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平成25年12月号(No.543)

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12月号特集

東映アニメーション株式会社 インタビュー

長官官房著作権課

インタビューをお受けいただきまして,誠にありがとうございます。早速ですが,貴社がどのような事業を手掛けていらっしゃるのかを御紹介ください。

<東映アニメーション株式会社取締役・経営戦略本部副本部長兼海外戦略推進部長 木下 浩之 氏>

<東映アニメーション株式会社取締役・経営戦略本部副本部長兼海外戦略推進部長 木下 浩之 氏>

木下:私ども東映アニメーション株式会社は,創業後60年近く経ちますが,一貫してアニメーションを製作し,その映像著作権をベースとしたビジネス展開をしております。
 著作権ビジネスにつきましては,簡単に言えば,膨大なアニメーション製作費を回収するためのビジネスということになります。例えばテレビで放映される1話約30分のアニメーションの製作費は,作品にもよりますが大体1,500万円程度となり,これを当社では毎年250本程度製作します。そして,この製作費の一部をまずはテレビ放映権の販売という形で回収します。これを私どもでは作品の一次利用と呼んでおり,ここで回収しきれなかった分を,次に続く二次利用という形で回収し,更には利益を上げていきます。
 二次利用の方法としては,アニメキャラクター等の商品化権許諾やテレビの再放送,DVD等の販売,ネット配信など多岐にわたり,またこうした事業を海外でも展開しております。時代を反映してここ数年はソーシャルゲームの商品化も増えてきています。また,10年ほど前から,当社では社外の事業者にライセンスするだけではなく,自社事業としてDVDの発売元となったり,関連商品の企画・販売やイベントに力を入れてきております。

他社にライセンスを提供する形の版権ビジネスだけでなく,自社で事業開発等も行っているということですね。

木下:そうです。例えばイベント等でのキャラクターの起用については,イベント化権の許諾という形で版権ビジネスを行うことも考えられるのですが,私どもでは古くから専任部署を設けてイベント事業を直接展開しております。
 それは,イベントでは実際の視聴者と接点を持つことによるプロモーション効果もあるからです。イベントを自分たちで展開することで,お客さんの反応を次のイベントにフィードバックして作品をさらに盛り上げたり,劇場公開に合わせていろいろなイベントを展開したりすることができます。こうした総合的な取組により,ファンの皆様とのリーチを深めることができるようになるのです。
 近年の事例を申し上げますと,単発のイベントだけではなくて,ドームツアーやアリーナツアーという形で,全国津々浦々でイベントを展開してまいりました。そこではファンの皆様に,実際に作品の世界観に触れることでとても喜んでいただいております。また,会場ならではの限定グッズも企画・開発して,イベントの思い出として購入していただいております。
 このように,専任部署も設けて事業として展開することにより,イベント一つとっても放送やその他事業とのコラボレーションを通じ,作品を総合的にプロモーションしていくことができます。
 また,こうした展開は海外でも弊社の現地法人と連携して展開しておりまして,日本のアニメの人気が高い台湾では,日本のテーマパークで実施したイベントを2年間にわたり展開して,とても多くの方に来ていただき大成功を収めました。

『ONE PIECE メモリアルログ in 九族文化村』(C) 尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション

『ONE PIECE メモリアルログ in 九族文化村』
(C) 尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション

版権事業,いわゆるライセンス事業は,自社が直接企画や販売等に携わるわけではないため,作品やキャラクターのイメージを保つ上で難しい点があると聞いています。そうした難しさは,やはり同様なのでしょうか。

木下:おっしゃるとおり,ライセンス業務に関しては,作品やキャラクターのイメージを保つことが重要であり,かつ,とても難しい問題となっております。そのため,私どもは版権事業部という専門部署を設けてライセンス業務を統括し,また社内にデザインルームを設けて監修体制も十分に整えることでこうした課題を解決しております。また,当社がライセンスさせていただいているお取引先は,長い取引関係があり,キャラクタービジネスにも精通されていらっしゃるので,作品の世界観やキャラクターイメージを守りながら展開することができております。

長年の歴史に裏付けられた二次利用のプロフェッショナルということですね。

木下:そう言っていただけますとうれしいですね。確かに,長年の歴史を背景に,テレビ局様や出版社様などと,アニメ展開や二次利用に関するパートナーシップをうまく展開させてきていただいております。
 原作がある作品については,私どもは原作元となる出版社様などからアニメ化権とビジネスを展開していく権利をお預かりして,アニメを製作し,先ほど申し上げましたビジネスを展開していきます。
 テレビ放映に関しましては,メインのキャラクター商品を展開していただくメーカー様などに番組のスポンサーをしていただき,作品を一緒になって盛り上げていただくなど,原作者様,テレビ局様,メーカー様,そして私どもプロダクションと,アニメ製作・版権ビジネス展開に関するスキームがうまくいって,これまで来ているのかなと思います。東映アニメーションが現在までアニメ企業最大手の1社としてやってこられましたのは,こうしたパートナーとの信頼関係があってこそだと思っており,これからも信頼を続けていただけるように頑張っていきたいと思っております。

原作者の方々にとっても,自分の作品がどのように展開されていくのか,その際自分のイメージと違った形で作品が展開されてしまうのではないか,という点は重大な関心事なのではないかと思います。

木下:そうですね。私どもでは,その点こそ一番大事にしていかなくてはならないと考えて,企画部門と製作部門が作品作りをしております。また,ビジネス展開につきましても,先ほど申し上げましたとおり版権事業部をはじめとして社内の体制を整えております。東映アニメーションを信頼していただいているからこそ原作をお預かりさせていただいていると思っております。その期待を裏切ってしまうと,東映アニメーションとしての根幹が成り立たないと思っています。

ありがとうございます。少し話は変わりますが,昨今では音楽ビジネスについて,「ライブの力」が強まっているという話を聞いたことがあります。多方面にわたって作品の二次利用を手がけていらっしゃる東映アニメーションさんですが,やはりアニメーションの分野でもライブイベントの存在感は強まってきているとお考えでしょうか。

木下:そうですね。実際のイベント事業の展開の中で確実に感じております。AKB48の盛り上がりに象徴されるような,実際見て参加して,という形の展開がお客さんに受け入れられてきたという時代背景などもあるかと思います。「ワンピース」では,先ほど申し上げましたドームツアーやアリーナツアーの人気に加えて,テーマーパークで行っているショーイベント等でも毎回満席でお客さんに満足していただいておりますし,「プリキュア」のミュージカルショーは,北海道から沖縄まで全国各地で公演されて多くの子供たちに喜んでいただいております。また,最近では海外でもライブの力を感じますね。例えば東南アジア諸国等では,残念ながら海賊版がかなり横行している地域もありますが,そういう所でも「本物を見る」マーケットが拡大しており,多くの人がその場で楽しみ,実際にチケット代やグッズの購入など「本物」に多くのお金を支出しています。

「ドキドキ!プリキュア」
『ドキドキ!プリキュア ミュージカルショー』
(C)ABC・東映アニメーション

そうした二次利用の核となるアニメーションですが,その製作についても教えてください。

木下:長編アニメーションとなると作品ごとに異なりますので,一般的なテレビシリーズについてお話ししますと,1作品について5か月から6か月の製作期間で,大体100人強のスタッフが携わることになります。
 私どもは現在毎週放送のテレビシリーズ作品を6番組製作中で,一つの作品について六〜八つの班が組まれています。それぞれの班が同時並行に作業を行い,毎週1話ずつ放映しております。
 こうした作業を自社のほか,40ほどの国内の制作協力プロダクションで行っていますが,動画や彩色といった製作工程の大部分はフィリピンにある現地法人の東映アニメーションフィリピンで行われています。
 昔はセルや絵の具を日本から持ち込んでフィリピンで作業して,それを日本に持ってきて,という形だったのですが,現在は現地と光ケーブルで結んでおり,基本的にはテレビ会議等をしながらデータをケーブルを通してやりとりをするという形で製作しております。
 こうした取組は90年代後半から進めてまいりました。アニメ製作におけるデジタル化・ネットワーク化の重要性を認識して,アニメ製作会社の中でもいち早くデジタル製作環境・製作システムを作り上げたのが当社でございます。

フィリピン・マニラにある製作子会社のTOEI ANIMATION PHILS., INC.

海を越えてのアニメ作りということですね。

木下:そうですね。実は,当社がフィリピンでの製作体制を作り始めたのがちょうどフィリピン革命の頃でして,革命の影響で日本の企業がどんどん撤退していく中,当社はフィリピンで一貫してアニメ製作を行ってきました。そのため,現在でもフィリピンにおけるアニメーションの分野では,東映アニメーションは確固たる地位を保っています。

製作体制の海外展開も古くから進めていらっしゃったということですが,作品自体の海外展開の歴史はいかがでしょうか。

木下:当社の海外展開は70年代にまで遡ります。現在,世界各地に多くのアニメーションプロダクションがありますが,海外でそうしたプロダクションの方々とお話をすると,当社の作品を見て育ったという方がとても多く,東映アニメーションが現在のグローバルアニメ市場に果たしてきた貢献も大きいのかな,と思います。
 もっとも,海外展開における権利関係については,いろいろな問題が起きて,それに対処していくという形でやってきたところもあります。組織的にしっかりと権利ビジネスが展開できるようになってきたのは,2000年代に入ってきてからだと思います。日本の権利ビジネスで培ってきた経験と,現地で出てくる問題点への対処法の蓄積をいかして,現在いろいろな問題に対応しております。
 例えば,現地にローカライズする際には,どうしたら自分たちの権利をおさえていけるか,ということを考えて展開しています。国内での二次利用展開と同様,海外においても,現地法人や現地スタッフのように,現地で作品の展開をコントロールする人間がいることが重要になってきます。

ローカライズということでいえば,企画段階から,日本は当然として,この国でも売りたいという観点で作品を製作なさることはありますか。

木下:企画の面で申し上げますと,海外合作の場合を除いて,基本的には日本でのヒットをまず第一に考えています。また,ローカライズに関して申し上げますと,世界中の子供たちに見ていただくために,現地に合わせた吹き替えを行っております。ただ,最近は熱心なファンを中心に,日本で放送されたまま「生の日本語」でいち早く見たいという方々も増えてきております。そういった方々には,字幕でのニアサイマル配信で対応しております。

作品を海外展開する際,貴社から積極的に売り込むのでしょうか。それとも現地法人や海外の放送局等から「こういう作品が欲しい」という申出を受けて海外展開に当たるのでしょうか。

木下:基本的には,海外の現地法人が営業を担当しております。その中でも,現地法人が「この作品を売り出そう」と仕掛ける場合もあります。例えば香港で20年近く前に放映していた「Dr.スランプ」の再ブーム化を仕掛けました。テレビ放送や商品化,コンビニとのタイアップなどもうまくいき,デパートのイベントや催事等も展開しております。全く認知がないものから流行を作っていくのは非常に労力がかかるのですが,「これは以前ヒットしたよね。それをこういう形で新しく展開できるんじゃないか。」という展開の在り方は,現地でいろいろ考えています。当社は,「ドラゴンボール」や「セーラームーン」などをはじめとして,世界各地で深く突き刺さった作品が多いため,こういったいろいろな展開の可能性を持っていると感じています。
 こうした意味でも,現地での感触・雰囲気や潜在的なニーズを感じ取っている現地法人が重要になります。
 現地法人がヒットの萌芽(ほうが)をうまくつかんで,マーケティングを展開し,ファンにとって受皿となるように作品展開をしていく。海賊版対策を論じる際にもよく申し上げるのですが,海外のファンの方々は,正規品も海賊版も余りこだわらず,海賊版しか見られないから海賊版を見る,という人々も多くいます。そこは潜在的なマーケットがあり,そこにタイムリーにきちんと正規版を流していけば,ファンを正規のマーケットに誘導できると考えています。これからは,ファンにとって魅力的な作品を,いかにしてタイムリーに見せてビジネスを展開する仕組みを作るかが重要になってきます。

作品の海外展開が同時に海賊版対策にもなるということですね。

木下:そうですね。海賊版対策の基本はやはり海賊版の流通を止める,というところになってくるわけですが,作品を見たいと思ってくださっているファンの皆様がいらっしゃるわけですから,そうした方々に対し,その受皿となるような正規のマーケットを迅速に展開していかなければならないとも思っています。
 著作権を守った上で,ファンの皆様に楽しんでいただける正規のマーケットを展開することが,正規ビジネスの拡大につながり,そこから生まれる成果の原作者・権利者の方々への配分を通じて,ファンの皆様に将来喜んでいただける新しい作品の創出につながっていくと考えております。

海賊版といえば,海外において,作品のデッドコピーとは言わないまでも,作品の表現やアイディアが似通った作品に悩まされたことはございますか。

木下:どこまでがまねでどこからがオリジナルと言えるかの線引きが難しいところもあります。当社の作品と非常に似通ったものを見受けることもありますし,特に過去に遡れば遡るほど,そういった例は増えてきます。
 とはいえ,まずは自分たちで強い作品を作って,戦略的に展開していくのが第一ではないかと考えています。「本物」で勝負するという意識が一番大事な所なのかなと思います。
 また,アニメーションも文化ですから,それぞれの作家の先生や製作会社がいろいろな影響を受けて作品を作るのは当然のことだとも考えています。全くのコピーはいけませんが,影響を受けつつそれをどう自分のオリジナルとして昇華させていくかが,製作者としてのアイデンティティでありプライドの源であると思います。

本日はお忙しい中,たくさんのお話を頂きまして,正にアニメーション製作の老舗(しにせ)ならではといったお話も多く,大変興味深く拝聴させていただきました。本当にありがとうございました。

インタビュアー 文化庁長官官房著作権課法規係 伊藤 兼士

木下 浩之
 東映アニメーション株式会社取締役 経営戦略本部副本部長兼海外戦略推進部長
 平成3年4月,株式会社太陽神戸三井銀行(現在は株式会社三井住友銀行)に入行。
 平成16年1月,東映アニメーション株式会社に入社。経営企画部長,コンテンツ事業部長を経て,平成20年6月に取締役に就任。平成24年1月に海外戦略推進部長,同年6月に経営戦略本部副本部長に就任,現在に至る。

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