(3)美術分野

  1. [1] 博物館の管理運営方策の充実
    • ○  博物館(美術館を含む。以下同じ。)は,単に社会教育施設あるいは文化施設であるにとどまらず,地域の生涯学習活動,国際交流活動,ボランティア活動や観光等の拠点ともなる多くのポテンシャルを有した施設である。これらの機能を強化し,コミュニケーションや感性教育,地域ブランドづくりの場といった多面的な機能を備えた新たな博物館像を形成することが重要であり,国としても博物館の新たな機能に着目した支援の充実を図る必要がある。
    • ○  博物館を活性化するため,博物館の管理部門を担う「ミュージアム・アドミニストレーター」とも言うべき専門職員や,美術作品等の保存・修復担当専門職員(コンサベーター),美術作品等履歴管理担当専門職員(レジストラー)等を養成するための研修制度を充実する必要がある。
    • ○  今や博物館の活動は国際社会の中で展開され,特にアジアにおいては我が国のリーダーシップが求められている。関係団体が中心となり,我が国の博物館の国際戦略を構築するとともに,ICOM(国際博物館会議)が定めた「博物館のための倫理規程」を行動規範としつつ,我が国の博物館の倫理規程を策定する必要がある。
    • ○  高齢者や身体障害者,さらには外国人等に対応したソフト施策の充実を図ることが重要である。また,学校教育における博物館活用の促進や鑑賞教育の充実を図るため,各博物館において学芸員や教育担当専門職員(エデュケーター)の配置を促進するとともに,国においては研修制度の充実を図ることが求められる。
    • ○  指定管理者制度の導入から6年以上が経過し様々な事例が蓄積されていることから,国として,博物館が指定管理者制度を導入する際のガイドライン等を作成する必要がある。また,博物館を地域社会における成長分野,情報発信拠点と位置付け,社会的投資に対する社会全体の認識を深めることが重要である。各博物館においては,寄附等外部資金の獲得努力が必要であるが,国として,博物館に対する支援の充実や寄附税制の拡充を図るとともに,登録美術品制度をより利用しやすい制度に改善することが求められる。
    • ○  国立の博物館は,各地域の博物館の学芸員等専門職員の資質向上や,作品の貸出し等ナショナルセンターとしての機能を一層果たしていくことが求められる。そうした機能を適切に果たすとともに,国民共有の貴重な財産を充実するためには,自己収入の増加やそれを円滑に運営に充てることができる仕組みの導入等,現在の制度の在り方や運用の見直しも検討する必要がある。

  1. [2] 美術作品等の鑑賞機会及び美術作品制作等への支援の充実
    • ○  保険料の高騰による国際レベルの企画展覧会開催の障害を除去し,美術作品等へのアクセスを拡大するとともに地域間格差を是正するためには,国家補償制度を導入することが必要不可欠である。国による補償制度の導入は,展覧会の質の向上や美術作品等の適切な保存・安全管理のインセンティブともなるものであり,法制度化を実現することが急務である。
    • ○  アート・フェスティバルの国内開催への戦略的な支援や,地域の活性化や創造拠点の形成にも資する美術作品の制作活動等に対する効果的・効率的な支援方策についても検討する必要がある。

  1. [3] アートマネジメントに関する人材の育成
    • ○  展覧会の企画や必要資金の収集,事業評価等に求められる資質・能力を培う研修など,アートマネジメントに関する人材の育成を図るとともに,それらの人材が活躍できる場の増加を図ることが重要である。

  1. [4] 美術関連資料のアーカイブ戦略
    • ○  関係機関による連携の下,展覧会カタログ等の美術関連資料を適切に保存し,データベース化を進めるとともに,それらの公開・活用を図る必要がある。各博物館においては,所蔵作品の目録(資料台帳)を整備することが急務であり,その上で書誌情報やデジタル画像等のアーカイブを進めることが求められる。
    • ○  博物館,図書館,公文書館等の情報蓄積型施設や大学等が有する貴重な文化資源を,計画的・戦略的に保存・活用することが重要である。そのためには,いわゆるMLA(博物館,図書館,公文書館)や大学等との連携を促進する必要があり,学芸員,司書及びアーカイブに関する専門職員(アーキビスト)がそれぞれ有する知識・技能を活用し,相互の交流を図ることが強く求められる。

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