国語施策・日本語教育

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第1 現代における敬意表現の在り方

T コミュニケーションと言葉遣い

2 様々な人間関係と言葉遣い

(1)都市化の進展と言葉遣い

 産業構造が変化し,都市化が進展したことによって,地域社会が従来有していた共同体的性格は大きく変容した。地域を超えた新しい組織が生まれ,そこに所属する人が増えることによって,生まれ故郷で一生を終える人の率は低減した。また,未知の人との社会関係が加わり,伝統的な地域住民相互の連帯感や融和感が薄れて個々人の生活が個別化し,地域社会の人間関係は希薄になった。一方,高等教育の拡大,交通機関や通信手段の発達等により個々人の行動範囲は広がって,それぞれ独自の様々な人間関係を持つようになっている。このような社会において未知の人との接触や関係の浅い人との広範な人間関係を維持するためには,相互に踏み込まないよう心理的な距離を取りつつ,全国的に通用する共通語によって意思疎通を図ることが必要になる。
 一方,高度成長期の言わば画一的な地域開発が見直され,地域の伝統文化や独自性を再評価して外に向けて発信する動きが各地で活発になっている中で,方言についても,地域の豊かな人間関係を担う言葉としての価値が再認識されている。学校教育やマスコミの影響によって,公の場では全国的に共通語が使われるようになっている現状があるが,今後も現代日本語の核としての共通語と,地域の伝統や文化を伝え,豊かな人間関係を担う方言とを使い分けつつ,地域社会のコミュニケーションを一層充実させていくことが望ましい。

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