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次第・議事要録 第2委員会における論議の概要について

清水会長

 それでは,また後ほどいろいろ御論議をいただく段階で補足説明もいただくということにして,時間の関係もあるので,大変恐縮だが,第2委員会の説明も同じようにいただいた後で,まとめて御論議をちょうだいしたいと思う。
 それでは,第2委員会の論議の概要について,水谷主査から御説明いただきたいと思うが,第1委員会同様にひとつ詳しくお願いする。

水谷(第2委員会)主査

 第2委員会は,先ほど課長の方からも御紹介があったけれども,資料の冒頭の部分にあるように会議を重ねてきた。その会議を通して,今お手元にある1ぺージから始まって,最後の方に資料が並んでいるが,そのような形にまとめた。
 前回から今回にわたる中で一番心掛けたことは,文章の形を答申の形にできるだけ近づけようということで,1ぺージにあるように「表外字字体表試案(案)」として,「前文」と「はじめに」を付けた形に構成し直した。中を御覧いただくと,ほとんどの部分は,実は前回お出ししたところと変わっていない。多少変更はあるが,概して言うと,資料の少し手前,ぺージで言うと6ぺージの上半分のところまでは内容的にほとんど変化がない。形を整えるために表現に工夫をしたということである。したがって,この部分に関しては,後ほど朗読してもらうが,ワーディングなどにも是非御注目いただいて,こう変えたらという御助言が賜れればと思っている。
 どんなところをどう変えたかというと,例えば2ぺージの「前文」から始まっているが,最初の辺りの体裁ももょっと変わった。すっきりした形にしているが,2ぺージの下から7行目の後半,「表外字が簡単に打ち出せるようになり」というのは,「表外字の字体については」という言い方では不十分であろうということで表現をちょっと変えただけである。
 それから,下から4行目の「なお」から始まる部分は,今までのお話の中では「表外字使用が日常化し」といった言い方で簡単に触れられていたものに,具体的な例を与えて理解しやすくする努力をした。追加した中身がここに3行にわたって増えているわけである。そういったような形で手を加えている。
 どの部分に手を加えたかということをざっと申し上げていく。3ぺージの上から6行目から「今回の表外字字体表は」というパラグラフがあるが,その次の「送られた」から始まる行の「法令,公用文書,新聞,雑誌,放送等,一般の社会生活において,表外字を使用する場合の字体のよりどころ」も,さっきの二つ目の例と同じであるが,もともとは「表外字の字体の標準を」と簡単に済ましていたところを分かりやすく加えた。次の行も,「いわゆる康熙字典体」となっているところ以下であるが,これも誤解を避けるためにより説明的な表現に直した。
 そのぺージでは,あとは下から14行目辺りに「また,小学校・中学校・高等学校の」というのがあるが,この2行を付け加えた。そこから5行下の半ばのところからの「すなわち,常用漢字表の表内字と表外字において」の辺りも表現を変えている。
 下から5行目の2「現代の文字生活における常用漢字表の意義と表外字の位置付け」は,変更したところも,実は中身としては,今まで総会あるいは第2委員会の中で委員の先生方から出ていた御意見をより拾い上げる形で加えていったものなので,今までになかった意見が入っているということはない。2の後の表外字の位置付けについても意見が出ていた。それをここへ加えたということである。
 そのような形で全体が進んでいるが,4ページの二つ目のパラグラフ――「ところで」から始まる部分は,かなり新しい,今までに紹介していなかったものが入っている。
 また,4ぺージについては,真ん中の〔表外字字体表の性格〕の「1 適用範囲等」は,文言,表現が少し変わっている。「必要に応じて」とか,仮名の「も」を加えたとか,そんなレベルで動いている。
 それから,4ぺージの下の「2 表外字字体表が示す字体の範囲」から後は,実は構成が変わっている。内容は変わっていないが,以前書きつづっていた順序を組み立て直した。それがおしまいまで続いていく。
 問題になるのは6ぺージの真ん中のところ,「3 明朝体の字形と筆写の楷書字形との関係」というところがあるが,この最後の2行半については表現を変えた。内容も少し加わっている。
 さっきも言ったことの繰り返しになるけれども,ここまでは,ほとんどが表現上の問題で努力をした結果になっている。今日,もし時間があってお知恵をお借りすることができるならば,ここまでの分の表現に関することのほかに,内容的に,その次の〔その他の関連事項〕の「1 固有名詞に用いられる漢字の字体についての考え方」,「2 学校教育との関係」,「3 国際社会との関係」――冒頭に国際的な文字コードの問題が入っているけれども,ここについては前に出ていた形と同じままで残してある。議論がなかなか煮詰まらないので,これから議論を煮詰めていくために,今日御意見を少しでもいただけるよう願っている。

水谷(第2委員会)主査

 その後は非常に具体的なことになるが,(付)として「表外字における字体の違いとデザインの違い」。ここで,次の7ぺージにちょっとした表が付いている。常用漢字の字体についての解説そのものがコピーしてあるのだが,このような形で,字体の差ではなくデザインの差として一括して認められる例を提示しようという考えを今持っている。この7ページの表は常用漢字を使った例である。常用漢字表では,ここにあるように,例えば「硬」という字については「石へん」の形,あるいは「吸」の場合は「ロ」が縦に細長いものと短いもの,こういった差はデザインの差なんだということを示す材料として,常用漢字の字体について提示していたわけである。このような表をもし提示するとするならば二つ課題があって,6ぺージにも述べてあるが,この表は常用漢字であるから,今回の場合は常用漢字以外,表外字を使って表にすべきだろうか。それから,常用漢字のときには触れられていなかったのだが,7ぺージの右の方に,例として「牙」と「喰」というのが出ているけれども,何通りかの「牙」という字の形の違いをデザインの差とするかどうか,こういった新しい問題点も追加していく必要があるのではないか。この辺りで,委員会の中では今議論を重ねているところである。そこで,この在り方についても,是非御意見を伺わせていただきたいと思っている。
 そして,その後に「参考」として「「表外字字体表」作成のための検討資料−X2 頻度資料順」。この資料関連のものについては,前回もここで御紹介したが,今私どもが到達している問題意識等を含めて,小林副主査の方から御報告をさせていただきたいと思う。
 文章の部分を先にまとめてしまった方がいいかと思うので,今のところまで朗読をお願いしたいと考える。

氏原国語調査官

 それでは,2ぺージ目から読みたいと思う。


〔「第2委員会における論議の概要−6」朗読〕

氏原国語調査官

 少し補足させていただく。先ほど水谷主査の方からも御説明があったが,7ぺージ目は常用漢字表の「字体についての解説」に載っているものである。今回の表外字字体表では,それに右側の四角で囲った「」と「」をデザイン差に該当するものとして加える方向で検討している。「(5)その他」のところに,常用漢字である「芽」の例があるが,その「芽」を見ていただくと,四角で囲った「牙」のうち,一番右に当たる形はここには出てこない。従来,この「牙」の2画目,3画目に当たるところをLのような形で1画に作るような字形は旧字体ということで,常用漢字表のときにはデザインの違いに入れていなかった。
 それから,「喰」については,3の「点画の性質について」の「(2)傾斜,方向に関する例」に該当するものである。「喰」のつくりの3画目を縦に置くのか,横に置くのかというのは,縦か横かという方向に関する例であるが,これも常用漢字表のときには字体の違いだという認定の下に,入れていなかったものである。後で小林副主査から御説明があると思うが,「牙」にかかわるものと,表外字の「闇」の部分字形である「音」の1画目など,縦横の関係で出てくるものが随分あるので,今回この二つを入れたらどうだろうかということでここに入っているものである。

清水会長

 それでは,例示について御説明願う。

小林(第2委員会)副主査

 例示について御説明申し上げる。
 「参考」のところをめくっていただきたい。私ども第2委員会及び字体小委員会の方で,どういう資料を使って今のような案文に至ったかということである。
 使った資料は,「「表外字字体表」作成のための検討資料−X2」である。これは「X1」を整理したもので,「X1」は先ほどの案文の中にあった,表外字の字体を検討するための土俵をどうしていくかというときに,凸版印刷等の資料を整理して以下のように定めたわけある。すなわち,凸版印刷で3200字までのところを考えていけば,一般の社会生活で使用されるほぼすべての表外字の字体を検討することになると考えられ,頻度から考えてその辺りがよろしいだろうという判断の下に,凸版3200位までをまず扱うこととした。それを基本にして,大日本印刷と共同印刷の資料で2000位までに,独自に現れるものを加えた。さらに,「140字」と書いてあるのは,法務省が平成3年から戸籍で新たに使える字体として認めた略字の表であるが,それを添えると土俵がほぼ見えてくるであろうということで,それも加えた。このようにして作成した「X1」及びそれを整理した「X2」という資料を検討の対象として,今までやってきたということである。

小林(第2委員会)副主査

 字体問題を考えていくときに,表紙の下側に四角の枠でくくったところに,前にも御覧いただいたものであるけれども,どういうところに気を付けたかということが書き並べてある。異体関係のものとデザインの差と考えられるようなものとがあり,S1は「しんにゅう」,S2は「しめすへん」,S3は「食へん」,Kは「くさかんむり」等々,デザインの差のものも細かに見ていこうというふうに,先ほどの案文に至るところを細かく検討していったわけである。
 めくっていただいて,「X2」というのは,字体及びデザインの問題として検討すべきものを統り込んで10枚ほどになっている。約500字弱であるが,それに絞り込んで検討していくということでめどが立ってきたものを見ていただいている。
 字体の問題として,一番上に挙例として出ている「砺」というのは,「礪」に対する異体という関係で見ていく字である。
 次の「頃」という字は,「問題」というところに説明が書いてあるけれども,左側のつくり方が,ここでは「ヒ」のハネた形になっているが,別の形で出てくるものもあって,そういうところも目配りをしていこうということである。
 その次の「」の字は,右側のつくりの中が「×型」と「立型」とある。こういうところにも目配りしていく。もちろん「くさかんむり」にも目配りしているわけである。
 先ほどの案文の中に出てきたことにかかわるが,5字目の「籠」の字に※が付いているのは,この字が,実際の活字としては,この資料のものと形が違っていることを表している。要するに,「立」の第1画が点ではなくて横型なのである。それを「メモ」というところに書いておいた。それが※の意味である。この字は,そういうデザイン上の違いの問題と,もう一つ異体関係のある字体も同時に出てくるという例である。
 そういう関係を細かく見ていくと,更に三つ下に行って,24番の「闇」という字の中の「音」という字の上側「立」のところが,点であるか,横棒であるかということなど,次々と出てくる。
 それで,大変面白いということで御紹介するが,左欄の番号で39の「餅」であるか,明治以来,活字の標準字体として使われている字体がそこに見出しとして出ている。「食へん」は旧字体型だが,つくりは新字体の形をしているのが明治以来ずっと使われており,対応字体の中の左側のへんもつくりも旧字体型タイプのものは,康熙字典には出てきても,実際に使われた形としては出てきていないという大変貴重な研究結果も得られている。
 そういうようなことで,次の紙を,私どもが字体の問題やデザインの問題を考えるときに,細かいところまでをよく見ているという例として御覧いただきたいと思う。
 2枚目のところの「メモ」に,1枚目にもあったが,「29字」と書いてあるのは,この委員会が発足するときから問題にしていた,多くのワープロで略字でしか出てこないJISの29字。それが,凸版の資料ではいわゆる正字体,いわゆる康熙字典体という形で登場しているというのを御覧いただきたいと思う。
 こういう形だとちょっと見にくいので,めくっていただくと,夕イトルとして「問題項目順」というふうに再整理したものがある。めくっていただくと,「祠」という字からずっと示してある。一番上から5字については「しめすへん」の問題である。その次,10字ほどはずっと「食へん」の問題である。その次の4字は「青」というつくりの部分の問題であるというようなことで整理をし直して,一字一字検討していくということである。
 この資料の左から三つ目に「漢字(字体)」として示している欄の下の方に行くと,「ホ」というふうに書いてある。これは先ほど申したように,法務省の通達で,平成3年から,戸籍上で,表外字であるけれども略体を使ってもよろしいということで示されている140字の表の文字については,「ホ」という注記をする形で示している。
 めくっていただいて,同じようにずっと続いているが,上の方を御覧いただくと,先ほどの「牙」の字が7字ほど連続して出てくる。「食へん」と「牙」のところを御覧いただきたいと思って,これを抜き刷りとしたわけである。
 それから,蛇足であるが,「ダ」というふうに書いてあるのは,大日本印刷の資料の中に出てくる字だということである。
 もう1枚めくっていただくと,3枚続いて,夕イトルのところに「氏又は名の記載に用いる文字の取扱いに関する通達等の整理について(通達)」と書いてあるのは,さっきから言っている140字の表で,法務省の方で示しているものである。これも私どもの表外字の検討範囲に加えているということである。公的に使われているものなので,これも土俵の中に入れて目配りしている。
 この表では,同じ文字について,略体のものといわゆる康熙字典体とがそれぞれ並んでいるが,○で囲ってあるものは,注として手書きで書いてあるが,凸版の3200字の中に入っているものだということである。凸版・大日本・共同に入っていないのは,1行目では,@,Aと書いてあるものである。それらをずっと3枚目まで見ていただくと,まで登場するわけだが,更に1,2枚目のところで□でくくってあるものは,例の29字の中にあるので,これも既に検討しているものということになる。○で囲ったものと□で囲ったものは既に検討済みなので,この表から,実際に私どもが字体の問題を検討するということで目配りをしたのは30字になるということを見ていただきたくて御提示申し上げた。

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