特定非営利活動法人 芸術家と子どもたち

特定非営利活動法人 芸術家と子どもたち

“子ども一人の「またやりたい」という言葉の価値や意味”

社会的養護下にある障害児等による地域間交流から生まれるパフォーマンス作品の創作と発表を本助成にて行なっている特定非営利活動法人 芸術家と子どもたち(詳しくはこちら)2地域の児童養護施設の連携、そして、アーティスト・ワークショップを開催した結果、そこから見えてきたもの、気付きについてアンケートで答えてもらいました。

今回の事業の中で、貴団体にとって新しい取り組みはありましたか?

当団体の事業の対象地域は都内が中心とです。さいたま市の施設で実施できたこと、また都内(小平市)とさいたま市の交流という形で実施したことは新しい取り組みでした。また、ワークショップ参加者に、施設を退所後、社会人として働きながらグループホームで暮らすメンバーが加わったことや、実施場所を、施設内に限定せずに地域に出かけて行ったことも新しい試みでした。
 さらに、子どもたちの写真や映像の使用に制限があるため、CDという形でワークショップの記録を残すことも初めてのことです。

実施地域や環境を変えたことで得られたことはどんなことでしたか? 具体的に教えてください。

地域や、各施設で、子どもたちや職員体制など児童養護施設の実態が異なることが分かりました。だからこそ施設間の交流をすることで、子どもたちだけではなく、施設の職員の方たちも情報交換ができるなど気づきがあった様子です。 
また、自分が暮らす施設の外に出かけることは、それだけでも子どもたちにとって新しく楽しい刺激となっていたようで、緊張ということよりも、日常から少し離れることで期待感をもって、スムーズに活動へ参加できたように思います。 
そして、新しい出会いや、音楽やダンスがあることで、職員の方からも普段の生活では見られない子どもたちの表情が見られたという声がありました。例えば、一方の施設は高校生が中心で、もう一方は小学生中心のメンバーだったのですが、異年齢の関わりの中で年上の子が年下の子に声をかけてサポートしてくれる場面もありました。さらに、回を重ねて関係性が深まっていくにつれ、年齢差は関係なくなり、お互いに影響を受け合いながら、音楽やダンスを楽しんでくれていたことも良かったと思います。

今回の事業の中で貴団体のもつ特性を活かせたところはどこですか?

これまでの児童養護施設の事業で培ったノウハウを生かして、職員の方々と連携して2施設間の交流を実現できました。また、アーティストとのネットワークを生かして、それぞれ東京と京都を拠点に活動するジャンルの異なる2組のアーティストを起用して、より子どもたちのニーズに柔軟に応えられるようにしました。

ワークショップの始まりは、みんなで手をつないで身体ほぐしからスタート

ワークショップの始まりは、みんなで手をつないで身体ほぐしからスタート
写真/(c)NPO法人芸術家と子どもたち

子どもたちのニーズとは、具体的にどのようなことがありますか?

子どもたちは一人ひとりやりたいことや得意なことが違います。身体を動かすことが好きな子、とにかく特定の楽器をやりたい子、特にやりたいことが定まっていないけれど何かやりたい子など、様々な想いを持っています。なので、アーティストは音楽とダンスの異なるジャンルを柔軟に行き来できる方を起用しました。ダンスや音楽など、いろいろな表現方法を経験できるようにしたことで、一人ひとりの想いに寄り添いながらワークショップの内容をつくっていけたと思います。
また、楽器がやりたい子だったとしても、ダンスの時間も一緒に参加することで、こんな表現もあるんだということを知ることができるので、やりたいことを追求することと、新しい可能性と、両方提示できたのではないかと思っています。

高校生たちのフルートやギターの演奏に合わせ、リズムを感じて踊ります

高校生たちのフルートやギターの演奏に合わせ、リズムを感じて踊ります
写真/(c)NPO法人芸術家と子どもたち

回答ご担当者様個人の回答としてお答えいただければと思いますが、活動を通して、考え方への変化、日常に対する変化などがあれば教えてください。

 「障害者」「児童養護施設」「ダンス」「音楽」など、誰かと何かをする時に、その人や場を、何かの属性やジャンルで分けて考えること、分けないと何か事業が成り立たない(成果が認められづらい)ということがあるような気がします。それでも子どもたちに対して一人ひとりの人として関わって、その時その場にいる人と起こっていく出来事を、枠に縛られずに大切にしていきたいと思います。障害があるから生きづらいだろう、児童養護施設出身だから生きづらいだろう、でもなくて、彼らが持っている優しさや、音楽やダンスを通して表現しているものを、いろんな人と共有して、どうすれば彼らが、そして誰にとっても生きやすい社会になるのか、という対話を広げていきたいと考えています。
 また、外に出かけたり活動を広げたいと思いはするものの、関わり合うのにちょうど良い人数や、活動するのにちょうど良い環境の場所ということを考えると、場を閉じることと広げることのバランスが難しいと感じています。

先の未来にこの課題に取り組みたい、また、こういったことができればいいなと思うことはなんでしょう? 

 ワークショップの最終回に行った発表を終えた後に、参加した子どもたちや関わった大人(職員、アーティスト、見学者、スタッフなど)が、一人ひとり感想を述べる時間を取りました。今年度は一旦終わりになってしまうけれど、お別れという実感がなく、自然と、これからのことを語る時間にもなりました。
 その時に、子どもたちが「またやりたい!」と言ってくれたこと、関わった大人たちも「また続けていこうね」と言い合えたこと、それは大きな収穫であったと同時に、責任も感じました。子どもたちにとっては年度の区切りなど関係ないので、せっかく始めることができた、音楽やダンスをいろんな人と楽しめる場を、当事者の声を聞きながら確実にどうやって続けていけるのかが今後の課題です。
 数値やデータに表れにくい、子ども一人の「またやりたい」という言葉に、どれだけの価値や意味があるのかを、どのように社会に伝えていくのか、そして支援者や、どんな形であっても応援してくれる人を増やしていくことができるのかを、事業を続けていくために考えていかなければならないと感じています。
 また、子どもたちからは回数を増やして欲しいという要望がありました。もっといろんな所に出かけてみること、範囲を広げて関西などへ出かけていくことなど、様々な展開も考えられます。 企画提案をした時には5カ年計画を想定し、交流する地域を広げたり参加者を増やしたりすることを考えていました。
 しかし、参加する子どもたちの実態や、音楽やダンスなどアートを用いることを鑑みると、確かな着地点を描いてそこに向かっていくだけではなく、その時々に起こることや、子どもたちの思いに寄り添いながらいかに柔軟に対応していくかが重要だと感じています。
ワークショップを重ねる過程で、子どもたちとアーティスト、職員の人たちみんなが、音楽やダンスをつくりながら、私たちの想定を超える夢を描いてくれるのではないかという手応えも感じています。そういう新しい展開が生まれる場であって欲しいし、予算面も含めて、新たな可能性を柔軟に実現できるような事業にしたいと思います。

PROFILE

事業団体について
特定非営利活動法人 芸術家と子どもたち

特定非営利活動法人 芸術家と子どもたち

社会的養護のもとにある障害児等による地域間交流から生まれるパフォーマンス作品の創作と発表

本事業では、様々な背景を持ち、生きづらさを抱えながらそれぞれの環境で暮らす障害のある子どもたちや大人たちが、音楽やダンスなどの文化芸術活動を通してつながり、共に作品を創作するワークショップを行い、社会に伝えていけるようなドキュメントを制作します。 障害のほか、被虐待経験の生い立ちや引きこもりなど様々な理由で、社会との接点を持ちづらい人たちが、思い思いの表現活動に取組み、その想いを音楽やダンスという形で社会に伝えていくことで、彼らの社会参加の促進が期待できると考えています。
当事者同士が自発的に表現し交流しながら、生きづらさを軽減できるような居場所を増やし、そしてその場所が、障害の有無や国籍、所得、家庭環境などの差に関わらず多様な人たちに開かれ、かつ互いの多様性を尊重しながら交流できる場となることが、共生社会の実現につながると考えています。

住所:東京都豊島区目白五丁目24番12号
電話番号:03-5906-5705
WEB:https://www.children-art.net/

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