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文化庁月報
平成25年10月号(No.541)

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連載 「伝建地区を見守る人々 伝建歳時記」

京都市産寧坂伝統的建造物群保存地区
〜京都の歴史的な町並みを守るために〜

京都市都市計画局都市景観部景観政策課建造物担当係長 浅田 毅

 京都市では,昭和47年「京都市市街地景観条例」を制定し,京都の特色ある歴史的な町並みの整備を,特別保全修景地区という独自制度でおこなってきました。昭和50年の文化財保護法改正で,伝統的建造物群保存地区制度が創設され,それまで,特別保全修景地区に指定していた産寧坂地区(昭和51年地区指定)と祇園新橋地区(昭和51年地区指定)をこの伝統的建造物群保存地区(伝建地区)に指定して,更に,嵯峨鳥居本地区(昭和54年地区指定)と上賀茂地区(昭和63年地区指定)を指定に加えました。平成7年12月には,産寧坂地区に,地元の皆さんから町並み保存の要望が強かった石塀小路地区を加え,その指定地域を拡大しました。
今回は,その内の産寧坂地区について,歴史的な町並みを守るための取組等を紹介いたします。

目次

  1. 1 産寧坂伝統的建造物群保存地区
  2. 2 近年の問題点や課題
  3. 3 地域景観づくり協議会制度
  4. 4 京都の歴史的な町並みを守るために

産寧坂伝統的建造物群保存地区

産寧坂の町並み

産寧坂の町並み

 東山山麓に位置する当地区一帯は,京都の東郊として早くから開けたところで,平安京以前からの歴史が重畳し,今も多くの歴史的遺産を有しています。
 当地区は,当初,清水寺,法観寺,祇園社などの門前町としてはじまったが,江戸時代中期以降は,これらの社寺を巡る道に沿って市街地が形成され,さらに明治・大正時代の市街地の拡大をみて,今日に至っています。
 なお,現在の道に沿って建ち並ぶ茶店や伝統工芸品を商う店は,近世の名所巡りの系譜をひくものとみることができます。
 また,石塀小路一帯は,明治時代末期から大正時代初期にかけて,貸家経営を目的とする宅地開発が行われて,今日に至っています。当地区の景観は,路地(石塀小路)に特徴があり,連続する石畳や石塀,石垣は,当初の様式を保つ和風住宅群と共に大正時代初期の町並みの面影をよく残し,京都市内でも独特の空間となっています。

近年の問題点や課題

観光地化が進む産寧坂地区

観光地化が進む産寧坂地区

 この産寧坂地区では,近年人口が減少し,高齢化が進んでいます。京都市全体でもその傾向を示していますが,そのことは,空き家の増加や店舗化傾向と軌を一にしています。当地区は,もともと商住混合地域でありましたが,居住者が他所へ移り住み,空き家になる又は転売されて店舗になるという構図が定着しつつあります。その結果,観光客は増加し,住民が減少して,観光地化がますます進んでいます。
 また,観光地化が進むことにより,店舗の入れ替わりが激しくなり,それに伴い建物の改装が頻繁に行われます。時には,許可を受けずに外観の意匠変更が行われ,違反指導により元の外観に是正する事態も発生しました。
 このような事態を未然に防ぐためにも,地域住民と行政とのより一層の連携が求められています。

地域景観づくり協議会制度

二年坂の町並み

二年坂の町並み

 地域の景観を保全・創出するため,地域住民が主体となって景観づくりに取り組まれる組織を京都市が認定し,当該地域で建築活動等を行う建築主等と,より良い景観形成に向けて意見交換をしていただく制度が,平成23年4月1日からスタートしています。
 景観は,それぞれの地域ごとの歴史,風土,文化や伝統,一人ひとりの暮らしや経済活動,技術の進歩や法律等の制度などが背景となってつくられるものです。
 まちの景観の魅力を楽しみ,維持・継承・改善するために,地域の方々が主体的に行う様々な活動は,その地域ならではのいきいきとした景観として表れてくるとともに,そのようにしてつくられた良好な景観が人々の地域に対する愛着を育みます。  地域景観づくり協議会は,地域の方々が思いや方向性を共有し,更には,建築主や事業者等と一緒になって地域の景観づくりを進めていくためのきっかけとなることを目的にしています。
 現在,京都市の5つの地域で地域組織を地域景観づくり協議会に認定しており,産寧坂地区においても一念坂,二年坂付近の地域組織が平成25年4月15日に認定されています。これらの地域では,地域の景観づくりの方針や配慮事項等を「地域景観づくり計画書」としてまとめ,京都市の認定を受けているため,景観に関する手続の前に地域の協議会との意見交換が必要となります。

京都の歴史的な町並みを守るために

八坂の塔と石畳

八坂の塔と石畳

 京都は,早くから,地域コミュニティの力や町衆の協調的な活動によって,優れた景観を創出し,継承・発展させてきました。今後も,地域住民をはじめとするあらゆる主体が,京都の歴史的な町並みを守り,育て,創り,活かすことについて意識を高め,参加・協力することが重要です。
 したがって,京都の歴史的な町並み保全に当たっては,“みんなの共有財産”としての景観に対する意識の醸成やコミュニティにおける価値観の共有を促進するとともに,町並み保全に関する活動への参加・協力により,市民,事業者,行政,専門家,NPO等が,京都の景観の価値を改めて認識し,それぞれの役割を踏まえ,一体となって取り組む必要があります。
 先に述べた取組は,一人一人の気づきから始まり,そして守り,また生み出す行動へとその輪を広げていくことにより,良好なものへと育ち,ひいては都市全体の優れた景観やまちづくりにつながっていきます。これからも,地域住民と行政が密に連携し,京都の歴史的な町並みを守る取組を推進してまいります。

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