食文化“わざ”継承プログラム
伝統的酒造り 編
食文化を支える無形の“わざ”。私たちが体験する“美味しい”感動は、歴史の中で磨かれ、
受け継がれていく“わざ”によって生み出されます。
12月6日、石川県の中村酒造にて「伝統的酒造り」についての食文化“わざ”継承プログラムが開催されました。
ユネスコ無形文化遺産にも登録されている「伝統的酒造り」。日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術について、
中村酒造・代表取締役社長の中村太郎さん、杜氏(とうじ)の渡辺愛彦さんに学びました。
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こうじ菌を用いた伝統的な日本酒造りは、「世界一難しい酒造り」とも称されるほど繊細なもの。タンクの中で発酵具合が日々変化していくので、杜氏の経験と勘によって培われてきた要素も多く、最近はこうじ菌を使わない酒蔵もあると伺う。中村さんは「酒造りを通して受け継がれてきた文化や歴史を大切にし、継承していきたい」と語ります。
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使用する米や水、気候などによって、地域ごとの特色が出ることも酒造りの面白さの一つ。中村さんも「地酒を“醸す”ということは、その地域で作ることが大切。大地の恵みをいただいて、地元の食事に合 わせた酒を造る。それが昔から伝わってきた日本の文化です」と説明。1年で最も寒い12月~2月頃の冬場に仕込む伝統的な製法である“寒造り”は江戸時代後期から始まりました。
「雪が降ると空気が澄む――これは、雪が空気中のほこりなどを落としてくれるから。酒造りでは、この空気中に含まれる様々な菌が品質を損なう要因ともなるため、昔の人々は空気が清らかになる冬場に仕込みを行うようになった」という話しは、現在では科学的にも説明できる現象です。こうした知恵が、理屈ではなく“感覚”として昔の人々に受け継がれてきたことに、受講者からは思わず納得の表情がこぼれ、理解が深まった様子でペンを走らせる姿が多く見られました。 -
酒蔵では、櫂(棒の先端に小さな板が付いた酒造りの道具)使って酒母をかき混ぜる重要な作業「櫂入れ(かいいれ)」の様子を見学。「この段階で柔らかすぎると発酵が進み過ぎているので温度を下げよう、硬かったら発酵していないな、など自分の感覚が大切になります」と渡辺さん。数値だけでは測ることのできない変化を、自身の経験と感覚で見極めて対応する――杜氏の“わざ”の奥深さをあらためて実感します。
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搾り、火入れ、貯蔵、熟成期間を合わせると、トータルで数ヶ月、長いものになると1年以上の時間がかかる酒造り。中村さんは最後に、未来の継承者に向けたメッセージとして、「今年の酒を飲んで改善点が見つかったとしても、それを実践できるのは来年になります。一年を通して酒造りを楽しめる方。そんな方と一緒に文化を継承し、育てていきたいです」と、笑顔で語ってくださいました。
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