国語施策・日本語教育

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V 国際化に伴うその他の日本語の問題

 近年,社会的に問題となっている,外来語・外国語(いわゆる片仮名言葉など)の増加の問題,及び,姓名のローマ字表記の問題について,以下に見解を述べることとする。これは,日本語による社会的なコミュニケーションが一層適切に行われるようにしていくこと,日本語を一層魅力的で価値あるものにしていくこと,さらには,日本語に関する働き掛けを通して人類の有する文化の多様性が世界の中で生かされるようにしていくことが大切であるという認識に基づくものである。そして,これらのことは,言葉の使用に大きな社会的責任を有する官公庁や報道機関等をはじめ,日本語を用いるすべての人の参画と努力とによって達成されるものであると考える。

1 外来語・外国語増加の問題

(1)外来語・外国語増加の現状と問題点

 外来語・外国語は以下のような機能を担って日本語の中で使用されており,既に日本語として定着している外来語も多く存在する。

  @ それまで日本になかった事物や新概念を表す
    例:ラジオ,キムチ,アンコール
  A 専門用語として取り入れる
    例:オゾン,インフレーション
  B その語に伴うイメージを活用する
    例:「職業婦人」を「キャリアウーマン」と言い換えて新しいイメージを出す

 しかし,近年では,外国との間の人・物・情報の交流の増大や,諸分野における国際化の進展等に伴い,日本語の中での外来語・外国語の使用が目立って増大しており,一般の人々にとって覚え切れないほどに新しい語が次々に出現する,専門領域で使われていた語がそのまま一般社会に流出する,白書・広報紙等の公的な文書や多くの人を対象とする新聞・放送等にも目新しい外来語・外国語が出現する等のことが問題となっている。また,外来語・外国語の安易な使用は和語・漢語の軽視につながり,歴史の中で築かれ磨かれてきた日本語の機能や美しさが損なわれ,伝統的な日本語の良さが見失われるおそれもあると言える。
 社会的なコミュニケーションや国際化時代の日本語の在り方から見た外来語・外国語増加に伴う問題点としては,以下のようなものが挙げられる。

  @ 日本語によるコミュニケーションを阻害し,社会的な情報の共有を妨げるおそれがある
    …外来語・外国語が理解できないため,情報を受け取れない人が生じる。
  A 世代間コミュニケーションの障害となる
    …特に高齢者にとって,外来語・外国語の意味が分からなくて困ることが多い。
  B 日本語の表現をあいまいにする
    …表意文字の漢字で書かれた漢語と違って概念がつかみにくい。また,意味のあいまいな語の使用により,全体が明快で論理的な表現にならなくなる。
  C 外国人の日本語理解の障害となる
    …外国にとって片仮名語は分かりにくい。
  D 日本人の外国語習得の障害となる
    …原語の意味から外れた外来語や和製語は,外国語としては通用しない。

 以上を考え合わせると,外来語・外国語は固有の機能や魅力を持ち,各分野で使われているが,その急速な増加及び一般の社会生活における過度の使用は,社会的なコミュニケーションを阻害し,ひいては日本語が有する伝達機能そのものを弱め,日本語の価値を損なう危険性をも有していると言えよう。

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