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次第・議事要録 第2委員会における論議の概要について1

清水会長

 今の御報告に対して御議論いただくわけであるが,第2委員会の方の御報告もちょうだいした後で,まとめて順を追いながら御議論いただきたいと思う。
 特に第2委員会の方では字体に関する問題が大分進んでいて,このことについては,今期の審議会で何とかまとめたいということで進めてまいった。大変御苦労いただいている。ただ今お話し申し上げたように,今期の任期が7月までである。そういったことを考えると,それなりに方向付けをして,まとめなければならないということがあるので,今日は,第1委員会へのいろいろな御意見とともに,また第2委員会のこれからの進め方とまとめについて,十分な御議論をちょうだいしたいと思っているところである。
 それでは,第2委員会のお話を聞かせていただくことにしたいと思う。
 水谷主査,お願い申し上げる。

水谷(第2委員会)主査

 第2委員会の御報告は,小林副主査と私とでさせていただく。
 第2委員会に関する資料は,資料2の1ぺージから始まって5ぺージまでの文章化したもの,その次に表のようなものが付いているが,この資料を使って御報告する。
 課長からの御報告の中にもあったが,第2委員会は,資料の冒頭にあるように,前回の総会以降2回開催し,字体の小委員会(ワーキング・グループ)は11月17日と12月8日,それぞれ7時間ずつ時間を使って行った。
 全体を通しての基本方針は,資料2の1ぺージの上の方に四角い中に書かれているが,読ませていただく。「現実の文字の使用状況(ワープロ等の表外漢字における字体問題を中心として)について分析・整理し,漢字の字体問題に関する基本理念を提示するとともに,併せて,印刷標準字体・許容字体を示すという方向で答申をまとめることとする。」。これが,当初の総会の中でもお認めいただいて,第2委員会の基本方針として進めてきた枠組みである。この方針に従って作り上げるものは,資料2の参考資料の1ぺージから7ぺージに材料があるが,総論部分と付随して,恐らく「表外字の字体表」という形で提出することになると考えている。そのやり方で出すべく今作業を続けている。
 今日の御報告の中身は,前半の総論以下のところにある報告文の中身について,それから具体的に私どもが作業をしているもの,その結果生まれてきたものが机の上に置いてあるが――七,八冊あるだろうか,この資料と今日用意したプリントを使って,小林委員の方から後半で説明を申し上げることにしている。
 前半の1ぺージから始まる文章の部分の中身は,内容的に言って三つに分かれている。このように申すのは,前回も,実はこのほとんどの事柄についてはここで御報告して御承認を得ているが,その当時からずっといまだに引きずって,表札だけが上がっている部分がある。
 3ぺージ,4ぺージの方にたくさんあるけれども,例えば「筆写体と活字体との関係」というような表札だけがあって,こういう柱が立つというのが残ったままになっている。その中身の審議がまだ進んでいないというのが一つ,もう一つは,具体的な作業をしている中ではっきり述べ立てることができる確信が生まれてきていないということのために書けないでいるもの,それらを含めて柱だけが立っている。この部分の全部が,前回の御報告の時のままの状態にある。
 それから,多少中身についての審議を終え,文章の中身に手を加えた部分がある。やや短めのものであるが,後ほどまた一つずつ触れてまいるけれども,これは材料が並んでいるという段階に来ている。そして一番前へ進んできているのは,1ぺージから始まって2ぺージの冒頭部分が中心であるが,これは6月――実際には3月に皆さんにお見せして,きちんとたたいていただき,お認めいただけるように作り上げていく最終的な形を意識したものになってきているものである。
 今日の私からの御報告は,その最終的な形に近づいている部分を読ませていただいて,その内容について,あるいは表現についてのおしかりを受け,そして,そのほかの第2段階,第3段階にあるものについては,内容等について分かりにくいところには御示唆を,あるいは表札しかない部分についてはアイデアをたくさんいただければ有り難いと思っているところである。

水谷(第2委員会)主査

 1ぺージの総論の最初のところは,前回の総会での御報告では,1は「表外字の字体問題に関する基本的な認識」で,題は同じであるが,その下の部分に(1)(2)(3)と三つに分かれて記述されていたものを,それがばらばらになっていたので,まとめたものである。読ませていただく。

(1)従来の漢字政策と表外字字体表作成の経緯
 戦後の漢字政策については,当用漢字表(昭和21年11月),当用漢字別表(昭和23年2月),当用漢字音訓表(昭和23年2月),当用漢字字体表(昭和24年4月),常用漢字表(昭和56年10月)等の一連の施策が,国語審議会の答申に基づき,内閣告示・内閣訓令によって実施されてきた。これらのうち,字体にかかわるものとしては当用漢字字体表と常用漢字表がある。
 当用漢字字体表では「漢字の読み書きを平易にし正確にする(当用漢字字体表「まえがき」)」ことを目標とし,そのために「異体の統合,略体の採用,点画の整理などをはかるとともに,筆写の習慣,学習の難易をも考慮した。なお,印刷字体と筆者字体とをできるだけ一致させることをたてまえとし(同上)」ていた。それに対して常用漢字表では「主として印刷文字の面から(答申前文)」検討され,当用漢字字体表のように「印刷字体と筆写字体とをできるだけ一致させる」という考え方は採らなかった。筆写のことは別のこととしたわけである。ただし,字体を変更することは各方面に与える影響が大きく,混乱を招くおそれがあるということで,当用漢字字体表に掲げられている字体を基本的に踏襲した。また,表外字の字体については,その答申前文(昭和54年の中間答申も同様)で「常用漢字表に掲げていない漢字の字体に対して,新たに,表内の漢字の字体に準じた整理を及ぼすかどうかの問題については,当面,特定の方向を示さず,各分野における慎重な検討にまつこととした。」とし,国語審議会としての判断を保留した。現在の表外字字体問題の根本はここにある。
 しかし,表外字の字体問題が表面化したのは,常用漢字表制定時の予想をはるかに超えるワープロ等の急速な普及によって,表外字使用が日常化し,そこに,昭和58年のJIS規格の改正による字体の変更問題が絡んだためである。現在,早急な解決が求められているのは,上記改正によって,鴎(←),祷(←),涜(←)のような略字体が一部採用され,括弧内の字体(いわゆる康熙字典体)が排除されたことによる,表外字の字体の混乱である。
 この問題は,@教科書や辞書などで用いられているが打ち出せないこと,A鴎とのどちらの字体を標準とすべきか,すなわち表外字の字体の基準がないこと,の二点にまとめられる。国語審議会がこの表外字の字体問題に取り組み,表外字字体表を作成することとしたのは,この問題が既に一般の文字生活に大きな影響を与えているだけでなく,今後のワープロ等の一層の普及によって,更に大きな影響をもたらすことが予想されると判断したためである。
 今回の表外字字体表は,以上のような問題を解決するために,常用漢字表制定時に見送られた表外字の字体の標準を示そうとするものである。この字体表では,明治以来の伝統的な印刷文字字形(いわゆる康熙字典体)を印刷標準字体と位置付け,略字体については,現行のJIS規格や新聞など,現実の文字生活で使用されているものの中から使用習慣・頻度等を勘案して許容字体とするものを選定した。――選定したというのは,これは文案であり,まだ選定はしていないが,――この方針は前期報告で示された考え方を基本的に受け継ぐものであるが,当用漢字字体表や常用漢字表で略字体を採用してきた従来の施策とは,略字体の扱いにおいて異なるものとなっている。
 これは,現在の文字使用の実態に混乱が生じないよう配慮したためである。すなわち,表外字字体表の作成に当たり,現実の文字使用の実態を調査(凸版・大日本・共同「漢字出現頻度数調査」平成9年:調査対象漢字数37,509,482字)した結果に基づいて判断したものである。この調査で明らかになったことは,一般の人々の文字生活において大きな役割を果たしている書籍等の漢字使用の実態として,字体に関しては,主として,常用漢字及び人名漢字はその字体が,表外字はいわゆる康熙字典体が用いられていることである。このうち,人名漢字は制定年が異なる(昭和26年,51年,56年,平成2年)関係で,制定年の古いものほど人名漢字字体の定着度が高い。この結果から考えると,人名漢字は制定年にかかわりなく,将来的には人名漢字字体におおむね収斂(れん)していくものと予想できる。また,表外字については,常用漢字の字体に準じた略字体が現時点でどの程度用いられているかを見ようとしたのであるが,当該の略字体に関しては字種もそれほど多くなく,かつ特別なものを除き出現頻度も低いという結果であった。
 このような実態がある中で,表外字に常用漢字に準じた略体化を及ぼすという方針を国語審議会が採った場合,結果として,新たな異体字を増やすことになり印刷文字に大きな混乱を持ち込むことになる。国語審議会は,上述の漢字字体の使用実態を踏まえ,この実態を混乱させないことを最優先に考えた。常用漢字表の表内字と表外字において,字体の扱い(いわゆる康熙字典体と略字体との関係)が異なることは,国語施策として,一般の文字生活における漢字字体の更なる混乱を強くおそれたためである。この考え方は,同様の意味で,常用漢字の通用字体をいわゆる康熙字典体に戻すことを強く否定するものである。当用漢字字体表以来50年にわたる経緯を持ち,社会的に極めて安定している常用漢字の通用字体については,全く動かす余地のないものである。

水谷(第2委員会)主査

 ここまでが(1)で,大変長くなったけれども,これが最終的な報告の形として今考えている題材になっている。その表現等についても,また御注意を賜れればと思っている。
 (2)の「現代の文字生活における常用漢字表の意義」という部分であるが,これも,前回のIの1の(4)の後半に,同じ題「現代の文字生活における常用漢字表の意義」の下に書かれていたものに少し加えたものである。少し変わっているので,そんなに長くないから,読ませていただく。

ワープロ等に搭載されているJIS漢字は,第1水準,第2水準合わせて6355字あり,常用漢字表1945字の約3倍である。ワープロ等の普及によって,これら多数の漢字が簡単に打ち出せるようになった現在,常用漢字表の存在意義がなくなったのではないかという意見が存在する。
 しかし,このことは一般の社会生活における漢字使用の目安を定めている常用漢字表の意義を少しも損なうものでなはい。むしろ,簡単に漢字が打ち出されることで漢字の多用化傾向が強まる中では,「一般の社会生活で用いる場合の,効率的で共通性の高い漢字を収め,分かりやすく通じやすい文章を書き表すための漢字使用の目安(「常用漢字表」答申前文)」となる常用漢字表の意義は一層高まっていると考えるべきである。漢字の過度な使用は,相互の伝達や理解を困難にする場合があることを十分認識すべきであろう。

 ここと,実は次の3のところが少し変わっているが,それ以外はほとんど変わっていない。
 次の(3)の「表外字字体表と常用漢字表との関係」のア,イ,2の「表外字字体表の性格」の4行にわたる文,これらは前回のままである。
 3の「字体・書体・字形にかかわる問題とその考え方」は,内容が少し変わっている。前回,字体・書体・字形についての考え方は9行分の量で書かれていた。それが現在は15行に増えている。この中身自体は,一応まとめてはあるけれども,現在行っている作業の中で,字体・書体・字形についての定義付けが更に厳しいものになっていく可能性もあるので,それに伴って,ここでの表現も変わり得るであろうと予想している。時間がちょっと足りないので,これは省略させていただく。
 それから,「(2)筆写体と活字体との関係」,「(3)関係する用語の定義」,「(4)康熙字典体の位置付け」,そして(5)の字体の差とデザインの差の関係,これらのことについては,是非内容についてお知恵を拝借したいと思っている。
 次のぺージヘ行って,「4 その他関連する事柄」。「(1)固有名詞に用いられる漢字の字体についての考え方」,「(2)学校教育との関係」,「(3)国際社会との関係」,これは先ほどの運営委員会でもお話がちょっと出たけれども,あるいは課長の先ほどの報告にあったが,国際社会との関係で,文字コードの問題にどの程度――実は私ども第2委員会の目的の外にあるものだけれども,現在,その問題に対して発言なしには済まされないのではないかという苦渋が,この柱立てとして残っている理由である。最終的にも,何らかの形で提言あるいはコメントを付けていくという責任はあるだろうと考えている。本格的な解決は,今の第2委員会の中ではできない。今の文字の字体の問題だけでも,とても時間の範囲で仕事が終えられない可能性があると思っている。
 Uの「印刷標準字体の選定にかかわること」は,ほとんど前回と変わっていない。一部分,「参考資料」という言葉が付けてあったのを捨ててしまったというような細かい変化はあるが,ほとんど変化はない。
 多少内容的な変化を起こしている部分は,次の5ぺージの(6)のところで,前回の御報告の中では,この後の方に「」という文字を例に取って,「」のつくりの部分の「」の頭の部分に「ハ」を使うか「ソ」を使うかということについての記述があったのであるが,ほかと重複するという面もあるので,そこは削ってある。それから,表現についてはまだ吟味していない。(7)についても,これから分かりやすい文章,説得力を持った表現に変えていく必要があるだろうと思っている。(8)は全く変わっていない。
 次の3の「字体の提示にかかわる考え方」の中も,全く変わっていない。
 以上が,現在の第2委員会の中で,この報告文に関する仕事の結果として到達している中身である。
 この後は,実際に作業をしている中で扱った資料を中心にして,小林委員の方から報告をさせていただく。

小林(第2委員会)副主査

 それでは,私の方から,もう一つ付けられている参考資料「「表外字字体表」作成のための検討資料−2」に基づいて,第2委員会のワーキング・グループ字体小委員会で検討している問題等について御披露申し上げ,いろいろと問題点の御指摘を賜りたいと思う。
 今までやってきている基本的な資料,すなわちテーブルの上に置いてあるものを御覧いただいた上で,参考資料の説明に入った方がよろしいかと思うので,机上に置いてあるA4の冊子6冊のうち,ーつは「字体・字形差一覧」というタイトルのもの,もう1冊は「漢字出現頻度数調査」で,この2冊をまずお手元にお持ちいただいて,これについて御覧いただいた上で,本日の参考資料の方にまいりたいと思う。
 そのほか4冊の大きなものが載っているが,今まで見てまいった大きなものの一つは「JIS情報交換用漢字符号」の第1分冊,第2分冊,それから「漢字字体資料集」諸案集成1,2というふうに二冊載っているが,第2委員会の字体小委員会においては,ワープロ,パソコン等ということが出発点であったので,JISの6355字の漢字の字種・字体についての理解を図るために「JIS情報交換用漢字符号」の資料を勉強し,続いて明治,大正,昭和,現在に至るまでの国語施策としてどのような漢字表が作成されて,あるいは施策化されてきたかということで沿革資料を勉強してまいった。そういうことに基づいて,現在「常用漢字表」の表外漢字の字体の問題について検討するというところに立ち至って,勉強を進めているわけである。
 初めに申し上げた大きな冊子の「字体・字形差一覧」という資料から説明する。事務局である国語課の方で労力と時間とお金を惜しまず作ってくださったものであるが,最初の「前書き」のところにこの資料をなぜ作ったかということが記されている。
 凡例のところを読めば,この資料の説明がるる述べられているわけであるけれども,本文の1ぺージ目で具体的に御覧いただいた方がよろしいかと思うので,漢字がたくさん並んでいる1ぺージ目をまず見ていただきたい。最後のぺージに至るまで,この資料集は,それぞれの漢字の字種――各種の印刷所等において,どういう形の活字が使われているかというものを一覧できるようにしてくれているものである。先ほど一番最初に申し上げたJIS第1水準,第2水準,合わせて6355字の字種のそれぞれがどういう形で活字化されているかということである。
 1ぺージ目の一番最初の「亜」という字で御覧いただくと,左側に「区点」というふうに書いてあるのはJISコードでの番号で,「亜」というのは16-01というところの位置付けの漢字だということである。左側の二つが基本的に大事であって,大蔵省印刷局の書体,2番目の平成書体というのはJISのコード表に載っている形である。官報などは大蔵省印刷局書体を使っているし,これから国語審議会関係の答申を出すときにはこの書体の明朝体活字を用いることになるので,印刷局書体を基本に見ていただきたい。以下,石井書体,モトヤ書体,大日本書体,凸版書体,読売書体,朝日書体というふうに明朝体活字が並べられている。最後に,参考としてゴシック体を並べてある。

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