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文化庁月報
平成23年8月号(No.515)

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連載 「鑑 文化芸術へのいざない」

国立能楽堂 9月企画公演
能と雅楽 −延命長寿への憧れ−

公演日時:平成23年9月21日(水)午後6時開演別ウィンドウが開きます
9月23日(金・祝)午後2時開演別ウィンドウが開きます

国立能楽堂企画制作課 大貫誠之

目次

  1. 1 延命長寿への憧れ
  2. 2 華麗な能「寝覚」と管絃「海青楽」
  3. 3 稀曲・能「彭祖」と朗詠「春過」
  4. 4 菊の花と重陽の節句
  5. 5 能と雅楽の共演
寝覚の床(上松町観光協会提供)

寝覚の床(上松町観光協会提供)


能「寝 覚」(月岡耕漁「能楽図絵二百五十番」国立能楽堂蔵)

能「寝 覚」
(月岡耕漁「能楽図絵二百五十番」
国立能楽堂蔵)

延命長寿への憧れ

 延命長寿。人々が永く憧れてきたテーマとして,その思いはさまざまな文芸や芸能に託されてきました。能もそのひとつで,延命や長寿を主題にした作品が数多く伝わっています。9月の国立能楽堂・企画公演では,そのような作品群より上演機会のたいへん稀な能「寝覚(ねざめ)」と能「彭祖(ほうそ)」の2曲を上演し,それぞれに深い関係をもつ雅楽の曲を同時に上演することで,作品のイメージをより膨らませることのできる内容となっております。また作品の舞台はそれぞれ日本,中国と異なりますので,その描かれ方を見比べる楽しい機会にもなりましょう。

華麗な能「寝覚」と管絃「海青楽」

 9月21日には不老長寿の薬をめぐる物語,能「寝覚」をご覧いただきます。
 勅使が信濃の国・寝覚(ねざめ)(とこ)へ不老長寿の薬を求めて,三帰翁(みかえりのおきな)を訪れます。三帰翁は三たび若返ったとされる人物ですが,じつは薬師(やくし)如来(にょらい)化現(けげん)でした。登場人物も多く,たいへんに華やかな展開の作品で,五流ある能楽シテ方の流儀のうち,観世流(かんぜりゅう)のみに伝わる作品です。
 能「寝覚」に先立って演奏されるのは「管絃(かんげん) 海青楽(かいせいらく)」です。管絃とは楽器演奏を中心とし,舞を伴わない雅楽の様式のことで,この曲は,船が池を三度廻る間に作曲し,中の島で演奏せよという勅命によって生まれた作品です。能の後半では「海青楽を奏しけり」という謡に続けて天女が相舞を舞い,この場面は作品のみどころのひとつとなっています。また,能「白楽天(はくらくてん)」でも,主役である住吉明神(すみよしみょうじん)が唐の詩人・白楽天に神力を見せる場面で,この「海青楽」が引用されています。

稀曲・能「彭祖」と朗詠「春過」

 9月23日には仙人とその仙人の授ける長寿を保つ菊水の盃を描いた能「彭祖」をお楽しみいただきます。
 魏の文帝が臣下を従え,菊の咲き誇る酈縣山(てっけんざん)にやって来ると,仙人・彭祖が現れ,長寿の薬である菊水を帝に献上して祝福の楽を舞います。金剛流(こんごうりゅう)のみの稀曲で,国立能楽堂では初演となります。
 この日,同時に上演されるのは「朗詠(ろうえい) 春過(はるすぎ)」です。朗詠とは管絃に属する曲種のひとつで,詩に旋律を付けて楽器演奏とともに謡われるものです。「春過」は「()遺賢(いけん)なし」という故事にちなんだ作品で,能「彭祖」とともに仙人の存在を描きます。どちらも『和漢(わかん)朗詠集(ろうえいしゅう)』にその説話が残る物語です。

菊の花と重陽の節句

 さて,能「彭祖」は菊水譚がもとになっていますが,この故事をもとに,邪気を払い長寿を願って,菊の花を飾ったり,菊の花びらを浮かべた酒を酌み交わして祝ったりすることが9月9日,重陽の節句に行われてきました。またその前夜,菊に綿をおいて露を染ませ,身体をぬぐうなどの習慣があり,これは「菊の着綿(きせわた)」という宮中の行事として知られ,後には民衆にも伝わり,広く習慣として定着しました。桃の節句や端午の節句と比べますと,今日では目立ちにくい行事ではありますが,節句のひとつとして,季節感を色濃く映すものと言えましょう。余談ですが,山形で多く生産されている紫色の食用菊に「延命楽(えんめいらく)(通称:もってのほか)」という品種があり,この逸話との関連を思わせます。
 なお,夏の京都を彩る祇園祭で巡行する鉾の一つ「菊水鉾(きくすいぼこ)」は旧・金剛能楽堂(京都・室町)にあった菊水井という井戸にちなんで名付けられたもので,これも能「彭祖」の類曲である能「枕慈童(まくらじどう)」という曲に取材したものです。魏の文帝の臣下が薬水を訪ねて山に入り出会った,菊の葉に滴る露を飲み700年もの間生き続けている少年・枕慈童が稚児人形として能装束の出で立ちで飾られています。

国立能楽堂

国立能楽堂

能と雅楽の共演

 能には雅楽と関連する作品は少なくなく,雅楽の楽曲に言及のあるもの,また雅楽を奏する楽人が登場するものなど,その形はさまざまと言えます。その中で,今回の企画公演は,延命長寿のテーマの下,能と雅楽を一度にご覧いただけるまたとない機会です。各日とも演奏の前に「おはなし」があり,またパーソナルタイプの座席字幕システムが用意されておりますので,初めてご覧になる方にも十分お楽しみいただけることと思います。ぜひこの機会に国立能楽堂へお運びください。

国立能楽堂 企画公演
能と雅楽 −延命長寿への憧れ−
公演 平成23年9月21日(水)午後6時開演
おはなし 豊英秋
(宮内庁式部職楽部前首席楽長)
管絃「海青楽」他   十二音会
能(観世流)「寝覚」  片山九郎右衛門
平成23年9月23日(金・祝)午後2時開演
おはなし 豊英秋
(宮内庁式部職楽部前首席楽長)
朗詠「春過」他     十二音会
能(金剛流)「彭祖」   金剛永謹
チケット情報 前売開始日 電話・インターネット予約開始:8月9日(火)
窓口販売開始:8月10日(水)
※窓口販売用に別枠でのお取り置きはございません。
等級別料金 正面   6,100円
脇正面 4,700円(学生:3,300円)
中正面 3,100円(学生:2,200円)
お問い合わせ先 国立劇場チケットセンター(10時〜5時)
 0570-07-9900
 03-3230-3000(PHS・IP電話)
 http://ticket.ntj.jac.go.jp/別ウィンドウが開きます(一般券・パソコンのみ)

国立能楽堂

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