国語施策・日本語教育

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第2 表外漢字字体表試案

T 字体表の前文

1 表外漢字の字体問題に関する基本的な認識

(2)常用漢字表の意義と表外漢字の位置付け

 ワープロ等に搭載されているJIS漢字は,第1水準,第2水準合わせて6355字あり,常用漢字表に掲げる1945字の3倍強となっている。ワープロ等の普及によって,これら多数の漢字が簡単に打ち出せるようになった現在,常用漢字表の存在意義がなくなったのではないかという意見が存在する。
 しかし,このことは一般の社会生活における漢字使用の目安を定めている常用漢字表の意義を損なうものではない。むしろ,簡単に漢字が打ち出されることで漢字の多用化傾向が強まる中では,「一般の社会生活で用いる場合の,効率的で共通性の高い漢字を収め,分かりやすく通じやすい文章を書き表すための漢字使用の目安(「常用漢字表」答申前文)」となる常用漢字表の意義は高まっていると考えるべきである。漢字の過度な使用は,相互の伝達や理解を困難にする場合があることを十分認識すべきであろう。
 ところで,常用漢字表は「現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安」を示したものであるという趣旨から,ある程度の表外漢字使用を想定したものになっている。一般の文字生活において,常用漢字とともに使われるような比較的使用頻度の高い表外漢字を特定することは,漢字の使用状況を分析することによって可能である。今回検討対象とした漢字は,そのような表外漢字を漢字出現頻度数調査を基に選定したものである。
 しかしながら,現代の文字生活において,漢字使用に占める表外漢字の割合は,決して高いものではない。例えば,同調査のうち,凸版印刷が行った調査(以下「凸版調査」という。)によれば,常用漢字の1945字だけで,対象漢字延ベ数22,360,642字(名簿に出現する漢字5,292,692字を除いたもの。)のおよそ96%を占める。表外漢字については,人名漢字を入れても4%にすぎないが,字種では5000字近くある。このことは,出現頻度が低く,しかも字種としては極めて多いという表外漢字の使われ方を端的に示している。また,このような表外漢字について,字種ごとに複数の字体(いわゆる康熙字典体と略字体等)が併存した場合には,字体にかかわる問題が更に複雑になる。
 今回の表外漢字字体問題に関しては,上記のような現代の文字生活における表外漢字の位置付けを十分に認識した上で考えていく必要がある。

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