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文化庁月報
平成25年7月号(No.538)
連載 「祭り歳時記 伝承を支える人々」
湯津上のダイモジ(大捻縄)引について
記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財「湯津上のダイモジ(大捻縄)引」
選択年月日:平成5年11月26日
所在都道府県:栃木県

湯津上の大捻縄引
湯津上のダイモジ(大捻縄)引は,栃木県那須郡湯津上村(現大田原市)大字佐良土の仲宿・田宿・古宿の3地区に伝承されてきた綱引き行事であり,昭和41年(1966)2月15日付で湯津上村指定文化財となり,平成5年(1993)11月26日付にて記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財となった。民俗学上,盆綱引きと呼ばれる習俗の1つで,栃木県内に現存するものとしては唯一である。
実施日は毎年8月14日で,前記3地区(宿)が順番で当番をつとめ,佐良土の老若男女がこぞって参加することで行われてきた。当日は早朝から,当番となる宿において準備が始まり,事前に地域の農家から集められた
当日の夜,佐良土の住宅街の中心を通る国道294号線上において,村内外から集まる大勢の人々の見守るなか,当番宿とほかの2つの宿とで対抗して,この大縄を引き合うこととなる。この綱引きに勝利すれば,その地区(宿)は豊作と無病息災が約束されるとして,大縄を引き合う姿はまさに真剣そのものであった。大捻縄引に使用された大縄は,8月27日に行われる諏訪神社(佐良土の鎮守)の例大祭に奉納され,村相撲の土俵として活用されることとなる。
大捻縄引の起源については定かではないが,永正17年(1520)8月,那須資房と白河義永が
ただし,この行事は,大縄づくりの担い手や資金不足等の問題により,たびたび休止状態となっている。平成13年(2001),湯津上商工会主催による栃木県立なかがわ水遊園内での実施以来,5年ぶりの開催となったのは,平成18年7月29日であり,場所は同園内であった(同商工会主催)。このときは,若者たちに伝統文化を体感してもらうという趣旨のもと,恒例行事である「
【参考文献】
○『那須文化研究』第20号(那須文化研究会,2006年)所収「那須地区通信(湯津上地区)「大捻縄引き」が5年ぶりに復活」(長谷川操氏執筆分)
○『大田原市の文化財』(大田原市教育委員会編集・発行,2012年)
【付記】本稿執筆にあたり長谷川操氏より御教示を賜った。ここに記して御礼申し上げる。