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文化庁月報
平成23年11月号(No.518)

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特集 

「文化遺産オンライン構想」成果報告フォーラム
〜文化遺産とデジタル・アーカイブの最前線を知る〜 開催に向けて

文化財部伝統文化課文化財保護調整室専門職 高尾 曜

目次

  1. 1 はじめに
  2. 2 文化遺産オンライン構想
  3. 3 連想検索エンジン
  4. 4 文化遺産データベース
  5. 5 文化遺産ギャラリー
  6. 6 参加館の負担軽減とメリット
  7. 7 地方指定文化財データの充実
  8. 8 デジタル・アーカイブ
  9. 9 デジタル・アーカイブにおけるMLA連携
  10. 10 世界への発信
  11. 11 さらなる発展へ

はじめに

「文化遺産オンライン構想」成果報告フォーラム ポスター・参加申込書(PDF)

「文化遺産オンライン構想」成果報告フォーラム
ポスター・参加申込書(PDF)

 『文化遺産オンライン別ウィンドウが開きます』は,美術館・博物館等に収蔵される文化遺産のデータを指定・未指定を問わず広く登録し,検索・閲覧を可能にするインターネット上のポータルサイト(電子情報広場)です。日本国内の文化遺産情報の総覧を可能にし,さらには世界に向けて発信することを目指し,文化庁と国立情報学研究所が共同運営をしています。平成20年(2008)3月の正式公開以来,利用者のための詳細な検索を可能にするシステム開発や,参加する美術館・博物館,関係団体の負担を軽減する取組を行ってきました。
 平成23年(2011)11月現在で,92,466件の文化遺産情報が登録されています。また,全国で927館の美術館・博物館が館の情報を登録して公開し,その内,124館が文化遺産情報を掲載しています。
 このたび,『文化遺産オンライン』の内容の一層の充実を図り,当サイトへの美術館・博物館のさらなる参加を促すため,本年12月2日(金)に,公開以来初めてとなる「文化遺産オンライン構想」成果報告フォーラムを開催することとしました。
 フォーラム第1部「文化遺産オンライン構想の推進」では,これまでの「文化遺産オンライン構想」の成果を報告します。第2部「デジタル・アーカイブ最前線」では,デジタル・アーカイブの最新の動向について,さまざまな分野の専門家よりご報告いただきます。

「文化遺産オンライン構想」成果報告フォーラムホームページ 別ウィンドウが開きます

文化遺産オンライン構想

文化遺産オンライン トップページ

文化遺産オンライン トップページ

 「文化遺産オンライン構想」は,平成15年(2003)4月に文化庁と総務省が発表したもので,あわせて文化庁には文化遺産情報化推進戦略会議が設置されました。平成16年(2004)4月には同会議が「文化遺産オンライン(試行版)の公開に向けて −今後推進すべき事項と当面進める施策−」を公表し,同時に『文化遺産オンライン(試行版)』を一般に公開しました。
 正式公開は,平成20年(2008)3月に行いました。この時からサイト構成は,画像がある文化遺産のみを抽出して視覚的に楽しめる「ギャラリー」と,写真がないデータもすべて検索できる「文化遺産データベース」の2つが中心となりました。また電子企画展システム「遊歩館」もこの時から搭載しました。その他に「動画で見る無形の文化財」,「世界遺産と無形文化遺産」,「全国の美術館・博物館情報」,「地方の文化財」などのページがあります。
 平成22年(2010)12月には,「文化遺産データベース」のリニューアルを行い,詳細な検索を可能にしました。今秋には「ギャラリー」のリニューアル版の公開を行って一新します。

連想検索エンジン

 『文化遺産オンライン』のシステムとしての特長は,検索システムに連想検索エンジンを使用していることです。これは開発段階から現在まで共同で運営を行っている,国立情報学研究所が開発したものです。一般的な一致検索と異なり,作品データから単語を抜出し,関連が深いと思われる文化遺産をコンピューターが計算し,自動抽出して表示するものです。利用者は,知りたいと思って閲覧した文化遺産の情報を入口にして,想像もしなかった関連する文化遺産が提示されることにより,次々に関連する文化遺産にもつながっていく仕組みになっています。それも1つの美術館・博物館に限らず,登録されているさまざまな分野の文化遺産全データから横断的に検索されているので,意外な関連を発見することになるでしょう。目的があって調べる場合はもちろん,漠然としたイメージしかない場合や,専門用語がわからない場合でも楽しむことができます。

文化遺産データベース

文化遺産データベース

文化遺産データベース

 「文化遺産データベース」は,画像のないデータも含め,『文化遺産オンライン』に登録されているすべてのデータを検索できるデータベースです。平成22年(2010)12月に,システムの大規模なリニューアルを行いました。
 それまでのデータベースの連想検索は,絞り込みに不便な場合もあり,利用者からの声によって改修を行いました。本来,連想検索と一致検索は相反するものです。これを上手く組み合わせることにより,連想検索した結果からさらに絞り込むことや,その逆を可能にしました。また検索キーワードはフリーワードで入力するだけでなく,その都度,自動的に計算された関連キーワードが表示されますので,その中から選ぶこともできます。それにより,その都度新たなテーマの興味を起こさせるような仕掛けになっています。検索も解説文等,すべての作品情報のテキストを対象にしました。また検索スピードも向上させ,こうした全データを対象とした全文検索でも,おおむね1〜2秒で結果が表示されるようになりました。
 さらに,「作家一覧から探す」ページと,「所蔵館一覧から探す」ページを新設し,文化遺産情報への入口を拡張しました。このように一般の方から専門家まで,幅広く利用できるようなデータベースを目指しています。この文化遺産データベースは好評をいただいており,このページだけでも,リニューアル以前に比べて十数倍のアクセスがあります。

文化遺産ギャラリー

 「文化遺産ギャラリー」は登録されているデータの内,画像も登録されている文化遺産を対象として検索するページになっています。この「文化遺産ギャラリー」の改修を昨年度に行い,今秋の公開に向けて準備をしています。
 今回のリニューアルで大きく変わるのは,電子地図からの検索を可能にすることです。電子地図を使った文化財情報の発信は,文化庁としては『国指定文化財等データベース別ウィンドウが開きます において,すでに行っています。
 『文化遺産オンライン』では,当然のことながら,さらに一歩進め,国指定等の文化財のみならず,参加している美術館・博物館が所在する位置やその登録した文化遺産データ,地方指定文化財も電子地図上に表示します。利用者が旅行などに出かける際に,事前に『文化遺産オンライン』を確認して,文化遺産や美術館・博物館の訪問ルートを検討できるなど,地域振興や観光にも役立つことを念頭に開発しています。

参加館の負担軽減とメリット

 『文化遺産オンライン』は,国内の文化遺産の総覧を目指しています。また,連想検索は検索するデータの母数が多いほど,有効な結果が得られるものです。参加館数の増加と掲載する文化遺産の件数の増加は,利用者の利便性の向上とともに,最も重要な課題でした。そこで参加館の作業負担を軽減する取組も行ってきました。
 これまでデータ登録の方法は,文化遺産を1件ずつ登録する「オンライン登録方式」だけでした。これは1件ずつ,登録画面で確認しながら入力作業をできるため,視覚的にわかりやすい反面,多くの作品を掲載するには大変な労力を要しました。
 そこで,これに加えて複数件の文化遺産情報をCSV形式で一括登録する,「CSVアップロード方式」の供用を開始しました。平成22年度「全国の博物館・美術館等における収蔵品デジタル・アーカイブ化に関する調査・研究」事業では,その実証研究も行いました。和歌山県立近代美術館,財団法人根津美術館,おぶせミュージアム中島千波館と高井鴻山記念館(共に小布施町立で,調査研究事業は小布施町立図書館に委託),小金井市立はけの森美術館,財団法人鍋島報效会徴古館,東京工業大学百年記念館に実証研究を委託し,この方式を使って,実際にその所有作品データ合計11,128件が新たに『文化遺産オンライン』に加わりました。
 また,この「CSVアップロード方式」と同時に開発した外部連携機能を活用し,参加館のホームページの中に,収蔵品の検索・閲覧ページを作成し,『文化遺産オンライン』が検索応答を行うシステムを作ることもできます。前記事業において,その実証研究も行いました。和歌山県立近代美術館別ウィンドウが開きますは,全所蔵作品を『文化遺産オンライン』に掲載すると共に,館のホームページに収蔵品検索システムを組み込みました。小布施町立図書館は,おぶせミュージアム中島千波館と高井鴻山記念館の収蔵品の検索サイト『小布施正倉別ウィンドウが開きます を創設しました。財団法人鍋島報效会徴古館別ウィンドウが開きます は,ホームページをリニューアルし,収蔵品検索システムをその中に組み込みました。
 これらは実は,館のホームページのサーバに文化遺産のデータを持っているのではありません。館のホームページから検索要求を『文化遺産オンライン』に送り,『文化遺産オンライン』のデータベースサーバで検索し,その結果を館のホームページに戻して表示しています。URLもそれぞれの館のURLのままで,あたかも独自に検索システムを持っているかのように見えます。『文化遺産オンライン』に登録されたデータを共有している状態です。『文化遺産オンライン』への一度の登録だけで,『文化遺産オンライン』と館のホームページと両方で公開することができ,掲載館にもメリットがあるようなシステムとしています。将来的には,『文化遺産オンライン』にデータを登録すれば,それぞれの館のホームページができるような汎用的なセットを提供する予定です。

和歌山県立近代美術館ホームページの収蔵品検索ページ

和歌山県立近代美術館ホームページの収蔵品検索ページ

小布施正倉ホームページの収蔵品検索ページ

『小布施正倉』ホームページの収蔵品検索ページ

財団法人鍋島報效会徴古館ホームページの収蔵品検索ページ

財団法人鍋島報效会徴古館ホームページの収蔵品検索ページ

 さらに収蔵品データが多く,更新が頻繁な場合に,データベース間で作品情報の連携を図る「メタデータハーベスティング方式」が適しています。これまでは,文化庁の「文化財管理台帳システム」に登録されている国指定等文化財データや,独立行政法人国立美術館の作品データを自動連携によって掲載してきました。前述の調査・研究事業によって,奈良国立博物館も自動連携を行うようになり1,833件のデータが加わりました。今後は汎用化に向けた開発を行い,より多くの館とデータベース連携を行う予定です。

地方指定文化財データの充実

 文化財保護法では,地方公共団体が新たに指定等を行った際に文化庁への報告を求めています。平成23年4月からは,この文化庁への報告の際に,『文化遺産オンライン』での公開の可否を確認し,登録可能な文化財については,『文化遺産オンライン』への掲載を自動的に行うシステムと業務フローを確立しました。地方指定文化財は地方における観光振興にも寄与するものです。特に「文化遺産ギャラリー」のリニューアルによって,電子地図上に地方指定文化財も表示されるようになれば,一層その効果を発揮することでしょう。過去の指定物件に関しても,公開可能なデータが提供されれば,『文化遺産オンライン』へ掲載することにしています。

デジタル・アーカイブ

 1990年代頃からデジタル・アーカイブという言葉が使われ始め,インターネットにおいてアーカイブを公開することの有用性が説かれました。美術館・博物館においては,収蔵品をデジタル化することによって,情報公開への対応が容易になり,常設展の集客にも役立つといった広報面でのメリットもあります。しかし政府がデジタル・アーカイブを進めようとした2000年代前半,美術館・博物館の現場では,インターネットに接続しているパソコンの台数が少なかったり,対応できる人材が少ないなど,実現には程遠い感がありました。パソコンやネット環境が整い始め,デジタルカメラの機能が飛躍的に向上し,撮影もデータの加工も容易になったのは,ここ数年のことです。アーカイブ化のコストも下がってきました。現実的には,今こそデジタル・アーカイブを推進する好機と言っても過言ではありません。
 しかしながら,現在でも美術館・博物館においてデジタル・アーカイブ化は十分に進んでいない状況と考えます。専門職員など人材不足の問題,データベースを構築するための予算の問題などが障害になっていると考えられます。『文化遺産オンライン』は,これらの問題を解決できる1つの有効な手段と考えます。

デジタル・アーカイブにおけるMLA連携

 近年では,デジタル・アーカイブの世界においてもMLA連携という言葉が聞かれるようになってきました。すなわちMuseum(美術館・博物館),Library(図書館),Archives(文書館)が連携し,電子情報として共有,利用する仕組みです。M,L,Aそれぞれは,取り扱う対象の性質や管理手法が異なるため,別々の機関として発達してきましたが,デジタル・アーカイブでは,原資料がデジタル化されることによってその区分があいまいになるので,MLAで連携してデータを利用できるようにしようというものです。
 図書館・文書館については,書誌情報の管理手法が確立してきましたが,美術館・博物館では,それが確立されていません。そもそも美術館と博物館の間ですら,管理手法が異なる部分もあり,共通の管理項目を設定することについても,いまだに相当の時間を要するとされています。
 『文化遺産オンライン』では,当初から文化財保護法によって国が保護する6類型の文化財分類に対応できるよう項目が設定されました。建造物・美術工芸品のような有形文化財や無形文化財,有形・無形の民俗文化財,記念物,文化的景観,伝統建造物群を検索できるような項目設定です。『文化遺産オンライン』では,この項目を使って,国内の多様な文化遺産を分類し,公開してきました。
 今回のフォーラムでは,試行版の公開以来,7年半にわたり使用してきたこの項目を改めて公開し,参加される美術館・博物館の関係者の方々に参照していただくことにしています。今後も,『文化遺産オンライン』が美術館・博物館が所有する文化財を管理,公開するうえで,有効なプラットフォームであると考えています。MLA連携が進む中,『文化遺産オンライン』はデジタル・アーカイブに関わるさまざまな問題を解決する1つの答えになると考えています。

世界への発信

 「文化遺産オンライン構想」は,当初から世界への発信を目指していましたが,多言語化は容易には実現しませんでした。現在でも日本国内の美術館・博物館で多言語版を用意している館は多くはありません。これはシステム的な問題よりも,翻訳に問題があると考えられます。特に『文化遺産オンライン』では,多くの美術館・博物館が参加しているため,文化遺産名称を翻訳する際にも,さまざまな調整の問題点が考えられます。しかし国際化社会の現代において多言語版は不可欠です。特にデジタル・アーカイブの世界でも,アメリカ,ヨーロッパにおいて,国を越えた連携が一部で進もうとしている現状です。避けては通れない課題ですが,『文化遺産オンライン』において多言語化が実現すれば,『文化遺産オンライン』参加館は,館として独自に多言語版を用意しなくても,世界へ向けた情報発信の窓口を持つことができます。

さらなる発展へ

 『文化遺産オンライン』が試行版を公開して7年半となります。掲載作品数も10万件に近づく勢いです。近年のIT技術の進歩やデジタル・アーカイブの動向にも目を配りつつ,それに対応できるよう,システム改修も続けています。このフォーラムにおいて,さまざまな立場の専門家からデジタル・アーカイブの最前線について,ご紹介していただきながら,『文化遺産オンライン』への参加を促し,さらなる発展を遂げたいと考えております。

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