2024年5月27日
生誕1250年記念特別展「空海 KŪKAI ―密教のルーツとマンダラ世界」
奈良国立博物館学芸部列品室長 斎木涼子
「虚空尽き、衆生尽き、涅槃尽きなば、わが願いも尽きなん。」(『性霊集』巻第八)
(この世の全ての物が消滅し、仏法の世界が尽きるまで、私は人々が救われることを願い続ける。)
平安時代初めの仏教界の偉人・空海(774~835)が、人々を救うためにたどり着いたのは密教でした。
仏教発祥の地・インドで誕生した密教は、海と陸のシルクロードを通り、8世紀初め頃に中国へ伝わりました。人生をかけるべき仏の教えを求め、遣唐使の一員として唐に渡った空海は、密教の高僧・恵果との運命的な出会いにより、密教の教えを授かりました。体系的な密教を携えて帰国した空海は、国や多くの人々を守り救うために、ひたすらに密教を広めていきました。
密教は、言葉だけでは全てを理解できない秘密の教えとされます。空海の生誕1250年を記念する本展では、そもそも空海が伝えた密教とは何であったのか、空海が目で見て理解せよと述べたその世界観を、密教のほとけが取り囲む曼荼羅の空間として展示室に展開しています。

国宝 五智如来坐像
京都・安祥寺
本展は、中国・インドネシア・日本に遺された密教美術にまつわる作品を通して、国際的な密教伝来の歴史をたどるとともに、空海が伝えたかった密教の世界観を体感していただくという、これまでにない視点に立った展覧会です。

金剛界曼荼羅彫像群のうち四面毘盧遮那如来
インドネシア国立中央博物館

一級文物 文殊菩薩坐像
中国・西安碑林博物館
そして、空海が直接制作に関わった現存唯一にして最古の両界曼荼羅である「高雄曼荼羅」が、このたび修理後初の一般公開となりました。赤紫色の綾地に金銀泥で描かれたこの曼荼羅は、空海が平安京で最初に拠点とした高雄山神護寺に伝わることから、「高雄曼荼羅」という名で広く知られています。この曼荼羅は、空海が中国・唐で師匠の恵果から授けられた曼荼羅の図様をもとに、淳和天皇の御願により天長年間(824~833)に描かれたと考えられています。1793年に光格天皇の勅願で行われた修理以来230年ぶりに、2016年から6年間にわたって修理が行われ、紫地に金銀で描かれた密教のほとけたちが輝きを取り戻しました。

国宝 両界曼荼羅(高雄曼荼羅)のうち金剛界(部分)
京都・神護寺 (展示期間:5月14日~6月9日)
このほか、空海直筆の書や手紙も多数展示されています。
いまだかつてない空海展を、ぜひ会場でお楽しみください。
奈良国立博物館
(住所)〒630-8213
奈良県奈良市登大路町50番地
- 問合せ
- 050-5542-8600(ハローダイヤル)
- 交通
- 近鉄奈良駅下車 東へ徒歩約15分
またはJR奈良駅・近鉄奈良駅から奈良交通「市内循環外回り」バス「氷室神社・国立博物館」下車すぐ - 開館時間
- 原則9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
※展覧会・曜日によっては延長あり
※最新情報は奈良国立博物館ウェブサイトをご確認ください
- 休館日
- 毎週月曜日(休日の場合はその翌日。連休の場合は終了後の翌日)
12月28日~1月1日
生誕1250年記念特別展「空海 KŪKAI ― 密教のルーツとマンダラ世界」
- 開催期間
- 4月13日(土)~6月9日(日)
- 休館日
- 毎週月曜日(ただし4月29日(月・祝)、5月6日(月・休)は開館)、5月7日(火)
- 開催時間
- 9:30~17:00
※入館は閉館の30分前まで。 - 開催場所
- 奈良国立博物館 東・西新館
- 観覧料
- (当日) 一般 2,000円、高大生 1,500円
(前売・団体) 一般 1,800円、高大生 1,300円
中学生以下無料
※障害者手帳またはミライロID(スマートフォン向け障害者手帳アプリ)をお持ちの方(介護者1名を含む)、奈良博メンバーシップカード会員の方(1回目及び2回目の観覧)、賛助会会員(奈良博、東博〔シルバー会員を除く〕、九博)清風会会員(京博)、特別支援者は無料。
※本展の観覧券で、名品展(なら仏像館・青銅器館)もご覧になれます。
※奈良国立博物館キャンパスメンバーズ会員(学生)の方は400円、同(教職員)の方は1,900円で当日券をお求めいただけます。観覧券売場にて学生証または職員証をご提示ください。 - ホームページ