国語施策・日本語教育

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次第・議事要録 その他

清水会長

 今,次官のお話にあったように,先生方には大変御苦労いただいた。思い起こすと,一昨年の7月以来2年間であるけれども,延べ66回という会合を重ねて,総会並びに委員会に大変御苦労をいただいた。心からお礼を申し上げたいと思う。
 これで,第21期の国語審議会の任務も一応終わったという思いがあるけれども,引き続いて行われる第22期国語審議会の審議を経て,新しい表外漢字字体表がきちっとした形で国民に示される予定である。また言葉遣いについても,今お話があったように,私どもの日本の文化の基礎を作るものであり,常に大事にしなければならない問題だというのが私どもの共通の理解であるので,今後ともよろしく御支援をいただきたいと思う。
 まだ少し時間があるので,以上のような意味で,次期に向けて事務方ヘ引き継いでおきたいということもあるかと思うので,後日の参考にするための御発言をちょうだいできれば有り難いと思う。ひとつ御自由に御発言,御感想などいただければ有り難いと思う。

山川委員

 私は誠に出席率の悪い委員で,ただただ申し訳なく,まずおわびを一言申し上げたいと思う。私がアナウンサーとしてNHKに入ったころの国語審議会は,土岐善麿さんとか,そういう人たちがいかめしく並んでいらっしゃって,物すごい感じだったのだが,昨今は随分優しい審議会になったな,物分かりがいい審議会になったなということをしみじみ思っており,それは私自身にも問い掛けたいのである。
 言葉の乱れについては,それを正すべきだという考え方と,国語というのはそんなに規制するものではないという考え方とがあり,両方を立てたいと思うことからこの報告書にもあるように,高齢者のことも考えてくれよ,しかし若者をばかにするなよというような書き方になっている。それでは元も子もないじゃないか,それなら審議会は要らないじゃないかということになって,いかに両方を立てることが難しいかということに帰着するのだけれども,審議会がひとつ何か知恵を紋って,なるほどなと国民が思うような案が出てくるといいと思う。
 今,第1委員会の主査がおっしゃったが,敬語なら敬語の効用というのがいろいろある。その中で,コミュニケーションを円滑にするということもあるが,その人の品性を表すということが重要だと私は思う。品格というのは品性が高まっていった状態だと思うのだが,年を取ると,それが品格にまで高まる。しかし,若いからといって品性がなくていいかというとそうではなくて,敬語を巧みに使うことによって非常に品性が出て,それがだんだん年齢を重ねるにつれて品格になっていく,そういうような品性や品格が大切であるということをびしっと言ってほしいということもある。
 それから,男と女の言葉の使い方であるが,大和言葉には非常に女性らしい表現があって,それが美しい日本語として伝統的に守られてきた。それが一挙に崩壊していくということは本当に悲しいことである。モノセックス時代で,男らしいしゃべり方もなければ女らしいしゃべり方もないという,そういう状況は分かるが,その辺は,ああ,女性的だなと感じさせるような日本語はないだろうかとか,そういうことをちょっと思った。
 出席率が悪いのに言いたいことを言って申し訳ない。

清水会長

 ありがとうございました。
 いかがであろうか。

北原(第1委員会)主査

 山川委員は,出席率が低かったというよりも,やはり御発言が遅かったと思う。皆さんの合意を得て出来上がってからおっしゃるのは,ちょっと遅かったという気がする。
 ただ,最初の品性から品格に行くという辺りは,第1委員会でも総会でもしっかり押さえているつもりである。この中に,ちょっと熟さない言い方のような気もするけれども,自己表現というのが3回ぐらい出てくる。それは自分の人格を表すという意味で使っていて,品性,品格,人格という辺りまでが,この敬意表現の核心であるというとらえ方をしているつもりである。
 もう一つ,性差の問題であるが,これは随分議論したので,そこに是非お出になっていただいて,その御意見を出してくださったら面白かったと思う。十分議論した結果,確かに女性のいいところ,男性のいいところもあるけれども,基本的には,敬意表現の場合は性差に余りかかわってはいけないという結論になっている。女性でこの問題を一生懸命研究なさっている委員もいらっしゃるので,直接御発言いただいても結構だと思う。以上である。

清水会長

 いかがか。

井出委員

 第1委員会のメンバーとして,またワーキンググループのメンバーとして,これを作成する段階で頻繁にかかわってきたが,性差と言葉遣いのセクションは自分の役割と思って,しっかりと見てきたつもりである。
 ここに至るまでには,途中の段階で表現が何度も変わってきた。性差という言葉,女と男の言葉ということを考えるときに,どうしても二つのことを考えなければいけない。一つは,女だからこうじゃなければいけない,男だからこうでなければいけないということで縛ってしまって,自由を奪う,可能性を奪う,権利を奪うということはよくない。それについて一言言うと同時に,今,山川委員のおっしゃった御意見そのものであるけれども,男と女がそれぞれの個性として違う言葉を持って,自己表現していくというのは,日本語の豊かさとして認めていくべきで,性差がなくなることはいいことではないということもいつも主張してきて,それは残されていると思う。
 すなわち,固定的な観念で縛ることはいけない。ただし,性差は積極的に認める。矛盾しない概念として定着したように収まっていると思う。

清水会長

 ありがとうございました。
 後々への参考のためにということで,御発言なさりたいことがあったら,おっしゃっていただきたいと思う。

小池委員

 第2委員会のメンバーとして議論に加わってきたわけであるが,先ほど中間報告の中で主査もおっしゃったように,大変膨大な資料と非常に複雑で細かい議論を必要とされているテーマで,ワーキンググループの方の御苦労というのは大変なものだったと思うけれども,一言言うと,残念ながら,それでも時間が足りなかったというところがある。
 内容について触れるのはやめるが,特に字体表そのものの中身に踏み込んだ議論というのが,時間切れの感もあって,なかなかできなかった。その点は来期の国語審議会で十分やっていただきたいということと,国語審議会に限らず,非常に影響のあるテーマであるから,いろんな分野の方,いろんな学界の方の意見を聞くという形で,更に中身,内容についての議論を広い範囲でこれからやっていただきたいと思っている。

清水会長

 その点については,事務局側もこれから十分対応していくことと思う。
 ほかに何か,一言,言い残しておきたいことがあったら,御遠慮なくおっしゃっていただきたいと思う。

井上委員

 第1委員会のワーキンググループに属していたので,第2委員会の方にはほとんど出席しなかった。その代わり時々メモを提出し,そのメモをめぐる議論のために1時間費やしたという議事録も読んだ。御迷惑をお掛けしたことを深くおわびする。
 私としては,国際的なコードの問題なども考慮に入れて考えていただきたいと思ったのだが,そこまでは時間がなかったようで,ちょっと残念に思う。
 ところで,第1・第2の合同委員会があったときに,私が余計なことを申し上げて,JISの例示字体との関係を示していただきたいという発言をした。その時に,国語審議会の資料としては出せないにしても,例えば,マスコミ用の配布資料としては出せるんじゃないかということが話題になったと思うが,その辺りはいかがか。

鎌田国語課長

 それでは,事務局の方から,その点について御説明する。
 文部記者クラブに対しての説明を先週の金曜日に行ったが,その際には,井上委員からのそういう御意見等もあったので,JISの第4次規格にある,過去の規格との互換性を維持するための29字について,いわゆる康熙字典体とJISの略字体,両方の字体の資料を記者クラブの方に配布して,それに基づいての説明をしたところである。
 その資料の中には,今回の漢字出現頻度数調査における頻度の順位等の資料もある。また,その中で,今回簡易慣用字体の試案として出されているものについては印を付して資料を提出したところである。

井上委員

 今のことを基礎にして質問する。よく分からないのであるが,JISの第1水準では,従来の略字とでも言おうか,そういうのを使っているようなのだが,今回の字体表は,我々の普通の言葉では正字と言うけれども,それに戻すような部分も含んでいるのであろうか。その答えをいただいた上で,質問を続けたいと思うが,それとも両方認めるということなのであろうか。
 例えば「しんにゅう」なんかについて,JISの第1水準では,常用漢字にない字種も「一点しんにゅう」にしていると私は理解しているが,今回出た表では,「しんにゅう」に着目すると,「ニ点しんにゅう」だけを出しているようにも見える。しかし,両方許すという形にしているのか,まず,その辺りを確認したい。

水谷(第2委員会)主査

 それは次期の課題になると思う。「しんにゅう」の問題,「しょくへん」の問題,「しめすへん」の問題,こういった種類の問題というのは,今までのやり方の中では,この試案にある形で印刷標準字体を選定し,その意味での結論は出ている。しかし,表に掲げていない略字体の最終的な扱いについては留保されている。そこも重大なポイントだということは,委員会の中では意識している。この次のメンバーがどういう方たちになるか分からないけれども,そこは避けて通れない課題だと思う。

井上委員

 それでは,ちょっとお願いしたいことがある。敬語に関しては世論調査をして,国民の使用状況とか意見を確かめたわけである。漢字の字体についての世論調査も計画されたらしいが,結局,いろんな問題があってやらなかったようである。
 一方で,NHKの用語委員会では,アナウンサーなどの放送関係者の言葉として一方を採用するにしても,放送関係者のアンケートを取ったり,また世論調査をしたりするということである。例えば「一点しんにゅう」でも「ニ点しんにゅう」でも何でもいいけれども,普通の国民が,ある文字,個々の文字について,どちらを使っているか,またはどっちが自然だと思うか,その辺りを一応確かめていただければと思う。これが一つである。
 それから,漢字の出現頻度について,大変な大きい調査をしてくださって有り難いと思っている。その調査では,書籍等における頻度数を確かめているわけであるけれども,新聞ではどうなのかなども確かめていただければと思う。
 それから,気になるのは,インターネットとか電子メールでデータを交換する場合であるが,新聞のデータをインターネット経由で自分のパソコンに取り込んで表示した場合,例えばある新聞社である文字を使ったために,新聞に出てくる文字とは別の文字がパソコンに出てくることがあり得るか。一方で,それを印刷屋に回したら,また別の字体で出てくることがあり得るかということについて,私はよく分からないので,これは専門の方に教えていただければと思う。一方で,そのことを考慮に入れた上で,第2委員会の審議を続けていただければと思う。
 余計なことだが,この積み上げてある資料は大変有益なものなので,私ども個人としてもいただいているが,それに関しては皆さんに大事にしていただければと思う。

水谷(第2委員会)主査

 今の井上委員のお話の中で,最初に出された,国民の漢字の使用状況や意識について調査をするという問題であるが,これはしなければいけないと思っている。ただ非常に難しいことは,先ほどの御報告でも申し上げたが,印刷字体の問題と手書きの問題とをどんな形で切り離すことができるか,そのことが一番最初に問題になって,今期は世論調査を断念し,印刷活字の字体の調査を基に徹底的にやっていこうということになったわけである。
 それから,新聞における用字の問題とか,書籍で今回やった調査以外の領域における文字使用の実態調査もやっぱりしなければいけない。ただ,そのときにどういう方法でやれるか,ちょっと簡単にできないという状況があると思っている。でも,そこを何らかの形で確かめておかなければ,公平な形で,国民全体のコンセンサスに基づいたルールだというふうには決められないだろうということはあると思う。それは努力しなければならないことだろうとは心得ている。

清水会長

 今のことについては,この審議会が始まるときに,中間報告を11月ぐらいに出して,この7月ぐらいに答申できるようにという予定があったわけである。今,主査から御説明があったように,まだ解決すべきいろいろな問題を抱えているので,今回は審議経過報告という形で出るようになったわけである。これからまた大いに広く国民の皆様方から御意見を伺って,次期にまとめるということになると思う。

江藤副会長

 今,会長がおっしゃったので,付け加える必要もないかと思うけれども,既に会長が文部大臣に御提出になったものは,審議経過報告であって,最終的な答申ではない。敬意表現についても,字体の問題についても,いずれもそうである。
 それから,井上委員の御意見は非常に貴重であるが,従来,自らの属さない委員会にも出席する権利は確保されており,常に私どもには御案内が来ていた。したがって,文書で御提出いただくのも結構であるけれども,細かいところについては,もし審議経過報告がまとまる前にそのような御意見を賜っていれば,また少しは違ったかなという気もする。
 いずれにしても,これが最後ではないのであり,来期,メンバーも改まって新しい観点から,しかし同じ問題を継続して審議しなければならないわけであるので,そこに持ち越す。したがって,今の御意見などは事務局預かりで,来期へ回してもらうというのが適切ではないかと思うが,いかがであろうか。

清水会長

 皆様から最後の貴重な御意見もちょうだいしたので,事務局の方もそれを受けて,これから第22期の審議会に引き継がれるかと思う。
 委員の皆様方のこれまでの御厚誼(ぎ),特に第1委員会,第2委員会の皆様には心から感謝申し上げる。
 これで第21期の国語審議会は終わりたいと思う。

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