国語施策・日本語教育

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U日本語の国際化を進めるための方針

1 世界に向けた情報発信の促進

(3)言語による情報交流の必要性から見た通訳・翻訳の重要性

 日本語と外国語をつなぐ領域の仕事に通訳・翻訳がある。日本は歴史的に,海外の情報を取り入れることに重点を置いた時代が長かったが,現代では様々な分野で,日本からの情報を世界に発信したり,言語の違いを超えて意思疎通を図ったりすることの重要性が増しており,通訳や翻訳の意義・役割も,その観点から見直していかなければならない。

(ア)通訳の重要性の高まりと通訳教育充実の必要性
 言語や文化の接点における情報交換,とりわけ高度の判断に基づく議論が必要な会議や交渉,異なる言語を用いる者の間に発生した問題の解決などにおいては,言語の背景にある文化的・社会的事情を熟知した通訳者の存在が重要である。分野によって,今後は機械翻訳の活用も期待されるが,機械翻訳の技術が発達しても,場面に応じ,発言の背景となる文化や状況,人間関係などを踏まえ,言葉の微妙な意味合いまで訳し出すことは,人間にのみ可能である。今後,質の高い通訳の重要性は更に増大するものと考えられる。
 通訳は,高い母語能力と外国語能力,言葉の文化的背景を含む幅広い教養など高度な能力を要する専門職である。我が国における通訳教育は,大学のほか,外国語学校,民間企業などで行われているが,今後は大学における学部・大学院の教育を充実し,国際化に対応するための日本の人的資源として,高度に訓練された職業通訳者及び高い見識を有する通訳理論の研究者を養成することが望まれる。
 また,各国と日本との間における高度できめ細かな情報交流のためには,日本人の通訳者とともに,日本語能力を有する外国人の通訳者の量的・質的な充実も必要となる。日本や日本人に対する深い理解を持った外国人通訳者は,日本とその国との相互理解や日本語の国際的な広がりに貢献し得る人材である。したがって,今後は外国人に対する日本語教育の場においても,通訳の分野で活躍できる人材の育成につながる工夫を一層積極的に行っていくべきである。

(イ)機械翻訳の将来に向けた研究開発の必要性
 各種の分野で高度の専門性を有する通訳者や翻訳者が求められる一方,一般の人々にとっての簡便で安価な意思疎通の方法として,コンピュータを用いた機械翻訳の有用性が高まってきている。機械翻訳が抱える前述のような限界を認識した上で,その開発が進んでいくことが期待される。なお,近年,音声認識も含めた機械翻訳の技術は急速に進歩しているが,より広範で日常的な使用のためには一層精度と実用性を高めることが求められており,そのための前提として,大量の日本語資料から文例を抽出し,それを分析・整理したデータベースの整備が急がれる。

(ウ)地域における生活に必要な情報伝達を支援する体制の必要性
 国内の地域社会に居住する外国人の増加に伴い,医療や教育など生活に必要なサービスにかかわる情報伝達が重要となっている。日常的な情報のほか,病気や事故などの場合,あるいは非常災害時も含めて,日本語と居住者の母語との接点における情報交換が的確・迅速に行われるよう,行政機関,医療機関,報道機関,日本語教育関係者,外国人の団体,その他のボランティアなどの間における連携協力体制を構築することが必要である。

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