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文化庁月報
平成25年9月号(No.540)

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日本の宗務行政

解説  宗教法人制度の概要と宗務行政の現状

文化庁文化部宗務課

1 宗教法人制度の概要

(1)宗教法人制度の意義

 宗教法人制度とは,宗教団体に法人格を与え,宗教団体が自由で自主的な活動を行うための財産や団体組織の管理の基礎を確保するための制度です。
 もともと,憲法で保障されているとおり,個人が宗教を信仰したり宗教活動を行うことは自由ですし,団体を作って宗教活動を行うことも自由です。
 また,団体で宗教活動を行う際に法人格を取得するかどうかも自由です。当然,法人格を持たない団体(任意団体)のままでも,宗教活動を行うことができます。
 ただし,任意団体のままでは,法律上の権利義務の主体となれないため,不便に感じる場合もあり得ます。
 例えば,任意団体が礼拝施設を所有し,これを登記する場合に,任意団体の名義での登記はできません。この場合には,代表者個人の名義で登記をすることになります。
 一方,法人格を持つ場合には,法人名義での不動産登記ができるので,財産の管理や取引が,安全で容易になります。また,宗教法人になると,礼拝用の建物やその敷地であることの登記をすることができ,差押禁止が保障されてもいます。
 このように,「宗教団体が,礼拝の施設その他の財産を所有し,これを維持運用し,その他その目的達成のための業務及び事業を運営することに資するため,宗教団体に法律上の能力を与える」(宗教法人法(昭和26年法律第126号)第1条第1項)のが,宗教法人制度です。
 宗教団体が宗教法人になるための要件・手続や,宗教法人としての責務などは,宗教法人法に定められています。

(2)宗教法人になるには

 宗教団体が宗教法人になるには,宗教法人法上の要件を満たした「宗教団体」でなければならず,また,宗教法人法の定めに沿った設立の手続を行う必要があります。
 具体的には,以下のとおりです。

<宗教法人になれる「宗教団体」の要件>(宗教法人法第2条)
 宗教法人になれる「宗教団体」は,宗教の教義をひろめ,儀式行事を行い,信者を教化育成することを主たる目的とした団体でなければなりません。
 その上で,礼拝の施設を備えている団体であるか,又は,その団体を包括する団体でなければなりません。

<宗教法人の設立の手続>(宗教法人法第12条〜第15条等)
 上記の要件を満たした宗教団体が,宗教法人になるためには,以下のア〜エの手続を経る必要があります。

ア 規則の制定
 宗教法人を設立するためには,まず,その宗教法人の運営のための根本的なルールとなる「規則」を作成する必要があります。

イ 設立の公告
 信者を始めとする利害関係人に対して,規則の案の要旨を示し,設立しようとする旨を公告しなければなりません。

ウ 所轄庁の認証
 宗教法人法は,認証制度を採用しています。この制度は,宗教団体が宗教法人になるためには,申請をして,「所轄庁」による「認証」を受けなければならないというものです。
 「所轄庁」は,原則として,その法人の主たる事務所の所在地の都道府県知事がなります。ただし,他の都道府県に境内建物を備える宗教法人や,その法人を包括する宗教法人,他の都道府県にある宗教法人を包括する宗教法人については,文部科学大臣が所轄庁となります。
 また,「認証」とは,宗教法人法の要件が備えられていること(宗教法人法の定める宗教団体に該当すること,規則・手続が法令に適合していること等)を,公の権威をもって確認するというものです。宗教法人法の要件を備えていない者が宗教法人になることのないように,この仕組みが採用されています。
 なお,宗教法人の設立後に規則を変更したり,合併や解散をすることがあれば,その際にも,所轄庁の認証が必要となります。

エ 設立の登記
 所轄庁から認証書の交付を受けると,登記所に申請をして,設立の登記をしなければなりません。

 以上のア〜エの手続等を経て,設立の登記が完了すると,その宗教団体は宗教法人となります。
 なお,宗教法人になると,当然のことながら,その法人は宗教法人法の適用を受け,これを遵守する義務が生じます。

(3)所轄庁の権限

 宗教法人法には,宗教法人の公共性を維持しつつ,その一方で,信教の自由を妨げないよう,法人の自主性を極力尊重するという特徴があります。
 そのため,認証においても,所轄庁は,法の要件が備えられていると認めたときは,裁量の余地なく,認証しなければなりません。
 ただし,認証は機械的に行われるものではなく,所轄庁は,審査に当たって事実の存否に理由ある疑いを持つときには,その疑いを解明するための調査を行います。
 また,認証のほかに所轄庁に与えられている権限として,認証後1年以内の認証の取消し(宗教法人法第80条),公益事業以外の事業の停止命令(同法第79条),裁判所への解散命令の請求(同法第81条),報告徴収・質問権(同法第78条の2)等があります。これらの権限には厳格な要件があり,宗教法人審議会に諮問をしてその意見を聞く必要があるなど,慎重さが求められています。
 なお,所轄庁の権限は,これらの法定事項に限られています。信教の自由や政教分離といった憲法上の要請があるため,所轄庁には,宗教法人の業務や財務に関する包括的な監督権限はありませんし,宗教上の事項については,いかなる形においても調停や干渉をすることはできません。

2 宗務行政の現状

 文化庁では,文部科学大臣所轄の法人についての所轄庁としての業務を行ったり,都道府県に対する技術的な指導・助言を行っています。
 また,そのほかにも,宗教法人制度の適正な執行のために,様々な取組を実施しています。例えば,以下の取組を行っています。

文化庁・各都道府県共催「都道府県宗教法人事務担当者研修会」の模様

文化庁・各都道府県共催「都道府県宗教法人事務担当者研修会」の模様

(1)研修会等の実施
 全国の宗教法人等の法人事務担当者を対象として,法人意識の徹底,事務処理能力の向上等,宗教法人の管理運営の適正化に資するための「宗教法人実務研修会」を実施しています。
 そのほかにも,都道府県の担当者を対象とした研修会等も実施しています。

(2)調査研究等の実施
 我が国における宗教の動向等を把握するため,宗教に関する統計資料の収集・作成・提供や,宗教事情の調査等を行っています。

(3)不活動宗教法人対策の実施
 代表役員もその代務者もいなかったり,礼拝施設が失われているなどして,活動が行われていないと推定されている宗教法人が存在します。このような法人を放置すると,その法人格が売買の対象とされ,脱税や財産隠しに悪用されるなど,様々な問題が生じる可能性があります。
 そこで,文化庁では,包括宗教法人や都道府県等の協力を得て,対策を実施しています。
 具体的には,包括宗教法人や都道府県の担当者を対象とした対策会議を実施したり,参考資料の作成等を行っています。また,平成23年度からは,都道府県にモデル事業を実施してもらい,効果的なノウハウの収集・共有をするという「不活動宗教法人対策推進事業」を実施しています。

(4)東日本大震災への対応
 平成23年3月11日に発生した東日本大震災により,多くの宗教法人も被害を受けました。この被害の大きさに鑑み,被災した宗教法人の建物等の復旧のための寄附金が,指定寄附金の対象とされました。
 指定寄附金の指定を受けると,寄附者が税金の優遇措置を受けることができるため,寄附金を集めやすくなり,復旧がしやすくなります。
 文化庁・各都道府県では,この制度の運用のための事務(指定寄附金として適切かどうかの確認をしたり,制度を利用している宗教法人からの報告を受けるなど)を行っています。

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