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文化庁月報
平成24年5月号(No.524)

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特集「平成23年度(第62回) 芸術選奨」

各受賞者の紹介

目次

  1. 1 文部科学大臣賞
  2. 2 文部科学大臣新人賞

文部科学大臣賞

 

部 門
受賞者
贈賞理由
演 劇

栗山 民也
栗山 民也

「日本人のへそ」撮影:落合高仁"

「日本人のへそ」
撮影:落合高仁

 栗山民也氏は現代演劇界を代表する演出家として,これまでにも数多くの優れた舞台を創ってきた。平成23年には井上ひさし作「日本人のへそ」(こまつ座),同「雨」(新国立劇場),パム・ジェムス作「ピアフ」(シアタークリエ)という,タイプの違った三作品を三劇場で演出し,それぞれの作品の持つ魅力を出演者の個性を生かしながら見事に造形した。三つの舞台は平成23年の日本の演劇界の大きな収穫になった。

演 劇

中村 又五郎
中村 又五郎

中村 又五郎

 

 9月,新橋演舞場での三代目襲名披露で,義太夫狂言の名作「菅原伝授手習鑑」から「寺子屋」の武部源蔵と荒事の基本「車引」の梅王丸を演じ分けて,芸域の広さを見せた。殊に初役の源蔵は,物思いにふける花道の出から,中村吉右衛門氏の松王丸に対峙して一歩も譲らない首実検まで,その立場,境遇,人柄までが鮮明な源蔵だった。踊りにも定評がある働き盛りの50代。時代物に定評がある人間国宝の吉右衛門傘下にあって芝居に厚みを増す役者としての存在は大きい。

映 画

新藤 次郎
新藤 次郎

「一枚のハガキ」

 新藤次郎氏のプロデュース作品「一枚のハガキ」は,今年度観客が最も感動を受けた作品であった。戦争に翻弄させられる人々の悲しみと,人間の生き抜く力を,兵士として従軍した99歳の監督が描ききった渾身の作品は,氏のプロデューサーとしての企画,準備から撮影,仕上げ,配給,宣伝,興行までの全過程を丁寧に組み上げ,ハンドリングした成果であると高く評価できる。独立プロや製作委員会が映画制作の主体となっている現在は,作品の興行をも含めた全運行はプロデューサーの手に委ねられてきている。今までにも増して,これから世界に翔く作品創作をも担ってくれることを期待する。

映 画

成島 出
成島 出

成島 出

 映画監督・成島出氏はここ数年話題作を多く提供している。同氏の監督作品「八日目の蝉」(原作は角田光代の同名ベストセラー小説)は,現代の児童誘拐を扱った2時間半におよぶミステリー作品である。この作品が何より魅力的なのは,母性を普遍的なテーマとして捉え,オーソドックスな手法で日本的作品に仕上げ,観るものの心を掴み取ったところにある。その手腕は見事である。氏はこの作品に登場する女優たちのキャラクターに鋭い眼を配り,女の性,悲しみをきめ細かく描出した。その演出力は実にたくみである。また小豆島での人間と自然の関係も印象深く描かれ,魂の作品として仕上げてある。その技量を高く評価したい。

音 楽

亀山 香能
亀山 香能

亀山 香能

 亀山香能氏は,山田流の歌・箏・三絃の伝統的な技法の上に立って,現代的な平明でさわやかな感覚を吹き込んだ演奏を展開してきた。昨年のリサイタルにおいては,中能島欣一作曲の「赤壁の賦」では,若い尺八演奏家と箏で共演して,曲の新しい魅力をひきだしたり,中能島松声作曲の「雨夜の月」では,六人の箏の演奏家に囲まれて一人で三絃を弾き,ひき締まった演奏で新しい歌の魅力を生みだした。

音 楽

福田 進一
福田 進一

福田 進一

 福田進一氏は,パリ国際ギターコンクールで栄冠を勝ち取って以来,今日に至る30年の間,傑出した演奏,教育活動を世界的規模で続けてきた。その福田氏が,コンクール優勝30周年を期して始めたバッハの無伴奏作品を全曲ギターで演奏するという企画の初回(無伴奏チェロ組曲)で示した演奏は,作品の構造と奥深い精神性を見事に明らかにするもので,改めて氏の,技の熟練度の高さとギターを越えた音楽そのものに対する深い理解を目の当たりにさせた。わが国におけるギター音楽の存在感を高めた功績は極めて高く評価できる。

舞 踊

首藤 康之
首藤 康之

イリ・キリアン振付「ブラック・バード」 photo MITSUO

イリ・キリアン振付「ブラック・バード」
photo MITSUO

 「Shakespeare THE SONNETS」において,劇作家その人を思わせる詩人,恋のライバルである美青年,劇中人物のオセロ,ロミオなど複数の役柄を演じ分け,また融合して奥の深い人間観を表現した。女性パートを踊った中村恩恵氏による高度な振付を見事に具現するいっぽう構成・演出をも担当し,16世紀的であると同時にきわめて現代的でもある哲学的な内面世界をたぐい稀な緊張感と官能性をもって創出したのは,本年度最大の成果の一つである。

舞 踊

花柳 寿楽
花柳 寿楽 写真:篠山紀信
写真:篠山紀信

「夢殿」

「夢殿」

 花柳寿楽氏は正統的な技法を土台に修練を重ね,前名の錦之輔時代から端正で品格ある芸風が常に注目を浴びてきた。近年は特に表現力に一層の磨きがかかり,「花柳寿楽舞踊會」における「夢殿」から醸し出す静謐さは多くの人を魅了した。「夢殿」は三世花柳壽輔の名品として知られるが,元は二世壽輔(壽應)の振付(昭和6年初演,昭和25年改訂上演)で,今回は改訂版の蘇演(四世壽輔補綴)。夢殿に象徴される精神性を舞踊技術だけで表現する「舞踊の純粋性」を追求した壽應の志を氏は高い芸術性で上演した。

文 学

小池 真理子
小池 真理子 撮影:秋元孝夫
撮影:秋元孝夫

小池 真理子

  

 「無花果の森」は,夫の暴力に耐えかね,生きることに絶望して出奔した女と,冤罪から逃れて身を隠す男の,廃市とも呼べる地方都市での出会いと愛執を通して,現代の隠棲文学とも呼べる悲しさ,美しさ,そしてしたたかさを表現している。小池真理子氏はミステリー文学から出発し,人間関係のサスペンス性で物語を創ってきたが,本書では登場人物を絞り込み陰影をつけ,社会的弱者の苦悩に真正面から向き合い,再生の力強さまでを描ききっている。

文 学

藤井 貞和
藤井 貞和

藤井 貞和

  

 藤井貞和氏は詩人・国文学者で,多数の詩集の他,「古日本文学発生論」などの論考がある。豊かな知見に裏打ちされたその詩は,神話性と現代,荘重と軽み,ことばの冒険とひたむきに歌う「いのち」など,相反する要素の魅力的な衝突現場といっていい。現代文明に対する痛切な思いも,洗練されたことばの中に込められている。詩人は早くから詩のかたちや方法,ことばのひびきに意識的であり,本詩集は新しい詩を模索する中で生まれた貴重な成果である。

美 術

畠山 直哉
畠山 直哉 撮影:菅野有恒
撮影:菅野有恒

畠山直哉展「ナチュラル・ストーリーズ」(東京都写真美術館2011年10月1日〜12月4日) 会場写真提供:東京都写真美術館"

畠山直哉展「ナチュラル・ストーリーズ」
(東京都写真美術館2011年10月1日〜12月4日)
会場写真提供:東京都写真美術館

 畠山直哉氏の「畠山直哉展Natural Stories ナチュラル・ストーリーズ」(東京都写真美術館)は,同氏が1980年代以来積み上げてきた,自然と人間の営みとの関わりあいを緻密に撮影し,再構築していく作品群を集大成したもので,日本の写真表現の展開において一つのエポックとなった。とりわけ,そこで展示された新作の「陸前高田」と「気仙川」の両シリーズは,東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県陸前高田市で生まれ育った氏にとって重い意味を持つ作品であり,注目に値する。

美 術

坂 茂
坂 茂

Shigeru Ban Architects

Shigeru Ban Architects

 坂茂氏の「紙の建築」は,紙製のパイプを組み合わせることによって低廉で自由な建築構造を手に入れるものであり,平成12年のハノーバー万国博覧会日本パビリオン(独),平成22年のポンピドゥ・センター,メス(仏)などに結実して来た。平成23年の東日本大震災に際しては,このシステムを応用して避難所用簡易間仕切りを作り,支援に貢献した。「紙の建築」による同氏の創造性は,方法と造形の両面において高く評価される。

放 送

阿武野 勝彦
阿武野 勝彦

阿武野 勝彦

   

 阿武野勝彦氏はプロデューサーとして「裁判長のお弁当」「光と影〜光市母子殺害事件弁護団の300日〜」と,継続して司法のあり方を鋭く問い続けて来た。
 司法シリーズの8作目となる最新作「死刑弁護人」では死刑制度やそれを巡る報道について一石を投じた。また四日市公害,戸塚ヨットスクールなど忘れ去られようとする社会問題にも目を向け,優れたドキュメンタリーとして結実させた。その信念ある姿勢を高く評価したい。

大衆芸能

柳家 権太楼
柳家 権太楼

柳家 権太楼

   

 落語家・柳家権太楼氏は,柳家の太い柱である滑稽噺を軸に,人情噺まで幅広い芸風を開拓してきた。近年は池袋演芸場に於ける「日曜朝のおさらい会」を中心に演目を研磨鍛錬,その成果は毎年晩秋の上野・鈴本演芸場,年数回に及ぶ横浜にぎわい座での「柳家権太楼独演会」などに顕著である。得意演目とも言える「代書屋」「井戸の茶碗」「笠碁」「くしゃみ講釈」「火焔太鼓」なども,その時々に応じての臨機応変のマクラで,新たなる光を当てて口演。さらに,多くの演者が挑み続ける「芝浜」では,"権太楼の芝浜"とまで言われる境地を切り開いた。その実りある成果に対しての評価である。

大衆芸能

由紀 さおり
由紀 さおり

由紀 さおり

   

 由紀さおり氏が米国のオーケストラ「ピンク・マルティーニ」と組んで,1969年のデビュー曲「夜明けのスキャット」ほか同時期に内外でヒットした曲を歌ったアルバム「1969」が異例の世界的成功を収めたことは,久々に本邦音楽界に明るい話題を提供した。ほぼ全曲を日本語で歌ったアルバムが海外でも高く評価されたのは,高度に洗練された歌唱,40年に及ぶ歌手活動で培った豊かな表現力の賜物で,CD盤発売に合わせた欧米公演でも日本語の魅力を歌に托して賞賛を浴びるなど,「1969」は大衆歌謡の世界に新たな地平を切り開く顕著な成果となった。

芸術振興

大友 良英
大友 良英

Otomo Yoshihide & Christian Marclay DUO Nov 2011 NY photo:Kikuko Usuyama

Otomo Yoshihide & Christian Marclay DUO Nov 2011 NY
photo:Kikuko Usuyama

 大友良英氏は音楽の多様なあり方を提案し続けてきた。大震災を受けて,故郷福島で「ポジティブな未来像」を描き,福島から新たな文化を創造するために,地元の人々の協力と多彩な芸術家との連携で,「プロジェクトFUKUSHIMA!」を立ち上げ,さまざまな芸術活動を展開した。ありのままの福島が世界中の注目を集め,福島の人々に勇気を与えた。震災復興の芸術活動の中でも出色であり,福島の人々を力づける活動として,多大の寄与を為した。

評論等

鈴木 杜幾子
鈴木 杜幾子

鈴木 杜幾子

   

 鈴木杜幾子氏は著書「フランス革命の身体表象―ジェンダーからみた200年の遺産」において,フランス革命に関連する視覚文化を絵画からカリカチュアまで多岐にわたって取り上げ,それらの身体表現を中核として論じている。その身体論の展開において,氏は従来の古典的な「理想美」に代表される西欧の男性中心的な視座を相対化し,ひとりの日本女性としてのジェンダー論的な視座を確立している。その意味でフランス革命の文化史へのユニークな貢献と評価できる。

評論等

中村 哲郎
中村 哲郎

中村 哲郎

   

 「花とフォルムと転換する時代の歌舞伎評論」は,中村哲郎氏の1970年代から現在に及ぶ40年間の歌舞伎評論を集成したもので,質量ともに充実して分厚い。時代を同じうした歌右衛門を始めとする多彩な俳優の論は,切々たる愛憎に満ちて感動的であり,三島由紀夫や井伏鱒二,郡司正勝らに及ぶ人物評も深く重みがある。昭和歌舞伎の歴史と同化する氏は,歌舞伎芸の本質を「花」と「型(フォルム)」の合一に求めた。構成の妙もあって審査員間の圧倒的な支持を得ての受賞である。

メディア
芸術

佐藤 雅彦
佐藤 雅彦 撮影:岡田卓士
撮影:岡田卓士

factory of dream

「factory of dream」

 佐藤雅彦氏の作品群は,メディア芸術の新しい地平を,独自な視点と方法論で切り開くものである。テレビ番組「0655」,「2355」は,メディアクリエーターの視点で,テレビメディアの新しいあり方を追求している。それは,視聴者が生活のリズムを刻む為の役割としてのテレビ番組で,朝「0655」でその日一日の始まりのリズムを,そして「2355」ではその日の終わり,つまり睡眠へ誘うリズムを刻むテレビ番組という役割を見事に表現しえたものとなった。このユニークで高度な放送メディアでのメディアデザインとコンテンツ制作を行ったことが今回の評価となった。

文部科学大臣新人賞

部 門
受賞者
贈賞理由
演 劇

今井 朋彦
今井 朋彦

今井 朋彦

 研ぎ澄まされた演技には早くから注目されていた。今回はフランスの若手現代劇作家として,今最も注目されるダヴィッド・レスコの作品「破産した男」において,抽象性のある膨大な戯曲言語をイメージ豊かに伝えた。すべての所有物を奪われてゆく男を時にユーモラスな動きを交えて表現,それは「所有」観念への批評であり,都会に潜む人間の孤独をも滲ませた。知的人物を演じられる俳優として今後も期待される貴重な演技者である。

映 画

砂田 麻美
砂田 麻美

砂田 麻美

 

 ガン告知を受けた父の最後の日々を映像に写しとる「エンディングノート」で映画監督としてのスタートを切った砂田麻美氏は,肉親の死,という客観的になりにくい題材を真っ直ぐな視線でとらえ,普遍性を持つドキュメンタリー映画に仕立てあげた。そこにある冷静さと人間らしい暖かみには良き映画作家としての資質が垣間見られ,今後が期待される。これを第一歩として,これからも人間味を忘れず,映画に新たな明日を迎えるための力になることを目指していただきたい。

音 楽

河村 尚子
河村 尚子 撮影:寺澤有雅
撮影:寺澤有雅

河村 尚子 撮影:寺澤有雅

撮影:寺澤有雅

 河村尚子氏は近年希な大型新人として,デビュー以来,古典派・ロマン派のピアノ作品に感性豊かで瑞々しい演奏を行ってきた。演奏会,録音のどれもが完成度の高いものであったが,東京オペラシティリサイタルホールで行われた「B→C」では,そうした実績に溺れることなく,現代作品の新たなレパートリーに挑み,この分野でも他の追随を許さないほどのニュアンス豊かで美しい演奏を達成した。今後もさらなる高みに駆け上ることだろう。

舞 踊

湯川 麻美子
湯川 麻美子

湯川 麻美子 撮影:瀬戸秀美

デヴィッド・ビントレー振付「カルミナ・ブラーナ」運命の女神フォルトゥナ役
撮影:瀬戸秀美

新国立劇場開場時に同バレエ団入団以来,様々な作品で主要な役を任されてきた。高度な技術に加えて豊かな表現力を持つ,いわゆる「女優バレリーナ」。平成23年,同バレエ団プリンシパルに昇格。シーズン開幕のビントレー振付「パゴダの王子」世界初演で,妖艶な悪女,女王エピーヌを演じ,圧倒的な存在感を示すと同時に舞台全体を引き締めた。ドラマティックで洗練された演技ができる貴重な人材。さらなる活躍が期待される。

文 学

梅内 美華子
梅内 美華子

梅内 美華子

  

 同志社大学在学中から作歌し,馬場あき子氏に師事。平成3年に角川短歌賞を受賞し,みずみずしい恋愛の歌が注目された。「われよりもしずかに眠るその胸にテニスボールをころがしてみる」が話題となった歌人。新鮮な感受性が深まり,この第5歌集に至って,身体感覚の詩的表現が結実する。「コプラから猫へ杖へと擬態してニンゲンにもどるときを怖るる」は,ヨガの歌で,人間として存在する脅えをつかむ。「犬蓼も二歳の馬の鼻先も短くて惜しむ秋のはじまり」なども,郷土青森に関わる歌で,失われながら残りゆくものを愛惜してやまない。

美 術

小谷 元彦
小谷 元彦  写真:木奥恵三 photo by  Keizo Kioku
写真:木奥恵三 photo by Keizo Kioku

「Inferno」 写真:木奥恵三 photo by  Keizo Kioku

「Inferno」
写真:木奥恵三 photo by Keizo Kioku

 現代人がそこはかとなく感じている不安や怖れなどを,気配として捉え,顕在化するという主題に小谷元彦氏は取り組んでいる。平成12年に入って活発な表現活動を見せている同氏の創作の集大成ともいえる展覧会が国内の4美術館で平成22年から24年まで開催され,若い人々の間に強い共感の波動を生んだ。「幽体の知覚」と題されるこの展覧会で,氏は写真,映像など多様なメディアを駆使した作品のそれぞれから観る人が強いインパクトを受けることを期し,それに成功している。伝統的な彫刻を学んだ造形力を基礎に潜在意識や心理のひだに切り込んでいく力量と思索の方向に期待が寄せられる。

放 送

坂元 裕二
坂元 裕二

坂元 裕二

 

 現代を独創的に描くという作家性は貴重である。脚本家・坂元裕二氏はその独創を自然体で描き切れる作家である。「それでも,生きてゆく」では殺人事件の加害者の家族と被害者の家族が,男として,あるいは女としてどう交際できるのかという設定,「さよならぼくたちのようちえん」では,重い病の友に会うために親から離れ,許しもなくはるかなる旅に出かけてしまう,幼稚園の自立したこどもたちという設定を創り,その設定の中で,新しい意識を持つ現代的人間像を繊細に描ききっている。氏のせりふと心理描写は俳優を見事に動かしていく。

大衆芸能

サキタハヂメ
サキタハヂメ

サキタハヂメ

  

 西洋のこぎりに弦を当て,バイオリンにも劣らぬ世界を醸すサキタハヂメ氏のアルバム「SAW much in LOVE」は秀逸である。澄んだ音色とともに愛と癒し,温もりがメッセージとして伝わる。演奏会のための「のこぎり協奏曲」,テレビ番組「シャキーン!」「妖怪人間ベム」で担当する音楽に聴く,作曲・編曲・演奏家としての資質が花開いた。子供相手のライブでは“不思議”を演出し,大阪フィルハーモニー交響楽団,ロイヤルチェンバーオーケストラとのコラボレーションでは寄席芸の"際物"的イメージを払拭。のこぎりを一つの楽器に進化させ,認知させた功績も大きい。

芸術振興

甲斐 賢治
甲斐 賢治

せんだいメディアテークが、東日本大震災を受けて進めている「3がつ11にちをわすれないためにセンター」での活動風景

せんだいメディアテークが、東日本大震災を受けて進めている「3がつ11にちをわすれないためにセンター」での活動風景

 甲斐賢治氏は映像表現にまつわる非営利活動を通じ,メディア・アートや市民によるメディア活動など,メディア・リテラシーの向上に尽力してきた。平成22年4月,せんだいメディアテーク・企画活動支援室長に就任。平成23年3月11日の東日本大震災後間もなく,その経験を活かし,「3がつ11にちをわすれないためにセンター」を開設,「市民の手で震災からの復興を記録,発信し,保存する」事業に取り組んだことは,高く評価できる。

評論等

佐藤 守弘
佐藤 守弘

佐藤 守弘

 

 美術書から漏れた視覚文化を対象にし,近代的風景の出現を鮮やかに捉えた。たとえば泥絵は,人物も情感も季節も入れることなく「ハードとしての都市」を客観的にパノラマで描いている。浮世絵風景画を通じて「日本的」とされたものは,ことごとく崩れる。他にも京都や山村の見せ方など,「場所」が近代でどのように演出されたかを指摘しており,そのたびに「作られた日本」が浮かび上がってくる。著者はメディア状況や社会を同時に論じ,風景が見る側の文化しだいで変転することを証明した。大胆な仮説と精緻な論証を兼ね備えた優れた論考であり,今後の活躍を大いに期待できる。

メディア芸術

長井 龍雪
長井 龍雪

©ANOHANA PROJECT

©ANOHANA PROJECT

 テレビアニメ作品は劇場用作品とは制作費などが異なるために,単純に比較するとテレビアニメが不利になることが多い。しかし,「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」は「めんま」の成仏(別れ)に向けて様々な人間模様を積み上げていくことで,最終回に向けて徐々に盛り上げていくという,テレビアニメならではのエンターテインメントを完成させている。声優陣も「声優アワード」受賞者をならべ,高いレベルの演出を感じさせた。日本のアニメ界を背負う才能“みーつけた!”。

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