国語施策・日本語教育

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第1 現代における敬意表現の在り方

付1 敬意表現の教育

(2)日本語教育における敬意表現の教育

 敬意表現は円滑なコミュニケーションのためには不可欠な要素であり,日本語教育においても重要な課題である。敬語を含め,敬意表現の形式を学習することはそれほど難しい問題ではない。しかし,具体的な日本語の運用場面でこれらを適切に使う能力を身に付けるには,それらがどのように適用されるかを具体的に日本語使用の場面に接して学ぶ必要がある。したがって,学習環境が国内であるか国外であるかにより,学習の難易が大きく異なる。
 敬意表現の適切な使用の条件には,話し手と聞き手の上下,ウチ・ソト,親疎等の人間関係や使用場面の公私の別(改まりの程度)等を把握し判断する認知力が備わっている必要がある。したがって,学習者の年齢,母語,母文化の様相によって,心理言語学的,対照言語学的知識を基礎として教授に当たることが望ましい。
 日本語学習の目的・学習時間によって,また,初級・中級・上級といった学習段階によっても敬意表現の扱い方が異なってくる。理解言語と表出言語を分けて扱う必要もある。したがって,日本語教育における敬意表現は,日本人の用いるものを対象とし,学習条件によって学習項目を選択して教材・教授法に一層の工夫を加えることが現実的であろう。
 敬意表現が適切に使えない場合は,文法等の誤りとは異なり,それが人間関係に亀(き)裂を生じかねない結果にもなり得る。一般の外国語学習に際しては,学習者の未熟な表現には聞く側が理解の努力を払い,逆に,学習者に対しては分かりやすい表現を選択して話し掛けることが通例となっているが,敬意表現についてはそのような側面に配慮した対応が望まれる。

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