだ検討に入っていないという段階である。
 さて,11ぺージの下の方である。最後の「5 学校教育とのかかわり・日本語教育における敬語の扱い」というふうにまとめたところであるけれども,「(1)学校教育,家庭教育」と14ぺージに出てくる「(2) 日本語教育」と,随分たくさん御意見が出ている。
 特に,前回の総会以降2回やった委員会では,1回目が,日本の小学校,中学校を中心とする学校教育,家庭教育,それから日本語教育というふうなところを専門の委員に御発表いただいて,それを基に議論したので,ここは非常に長くなっている。
 しかし,いろいろな体験のお話など多岐にわたっており,一つ一つ御紹介していると時間が掛かるので省略させていただくが,12ぺージは○が四つあって,その次の*は総会で出た御意見で,その下の○からずっと新しい御意見が付け加わっている。13ぺージもそうである。
 14ぺージにまいって,「日本語教育」の方も,最初の○ニつが今までもお示ししている御意見で,三つ目以降に○がずっと続くけれども,これは第1委員会に出た一番新しい御意見である。
 非常に下手な報告で申し訳なかったけれども,以上のようにいろんな御意見が出ているわけである。
 この期のうちに,多分,審議の経過報告をしなければいけないのではないかということがそろそろ心配になってきて,これをまとめていくとそれなりに中間報告になるわけであるけれども,いろいろな御意見が出ているので,敬語を中心とした言葉遣いはどうあるべきかというようなとらえ方で,今期審議できたところまでを上手にまとめる。
 そういうような方向を考えながら審議を進めなければいけないだろうと思い,この「論の概要」を最大に集約して,先ほど申したような経過報告書が出来上がるような形に論議をまとめていきたい。そのようなことについて,8回目の第1委員会の最後の方でお話合いをいただき,これからはそういうことを加味しながら,まとめを考えていきたいというところになっている。
 今回は,「論議の概要−3」の内容を踏まえてまとめたけれども,これからはこれと併せて,もう少しまとまるような形で御報告ができればと思っている。

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