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次第・議事要録 第2委員会における審議状況について

清水会長

 それでは,申し訳ないが,時間が余りないので,第2委員会の審議経過を次に伺わせていただくことにしたいと思う。

樺島(第2委員会)主査

 それでは,第2委員会の報告を申し上げる。
 資料2を御覧いただきたい。資料2の後ろの方に,別添として2枚,詳しい資料が付いているので,必要に応じて見ていただきたいと思う。
 第2委員会は,最初に書いてあるように,1月と2月に2回開催したが,何しろ常用漢字表以外の漢字を扱う関係で,膨大な数の漢字について細かな検討をやらなければいけないので,委員会にかける案を作るために字体小委員会を3回開催して,作業をした。
 <基本理念にかかわること>,「(1)基本認識として示すべき内容について」から御説明申し上げる。
 試案というのは,第21期審議経過報告の中の「第2表外漢字字体表試案」のことである。前期の報告の試案の内容は,世の中に出て,最初はちょっと違和感があったようだが,今は受け入れられているので,基本的にこれを踏襲することにする。ただ,印刷の字が対象であるということと,手書き字形を拘束するものではないということをもう少し認識していただけるように書き加える。
 もう一つは,紙に印刷した文字だけではなくて,近ごろはコンピュータなどの画面にも文字が多く出るので,そのことも考慮しなければいけないのであるが,そこにあるように,コンピュータの性能が良くなり,ドット数の制約で簡略化された,「うそ字」などと言っているが,そういうものを表示しなければならないという状況がなくなってきたので,これらについても印刷文字と同様のものとみなしてもよかろうということである。
 それから,第2段落のところに書いてある,今期新しく出てきた考え方であるが,簡易慣用字体を認める上に3部首における一括許容ということを出す。こういうことの理由について,これは既に試案にも出ているが,現在の文字生活における漢字字体の使用実態を踏まえ,この実態を混乱させないことを最優先に考えたということを,これに関連させて述べよう。なぜそういう簡易慣用字体を認めるかということの理由をそこに置こうということである。
 「(2)「いわゆる康熙字典体」を印刷標準字体とすることについて」,「いわゆる康熙字典体」を印刷標準字体とするという表外漢字に関する基本方針は今期も引き継ぐ。前期と変わったのは3部首に関するところで,「本表の前書きには,以下のような」と書いてあるが,表現の仕方としてもほぼ決定したわけで,完全に決定したわけではないが,以下のような内容を明記する。
 表外漢字においては,「いわゆる康熙字典体」を印刷標準字体とする。
 3部首(しんにゅう/しめすへん/しょくへん)についても,表外漢字においては,「いわゆる康熙字典体」の字形を印刷標準字体とする。
 ただし,現に「」「」「」の字形を用いている場合に,これを印刷標準字体に変更することを求めるものではない。――今,そういう簡単な形になっているものを,「いわゆる康熙字典体」に戻すことを要求するものではないということである。――必要に応じて簡略化された字形を用いることを妨げないということである。
 この問題については,前々回の総会辺りでは,検討対象とした範囲内に限って,この3部首の略字体を認めるというようなことを私から報告したが,その後,この三つの部首を持っている文字を一つずつ検討して,検討対象とした範囲外であっても一括許容という形でよかろうとなったものである。ただし,今,読み上げたように,現に略字体を用いている場合に,これを変更することを求めるのではなく,必要に応じてこれを用いることを妨げないという慎重な表現になっている。
 2ぺージに移って,「(3)表外漢字字体表の性格について」。電子メディアとの関係についてはドット文字そのものを対象とするということではなく,試案にあるように,表外漢字字体表に配慮してほしいという程度の文言を明記する。
 (4)の「検討対象漢字の範囲について」であるが,これは別添の資料の方の@からCまでに詳しく書いてある。余り詳しく説明すると,かえって混乱するかと思うが,この試案において検討対象とした表外漢字は978字である。今回新しく凸版印刷の調査資料と読売新聞の調査資料の二つの資料を作った。それで,新しい資料と試案で決めた検討対象とする表外漢字を比較して,両方に共通しているものはそのまま検討対象とする。それから,片方だけにしか出ていない文字というのがどうしてもある。ただ,試案で検討対象とした漢字のおよそ85%に当たるものは,新しい資料の中でも検討対象の範囲に入れようとするものの中に入っているので,使われる漢字はかなり一致しているということが言えると思う。新しい資料にあって試案の方に入っていないもの,それから,試案には人っているけれども,新しい資料に入っていないものについては,1字ずつ検討して,検討対象の漢字に入れるかどうかということを委員会の方で決定する。そういうような手続を取って,より妥当性・客観性の高い検討対象範囲を設定するということである。

樺島(第2委員会)主査

 別添の方のA,B,Cに,今私が簡単に説明したことが詳しく書いてある。もし必要なら,また時間があれば,それについて説明申し上げてもよろしいかと思う。
 それから,また資料2の2ぺージに戻って,「(5)簡易慣用字体について」は,1ぺージのところでも申したが,現在の文字の実態を混乱させないということから,簡易慣用字体は残しておこう。それをなくして,印刷標準字体だけにする,一本に統一するという考え方は採らないということである。
 (イ)の「簡易慣用字体の位置付けについて」のところを読むことにする。

 簡易慣用字体は,印刷標準字体の簡易字体として十分に定着しているもので,印刷標準字体と入れ替えて使用しても何ら支障のないものとする。
 したがって,試案では,「懼」と「惧」,「」と「臈」のように既に別字意識(使い分け)の生じていると思われる異体字を簡易慣用字体に位置付けているが,今期はこの考え方は採らないこととする。すなわち,「惧」は「懼」の,「臈」は「」の簡易慣用字体とはせず,別字扱いとする。これは,「危惧(きぐ)」の場合には「懼」を使うことはなく,「恐懼(きょうく)」の場合には「惧」を使うことがないこと,また「旧」の場合には「臈」は使わず,「上臈」の場合には「」を使うことはほとんどないという現実の文字認識を優先したためである。

 そういう文字の使い分けで,同じ文字であっても,現実の使い方が違うというものは一応別字扱いとするということである。


  • 今後,更にこれらと同様に別字扱いをした方が適当であると認められる異体字関係を持つものがあるかどうかを検討して,その必要があれば適用例を追加する。

 それから,簡易慣用字体を認めるわけで,簡易慣用という言い方は,常用漢字,当用漢字に倣って簡略化された文字で,かつ現代の文字生活において慣用されていると認められる文字のことを表現したものである。ただし,この中には戦前から使用されていた略字体なども含まれている。その数については,いわゆる康熙字典体を印刷標準字体とするという前提の下で,各種資料に基づいて簡易慣用字体を選ぶわけであるが,なるべく絞り込もう。それから,前書きに三つの部首の一括許容が明記された場合は,3部首にかかわるものは簡易慣用字体から外す。1字ずつ書いて示さないということである。
 簡易慣用字体の選定基準については,「(エ)簡易慣用字体の選定基準」にその方針が書かれているので,そこを読むことにする。


 試案の場合は,出現頻度数に基づいて簡易慣用字体を選定した。今期は出現頻度数に加えて,「JIS規格の「6.6.4過去の規格との互換性を維持するための包摂規準」に掲げる29字」及び「平成2年10月20日の法務省民事局長通達「氏又は名の記載に用いる文字の取扱いに関する通達等の整理について」の「別表2」に掲げる140字」を検討して,簡易慣用字体を選定することにする。

 次に進むことにする。


<2 手書き字形にかかわること>
(1) 手書き字形は別とするという試案の方針について

 手書き字形そのものを扱うことは無理であるので,今期も「手書き字形は別とする」という試案の方針を踏襲する。ただし,印刷文字字形と手書き字形との関係・関連については,その考え方を整理して,解説として取り上げることとする。どの程度具体的に述べるかは今後の課題とする。

 ここの述ベ方についてはまだ決まっていない。


(2) 学校教育とのかかわりについて

 学校教育で指導するのは常用漢字の範囲が原則である。その意味で,表外漢字の手書きの仕方について,学校教育を対象にして書き込むという考え方は採らない。

 前回の総会でも申したが,教育の場でどうするかというのは,文部省の方の問題で,こ ちらの方で扱うのは適当でないと思うので,取り扱わない。

樺島(第2委員会)主査

<3 字体差・デザイン差の示し方>
 (1)検討方針及び観点

 デザイン差を検討するに当たっては,検討対象漢字のうち,字体に問題があると判断されるものの1字1字について,『明朝体活字字形一覧』で明治以来の活字字形を確認する。その上で,試案で「デザイン差」と位置付けているもの以外に更に付け加える必要があるかどうかを検討する。
 その場合,デザイン差とする範囲の取り方が簡易慣用字体の認定問題と密接にかかわっていることに配慮する。

 具体的には,この後に書かれているが,例えば,試案では「煎」を「」の簡易慣用字 体と位置付けているけれども,「煎」をデザイン差と認定すれば,簡易慣用字体には入らないことになるわけである。


 (2) 記述の仕方について

 基本的に試案と同じ形とする。ただし,ここで記述されている「デザイン差基準」は,同一字でありながら現実に存在する異なる字形のうち,字体の差(別字体)と考えなくてもよいと判断されるものを,具体例で示したものであることを今以上に書き込む。

 文字を例として出すと,それだけが基準になるという考え方になりやすいので,そうではないということを強調する。

すなわち,この基準は,現実に存在する「同一字体のゆれの範囲」を明示することが目的であることをはっきりさせる。

 (3) デザイン差とする範囲について

 表外漢字では,常用漢字以上に「デザイン差」とする範囲を広げるという試案 の考え方を踏襲する。

 したがって,常用漢字表のデザイン差とするものよりも広くなってしまうということになる。ただし,画数が変わるもの,例えば「/牙」で,4画になるか5画になるかというように画数にかかわる場合の扱い,及びその記述の仕方については更に検討を続ける。
 次に,別添の方の2枚目に飛ぶが,そこのEのところである。常用漢字の異体字は検討対象としないという方針で,試案同様除いてあるが,「阪」「堺」は,常用漢字の「坂」や「界」では代用できない。そういう使用範囲を持つと判断されたので,これらは検討対象漢字として残すこととした。また,この方針に準じて残したものも若干ある。例えば,「裡」であるけれども,「成功裡」など「〜のうちに」という意味では,「裏」という字ではなく,「裡」が用いられる場合がかなり多い。そういう判断で,これも残す。

  •  なお,上記の「常用漢字では代用できない使用範囲」とは,そのほとんどが固有名詞の表記にかかわるものである。

 次のFであるが,固有名詞にしか使われない,あるいは固有名詞以外にはほとんど用いられないと判断されるような表外漢字(例えば,阪や岡など)であっても,固有名詞だからという理由で,検討対象漢字から外すということは避けた。それは,常用漢字とともに使われるような比較的使用頻度の高い表外漢字を検討対象とするという趣旨から考えて,これらは外すべきではないと考えたということである。
 資料2の4ぺージの(4 その他)に戻る。あと残っているものは,表外漢字の字体に関して,審議会で決めた報告内容がJIS規格にどう反映されるか,また,反映するためにはどういうことが必要かということを少し詰める必要がある。それから,例示字形の示し方,字体表の示し方について,試案の形のままでよいか。それから,「」のような略字体は,高校の化学など一部の教科書に使われているので,こういう文字をどういうふうに考えるかということを委員会でもう少し詰めなければいけないということである。
 何しろ審議の対象になる漢字が非常に多く,また,一々どういうふうにその漢字が使われているかということを考えながら決めていかなければならないので,委員会としても頑張ってここまでやってきたが,皆さんに大変苦労していただいているという状況である。
 以上で報告を終わる。

清水会長

 1字1字拾っていかれるというような大変根気の要る仕事ということで,御苦労が多かったわけであるけれども,何か御質問,御意見をいただけるか。
 最後のJIS規格というのは,一番最初から出てきていた問題であるけれども,これへの反映の問題というのは,見通しみたいなものはどうか。

鎌田国語課長

 JIS規格はJIS規格として,検討が行われていて,今年の1月には第3水準,第4水準というものが新たに作られたところである。それと,国語審議会でやっている内容というのは直接の関係はなかろうかと思う。審議会として,こういう字体のものを出して,それがそのまま直接JIS規格になるということではないと思うが,実質的に,今は整合性がとれないという形での不具合というか,そういうものはほとんどなくなりつつあるのではないかと思っている。

清水会長

 何か御質問,御意見があるか。大変技術的なところもあって,今申し上げたように,非常に御苦労が多い作業委員会ということになるが,扱い方について,今大体お話があったように,方針が決まったので,これによって整理をするということで進められている段階だと思う。
 特にないようであれば,また何かあったら,第2委員会の方に御意見をいただければと思う。

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