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文化庁月報
平成25年9月号(No.540)

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連載 「鑑 文化芸術へのいざない」

待望の通し狂言
国立劇場9月文楽公演 通し狂言『伊賀越道中双六』別ウィンドウが開きます

国立劇場制作部伝統芸能課 神田竜浩

一富士二鷹三茄子

 皆さんは「一富士二鷹三茄子」という言葉をご存知でしょうか?これは初夢に見ると縁起が良いものを表わしたことわざとして知られていますが,これには「日本(にほん)三大(さんだい)仇討(あだうち)」のことを言っているという異説があります。この「日本三大仇討」とは,曽我兄弟の仇討,赤穂浪士の討入り,伊賀上野の敵討という有名な三つの仇討事件のことで,一富士は曽我兄弟,二鷹は赤穂浪士,三茄子は荒木又右衛門(あらきまたえもん)のことを指しているのだと言うのです。
 また,この異説をさらにわかりやすく説明したものに「一に富士,二に鷹の羽の打ち違い,三に上野の花ぞ咲かせる」や「一に富士,二に鷹の羽の打ち違い,三に名を成す伊賀の仇討(あだう)ち」という言葉もあります。一富士は曽我兄弟が仇を討った“富士の裾野”を,二鷹は赤穂浪士の主君・浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)の“丸に違い鷹の羽の家紋”を,三は“伊賀上野鍵屋の辻の敵討”で名をあげた荒木又右衛門のことで,「名を成す」は成すと茄子の掛け言葉になっていて,一富士二鷹三茄子となるわけです。

伊賀上野の敵討と『伊賀(いが)(ごえ)道中(どうちゅう)双六(すごろく)

沼津の段

沼津の段

 この伊賀上野の仇討とは次のような事件です。寛永7年(1630)に備前岡山藩士・河合又五郎(かわいまたごろう)が同藩士・渡辺源太夫(わたなべげんだゆう)を殺害する事件が起こります。岡山藩は源太夫の兄・渡辺(わたなべ)数馬(かずま)に又五郎を討ち果たすように命じます。又五郎は江戸の旗本・安藤(あんどう)()()衛門(えもん)のもとに身を隠したため,又五郎と数馬の対決という岡山藩の問題に留まらず,旗本と大名との対立に発展し,それぞれの体面を懸けた争いとなります。しかし,数馬が姉婿の荒木又右衛門の助太刀により,寛永11年(1634)に伊賀上野(現在の三重県伊賀市)の鍵屋の辻で又五郎一行を討ち果たします。
 この事件は,後に実録物と呼ばれる読み物や講釈などにより,剣豪・荒木又右衛門の三十六人斬りとして有名になりました。先ほどの「一に富士…」という三大仇討を表した言葉も講釈師が広めたものです。その後,この実録物や講釈から,伊賀上野の敵討を題材にした芝居も生まれます。その代表作が国立劇場9月文楽公演で取り上げる『伊賀越道中双六』です。

名作『伊賀越道中双六』

 『伊賀越道中双六』は,天明3年(1783)に,大阪で初演された作品で,当時は実在の人物をそのまま芝居に登場させることは禁止されていたため,時代を室町時代に置き換え,岡山藩を鎌倉の上杉家という設定で,登場人物も荒木又右衛門を唐木政右衛門(からきまさえもん),渡辺数馬を和田(わだ)志津(しづ)(),河合又五郎を沢井股五郎(さわいまたごろう)とされています。題名の由来にもなっているように,鎌倉を振り出しに,道中双六さながらに東海道を西へ上っていくように物語が展開します。今回の上演では,沢井股五郎が志津馬の父・和田(わだ)行家(ゆきえ)を殺す物語の発端に当たる「和田行家屋敷の段」から,伊賀上野で政右衛門と志津馬が股五郎を討ち果たす「伊賀上野敵討の段」までを,平成10年以来15年ぶりに通してご覧いただきます。はからずも敵同士になってしまった親子の再会と別れを描き,単独でも上演されることの多い「沼津の段」(今回は「沼津里の段」から「千本松原の段」として上演します。)と,政右衛門と剣術の師・山田(やまだ)(こう)兵衛(べえ)との十数年ぶりの再会と悲劇を描いた「岡崎の段」が全編の山場で,伊賀上野で本懐を遂げるまでの唐木政右衛門の苦悩と和田志津馬の苦難を中心に,敵討に巻き込まれた夫婦,親子,兄妹などさまざまな人たちの別れや死が描かれます。国立劇場9月文楽公演にご期待ください。

11月歌舞伎公演『伊賀越道中双六』もお楽しみに

竹藪の段

竹藪の段

 国立劇場では11月歌舞伎公演でも『伊賀越道中双六』を上演します(11月3日から26日まで)。文楽と歌舞伎では同じ作品をどのように描いているのか,この機会に見比べて,文楽と歌舞伎それぞれの新たな魅力を再発見する絶好の機会となります。

 11月歌舞伎公演の詳細はこちらをご覧ください。
http://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_l/2013/11121.html?lan=j別ウィンドウが開きます

国立劇場9月文楽公演 通し狂言『伊賀越道中双六』

〒102-8656 東京都千代田区隼町4-1

お問い合わせ
国立劇場チケットセンター(午前10時〜午後6時)
0570-07-9900,03-3230-3000[PHS・IP電話]
交通
東京メトロ半蔵門線・半蔵門駅より徒歩5分,半蔵門線・有楽町線・南北線永田町駅より徒歩8分
都営バス都03(晴海埠頭-四谷駅)三宅坂下車徒歩1分
公演日時
9月7日(土)〜23日(月・祝) [第1部]11時開演/[第2部]4時30分開演
ご観覧料
一般=1等6,500円,2等5,200円,3等1,500円
学生=1等4,600円,2等2,600円,3等1,100円
※3等席は座席数7席のため,お一人様1ステージ1枚に限らせていただきます。文楽廻し(床)により舞台の一部が見えにくくなりますのでご了承ください。
※障害者の方は2割引です。詳細はチケットセンターまでお問い合わせください。
※車椅子用スペースがございます。ご予約時にお問い合わせください。
ホームページ
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