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平成24年12月号(No.531)

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特集

著作権法の一部を改正する法律について

長官官房著作権課

 第180回国会に提出された「著作権法の一部を改正する法律」が,平成24年6月20日に成立し,平成24年法律第43号として同月27日に公布されました。この法律は,「文化芸術立国」,「知的財産立国」の実現に向け,近年のデジタル化・ネットワーク化の進展に伴い,著作物等の利用態様が多様化しているとともに,著作物等の違法利用・違法流通が広がっていることから,著作物等の利用の円滑化を図りつつ,著作権等の適切な保護を図るため,必要な改正を行ったものです[※1]。
 主な改正内容は以下の5点であり,そのうち,[1]から[4]までについては,平成23年1月に取りまとめられた文化審議会著作権分科会報告書(以下,「平成23年報告書」といいます。)等を踏まえたものです。また,[5]については,国会の審議の過程において提出された修正案が可決,成立したものです。

  1. [1]いわゆる「写り込み」等に係る規定の整備
  2. [2]国立国会図書館による図書館資料の自動公衆送信等に係る規定の整備
  3. [3]公文書等の管理に関する法律(平成21年法律第66号。以下「公文書管理法」といいます。)等に基づく利用に係る規定の整備
  4. [4]著作権等の技術的保護手段に係る規定の整備
  5. [5]「違法ダウンロード」の刑事罰化に係る規定の整備

 このうち,[1]及び[2]については平成25年1月1日から,[3]から[5]については平成24年10月1日から施行し,さらに,[5]のいわゆる「違法ダウンロード」の刑事罰化に関して,国民に対する啓発等や関係事業者の措置等を定めた附則の規定については,公布の日(平成24年6月27日)から施行することとしています。これらの規定の概要は,次のとおりです[※2]。

1. いわゆる「写り込み」等に係る規定の整備[※3]

(1)付随対象著作物の利用(第30条の2)
 著作物の創作や利用に際しては,写真撮影やビデオ収録の際,背景に著作物であるキャラクターが写り込んでしまうといったことや,キャラクターが写り込んだ写真等をブログ等に掲載するといったことが日常的に行われています。こうした利用行為は,写り込んでしまった著作物(上記の例でいうキャラクター)の利用を目的とするのではなく,他の著作物(上記の例でいう撮影された写真の著作物等)の利用行為に付随して生ずるものにすぎません。そのため,利用の程度も軽微であり,通常,写り込んでしまった著作物の著作権者の利益を害するものではないと考えられます。しかし,こうした利用行為は,ブログ等といった情報発信行為の際には避けることのできないものの,既存の権利制限規定の適用を受けるものではなく,著作権侵害に問われるおそれもないとはいえません。
 そこで,こうした情報発信行為に伴って行われる著作物の公正な利用を阻害しないよう,権利制限の対象とし,明確化することとしました。具体的には,第30条の2を新設し,写真の撮影等の方法によって著作物を創作するにあたり,当該著作物(写真等著作物)に係る写真の撮影等の対象とする事物等から分離することが困難であるため付随して対象となる事物等に係る他の著作物(「付随対象著作物」)は,当該創作に伴って複製又は翻案することができることとしました(第1項)。また,複製又は翻案された付随対象著作物は,写真等著作物の利用に伴って利用することができることとしました(第2項)。

(2)検討の過程における利用(第30条の3)
 著作物の利用行為として,例えば,企業がキャラクター商品を企画するにあたり,そのキャラクターの著作権者の許諾を得る前に,企画書等にキャラクターを掲載するといった行為が日常的に行われています。こうした著作物の利用行為は,最終的には適法に行われる著作物の利用行為の準備として,内部資料等限られた用途・範囲において行われているものであり,著作物の通常の利用を妨げず,市場と競合することもありません。そのため,通常は著作権者の利益を害するものではないと考えられますが,既存の権利制限規定の適用を受けるものではなく,著作権侵害に問われるおそれもないとはいえません。法令遵守意識の高まりに伴い,こうした利用行為に対して委縮効果が生じ,ひいては適法な著作物の利用そのものに対する委縮につながりかねません。
 そこで,著作物の公正な利用を阻害しないよう,こうした利用行為を権利制限の対象とし,明確化することとしました。具体的には,第30条の3を新設し,著作権者の許諾を得て,又は裁定を受けて著作物を利用しようとする者は,これらの利用についての検討の過程における利用に供することを目的とする場合には,その必要と認められる限度において,当該著作物を利用することができることとしました。

(3)技術の開発又は実用化のための試験の用に供するための利用(第30条の4)
 録画機器などの著作物の利用を目的とした機器の開発などの際には著作物の利用が広範に行われており,例えば,企業が録画機器を開発するにあたっては,実際に音楽や映画等の著作物を素材として録音又は録画するといった利用行為が日常的に行われています。こうした著作物の利用行為は,「視る」,「聴く」等の視聴行為を通じて,当該著作物の本来的な価値を享受することを目的とするものではなく,また,試験の用に供するという限られた用途・範囲において行われるものにすぎず,市場と競合することもありません。そのため,通常は,著作権者の利益を害するものではないと考えられますが,既存の権利制限規定の適用を受けるものではなく,著作権侵害に問われるおそれもないとはいえません。著作物の利用に係る各種新規技術の開発・実用化の際にはこうした著作物の利用が頻繁に行われており,法令遵守意識の高まりに伴い,こうした著作物の利用に対する萎縮効果が生じ,新規技術の開発・実用化が躊躇されてしまうとの問題が生じかねません。
 そこで,各種技術の研究開発・実用化の際の著作物の利用について,著作物の公正な利用を阻害しないよう,権利制限の対象とし,明確化することとしました。具体的には,第30条の4を新設し,公表された著作物は,著作物の録音,録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合には,その必要と認められる限度において,利用することができることとしました。

(4)情報通信技術を利用した情報提供の準備に必要な情報処理のための利用(第47条の9)
 デジタル化・ネットワーク化の進展により,著作物の利用は飛躍的に多様化しています。例えば,クラウドサービス等の各種インターネットサービスにおいては,データの処理速度を速めるという目的で,サーバーにおいてデータを大量複製するといった利用行為が行われています。こうした著作物の利用行為は,「視る」,「聴く」等の視聴行為を通じて,当該著作物としての本来的な価値を享受することを目的とするものではありません。そのため,通常は,著作権者の利益を害するものではないと考えられますが,既存の権利制限規定の適用を受けるものではなく,著作権侵害に問われるおそれもないとはいえません。各種インターネットサービスの提供の際には,こうした著作物の利用行為が不可避的に生じるため,法令遵守意識の高まりに伴い,各種インターネットサービスの実施が躊躇されるという問題が生じます。
 このため,第47条の9を新設し,著作物は,情報通信の技術を利用する方法により情報提供する場合であって,当該提供を円滑かつ効率的に行うための準備に必要な電子計算機による情報処理を行うときは,その必要と認められる限度において,記録媒体への記録又は翻案を行うことができることとしました。

2. 国立国会図書館による図書館資料の自動公衆送信等に係る規定の整備

 デジタル化・ネットワーク化の進展により情報アクセスの利便性が向上する中,広く国民が出版物にアクセスできる環境を整備するためには,納本制度を有し,所蔵資料の電子化を積極的に進めている国立国会図書館の電子化資料を有効活用し,インターネットにより広く国民が利用できるようにすることが重要です。
 「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議」(平成22年11月文部科学副大臣設置)においては,デジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスの在り方に関する検討が行われました。その結果,平成23年12月の同検討会議報告では,電子化資料の活用方策として,著作者や出版者の利益に対する影響等を考慮しつつ,国立国会図書館の電子化資料の活用方策として,著作者や出版者の利益に対する影響等を考慮しつつ,国立国会図書館からの電子化資料の送信サービスに係る権利制限規定を設けることが適当であるとされました。
 これを受け,著作権分科会においてさらに検討を行った結果,平成24年1月,「国立国会図書館からの送信サービスに関する権利制限規定に係るまとめ」がとりまとめられ,[1]国立国会図書館からの送信先は第31条第1項の適用がある図書館等を参照した上で整理する必要があること,[2]対象出版物は電子書籍市場の形成や発展を阻害することのないよう,「絶版その他これに準ずる理由により入手することが困難な図書館資料」(同項第3号。以下「絶版等資料」といいます。)の考え方を参考にした上で一定範囲に限定すべきであること,[3]送信左記における絶版等資料の複製も一定範囲で認めるべきであること等とされました。
 このため,今回の改正では,第31条に第3項を新設し,国立国会図書館は,絶版等資料に係る著作物について,図書館等(同条第1項の「図書館等」をいう。以下同じ。)において公衆に提示することを目的とする場合には,記録媒体に記録された当該著作物の複製物を用いて自動公衆送信を行うことができることとしました(第3項前段)。また,当該図書館等においては,その営利を目的としない事業として,当該図書館等の利用者の求めに応じ,その調査研究の用に供するために,自動公衆送信される当該著作物の一部分の複製物を作成し,当該複製物を一人につき一部提供することができることとしました(第3項後段)。

3. 公文書管理法等に基づく利用に係る規定の整備

 公文書管理法は,行政機関及び独立行政法人等が保有する公文書等について,一定の条件の下での国立公文書館等への移管を義務づけています(同法第8条第1項,第11条第4項)。その上で,国立公文書館等に移管された歴史公文書等の取扱いについて,[1]適切な記録媒体により永久保存しなければならないこと(同法第15条第1項)や,[2]利用の請求があった場合には,一定の場合を除き,写しの交付等によってこれを利用させなければならないこと(同法第16条第1項)を,国立公文書館等の長に義務づけています。
 国立公文書館等に移管された歴史公文書等には,著作権が存続している著作物が含まれる可能性があり,国立公文書館等の長が上記各義務を履行するにあたり,著作権法上の権利と抵触することとなります。そのため,公文書管理法を円滑に運用するために必要な権利制限規定等の整備が必要であるとされていました。
 これを受け,著作権分科会において検討した結果,平成23年報告書では,公文書管理法及び公文書管理条例が円滑に運用されるよう,必要な権利制限規定等を置くことが適当とされました。
 このため,今回の改正では,国立公文書館等の長又は地方公文書館等の長は,公文書管理法の規定又は公文書管理条例の規定により歴史公文書等を永久保存することを目的とする場合には,必要と認められる限度において,当該歴史公文書等に係る著作物を複製することができることとしました(第42条の3第1項)。また,国立公文書館等の長又は地方公文書館等の長は,公文書管理法の規定又は公文書管理条例の規定により著作物を公衆に提供し,又は提示することを目的とする場合には,必要と認められる限度において,当該著作物を利用できることとしました(同条第2項)。
 併せて,著作者人格権についての調整規定として,著作者が行政機関,独立行政法人等,地方公共団体若しくは地方独立行政法人に提供した未公表著作物に係る歴史公文書等が国立公文書館等若しくは地方公文書館等に移管された場合,又は著作者が未公表著作物を国立公文書館等又は地方公文書館等に提供した場合,国立公文書館等の長又は地方公文書館等の長が当該著作物を公衆に提供し,又は提示することについて著作者は同意したものとみなすこととしました(第18条第3項)。また,国立公文書館等の長又は地方公文書館等の長が,一定の情報が記録されている未公表著作物を公衆に提供し,又は提示するときは,公表権は及ぼさないこととし(同条第4項),当該著作物につき既にその著作者が表示しているところに従って著作者名を表示するときは,氏名表示権を及ぼさないこととしました(第19条第4項第3号)。

4. 著作権等の技術的保護手段に係る規定の整備

 デジタル化・ネットワーク化の進展に伴い,P2Pソフトを用いたファイル交換により違法複製されたコンテンツがインターネット上にあふれるなど,著作物等の違法利用は常態化する一方で,違法利用全体の捕捉,摘発が現実的には難しく,権利の実効性の低下が強く指摘されています。こうした中,違法複製・違法流通による利用を防ぐためにも,著作物等のコンテンツの保護技術は著作権者等が対価を回収する上で必要不可欠な技術となっています。
 平成11年の著作権法の一部を改正する法律(平成11年法律第77号)により「技術的保護手段」の対象となった著作権保護技術は,VHS等に用いられている,いわゆる信号付加型の著作権保護技術[※4]であり,今日主流となっているDVD等に用いられている暗号型技術を対象としていません。このため,今回の改正では,「技術的保護手段」につき,現在主流となっている暗号型技術を新たに対象とするべく「技術的保護手段」の定義規定(第2条第1項第20号)の見直しを行いました。これにより,記録媒体用のCSS,AACS(Advanced Access Content System)といった技術,機器間伝送路用のDTCP(Digital Transmission Content Protection),HDCP(High-bandwidth Digital Content Protection)といった技術,放送用のB-CAS方式といった技術などが,新たに技術的保護手段に含まれることになります。
 また,技術的保護手段の対象に暗号型技術を加えることに伴い,「回避」の定義規定(第30条第1項第2号)を見直すとともに,関係する罰則規定(第120条の2第1号)についても所要の見直しを行いました。

5. 違法ダウンロードの刑事罰化に係る規定の整備

 平成21年の著作権の一部を改正する法律(平成21年法律第53号)に基づく改正により,著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を,その事実を知りながら行う場合には,私的使用目的であっても違法とされましたが,個人の行為の軽微性などを理由に刑事罰の対象にはされていませんでした。
 しかしながら,同改正によってもなおインターネット上における違法ファイルの流通による被害が深刻であり,刑事罰化により一定の抑止効果が期待できるとの理由によって,違法ダウンロードの刑事罰化を内容とする修正案が国会審議において提出され,可決,成立しました。
 本修正案により第119条第3項が新設され,私的使用の目的をもって,有償著作物等の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を,自らその事実を知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害した者に対し,2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し,又はこれを併科することとされました。
 「有償著作物等」とは,録音され,又は録画された著作物,実演,レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像であって,有償で公衆に提供され,又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限られます。)をいいます。
 また,「その事実」とは,「有償著作物等」であること及び「著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信」であることを指し,「その事実を知りながら」という要件を満たさない場合には,著作権又は著作隣接権の侵害に問われることはありません。
 なお,第119条第3項は親告罪とされており,権利者からの告訴がなければ公訴は提起されません(第123条第1項)。
 本項のほか,違法ダウンロードの刑事罰化に関しては,附則が設けられており,[1]国民に対する啓発等(改正法附則第7条),[2]関係事業者の措置(改正法附則第8条),[3]運用上の配慮(改正法附則第9条)等が規定されています。

 文化庁では,改正法附則第7条の規定等を踏まえ,様々な機会を通じて違法ダウンロードの刑事罰化に係る普及啓発に努めているところであり,例えば,「違法ダウンロードの刑事罰化についてのQ&A」の作成,周知や,政府公報をはじめとしたインターネット,雑誌などの各種媒体を活用した周知,広報に取り組んでいます[※5]。

※1 改正法の条文等の詳細については,平成24年通常国会 著作権法改正についてをご参照下さい。
※2 1〜3の各規定については,著作隣接権の準用規定(第102条)により,著作物のみならず,著作隣接権の目的となっている実演,レコード,放送又は有線放送についても準用することとしています。また,3のうち,第19条第4項第3号の著作者の氏名表示権に係る適用除外規定と同様に,実演家の氏名表示権についても同様に調整規定を設けています(第90条の2第4項第3号)。
※3 詳細は,いわゆる「写り込み」等に係る規定の整備について(解説資料)をご参照下さい。
※4 信号付加型の著作権保護技術とは,著作物等の利用に際しこれに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物等とともに記録媒体に記録し,又は送信する方式によるものをいい,具体的には,SCMS(Serial Copy Management System),CGMS(Copy Generation Management System),擬似シンクパルス方式(マクロビジョン)が該当する。
※5 詳細は,平成24年10月1日施行 違法ダウンロードの刑事罰化についてをご参照下さい。

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