「誰でもできる著作権契約マニュアル」 第1章 1. (1)

(1)著作物の利用と著作権について
<1> 著作物を作った者が著作者です。
  • 著作物とは、人間の考えや気持ちを創作的に表現したものです。原稿やイラストのような紙などに書かれたものだけでなく、講演会等における講演や即興演奏された音楽なども著作物になります。
  • 著作者とは、「著作物を創作した者」です。講演の場合は講演者、原稿・イラスト・ビデオ等の作成依頼の場合は依頼を受けて作成した者、作品の公募の場合は作品を作り応募した者が著作者となります。
  • 謝金、制作費、賞金等が支払われていても、主催者や依頼者が著作者になるわけではありません(主催者や依頼者を著作者とする旨の契約を結んだとしても、主催者や依頼者が著作者になることはできません。)。
<2> 著作者は自分の作った著作物を無断で利用されない権利を持っていますので、著作物を利用する場合は、原則として著作者の了解が必要です。
  • 著作者は、自分が作った著作物について、無断で利用されない権利(利用してよいかどうかを決定することができる権利)である著作権(財産権)を持っています。
  • 著作物を次のように利用する場合は、原則として、著作者の了解を得る必要があります(詳細を知りたい方はこのホームページに掲載されている著作権テキストまたは著作権Q&Aをご覧ください。)。
    • 著作物をコピー(複製)する[複製権]
    • 著作物を上演または演奏する[上演権・演奏権]
    • 著作物を上映する[上映権]
    • 言語で表現された著作物を朗読(口述等)する[口述権]
    • 美術や写真の著作物を展示する[展示権]
    • 著作物を放送や有線放送したり、ホームページ等へアップロードし送信する[公衆送信権等]
    • 著作物を譲渡または貸与する[譲渡権、貸与権、頒布権]
    • 著作物を翻訳、編曲、変形、翻案して二次的著作物を創作する(例:日本語の小説を英語に翻訳する。小説を映画化する。マンガ のキャラクターを立体化し、フィギュア人形にする等)[翻訳権・翻案権等(二次的著作物の創作権)]
    • 二次的著作物を利用する(例:英語に翻訳した小説を出版する、小説を映画化した映画をDVDにコピーする等)[二次的著作物の利用権]
<3> 実演家、レコード製作者、放送事業者および有線放送事業者も、自分の行った実演、レコード、放送および有線放送の利用について、著作者に類似した権利(著作隣接権)を持っています。
  • 実演家(実演を行った者)、レコード製作者(音を最初に録音した者)、放送事業者(放送を行った者)および有線放送事業者(有線放送を行った者)も、自分の実演、レコード(音を録音したもの)、放送および有線放送について、無断で利用されない権利(利用していいかどうかを決定することができる権利)である著作隣接権を持っています。
  • 実演を次のように利用する場合は、原則として、実演家の了解を得る必要があります(詳細を知りたい方は文化庁ホームページに掲載されている著作権テキストまたは著作権Q&Aをご覧ください。)。
    • 実演を録音または録画する[録音権・録画権]
    • 実演を放送または有線放送する[放送権・有線放送権]
    • 実演をホームページ等へアップロード(送信可能化)する[送信可能化権]
    • 実演の録音物または録画物を譲渡する[譲渡権]
    • 実演の録音された音楽CD等の市販用レコードを貸与する[貸与権]
  • レコードを次のように利用する場合は、原則として、レコード製作者の了解を得る必要があります(詳細を知りたい方は文化庁ホームページに掲載されている著作権テキストまたは著作権Q&Aをご覧ください。)。
    • レコードをコピー(複製)する[複製権]
    • レコードをホームページ等へアップロード(送信可能化)する[送信可能化権]
    • レコードを譲渡する[譲渡権]
    • レコードが複製された音楽CD等の市販用レコードを貸与する[貸与権]
  • 放送や有線放送を次のように利用する場合は、原則として、放送事業者や有線放送事業者の了解を得る必要があります(詳細を知りたい方は文化庁ホームページに掲載されている著作権テキストまたは著作権Q&Aをご覧ください)。
    • 放送や有線放送を受信して、コピー(複製)する[複製権]
    • 放送や有線放送を受信して、放送または有線放送する[(再)放送権、(再)有線放送権]
    • 放送や有線放送を受信して、ホームページ等へアップロード(送信可能化)する[送信可能化権]
    • 放送や有線放送を受信して、大型スクリーン等に映し出す[テレビジョン放送の伝達権]
<4> 著作者や実演家は、自分の著作物や実演に関して、人格権を持っています。
  • 著作者や実演家は、自分の著作物や実演に関して、人格的な利益を守ることのできる権利(著作者人格権または実演家人格権)を持っています。
  • 著作者の持つ著作者人格権は次のとおりです(詳細を知りたい方は文化庁ホームページに掲載されている著作権テキストまたは著作権Q&Aをご覧ください。)。
    • 未公表の著作物を無断で公表されない権利[公表権]
    • 著作物を公表する際に著作者名の表示方法を決定できる権利[氏名表示権]
    • 著作物の内容・題号を意に反して改変されない権利[同一性保持権]
  • 実演家の持つ実演家人格権は次のとおりです(詳細を知りたい方は文化庁ホームページの著作権Q&Aをご覧ください。)。
    • 実演を公表する際に実演家名の表示方法を決定できる権利[氏名表示権]
    • 名誉・声望を害するような実演の改変をされない権利[同一性保持権]
<5> 音楽CD等に収録されている音楽のように、コンテンツによってはその利用の際に複数の者の了解が必要になることがあります。
  • たとえば、1枚の音楽CDに収録された音楽には、歌詞や楽曲等の音楽作品としての「著作物」、歌手や演奏家による「実演」、レコード製作者が収録した音としての「レコード」が同時に複製されており3種類の権利が別々に存在することになります。
  • そのため、たとえば音楽CDに収録された音楽をコピーする場合は、著作者である作詞家や作曲家、実演家である歌手や演奏家、そして音を録音したレコード製作者のすべての者の了解が必要ということになります。
<6> 書籍、絵画、音楽CD等を購入しても著作権や著作隣接権を得たことにはなりません。
  • 「著作権」と「所有権」は別の権利です。書籍、絵画、音楽CD等を購入した場合、それらの所有者にはなりますが、その中に含まれている著作物や実演等の著作権や著作隣接権が譲渡されたことにはなりません(したがって、購入者は、例外に該当する場合を除き、権利者の了解を得ずに、書籍や絵画や音楽をコピーしたり、インターネットで配信したりすることはできません。)。著作権や著作隣接権の譲渡は別途契約が必要になります。
<7> 著作権は譲渡できますが、著作者人格権は譲渡できません。
  • 財産的な権利である著作権(上記<2>で説明した権利)や著作隣接権(上記<3>で説明した権利)は、譲渡することができます(権利を持っている人を著作権者または著作隣接権者といいます。)。
  • 一方、人格的な権利である著作者人格権や実演家人格権は譲渡できないことになっています(著作者人格権や実演家人格権を譲渡する旨の合意をしてもその合意は無効になります。)

コラム 著作権の保護期間について
 著作権の保護期間は、原則として、著作者の死後50年までとなっています。そのため、著作者の死後50年を経過した著作物については、自由に利用できることになっています。しかし、著作権の保護期間については、様々な例外がありますから注意が必要です(例えば、第2次世界大戦中に対戦国の国民が著作権を有していた著作物については「戦時加算」という制度があり、保護期間が10年余り長くなることがあります。)。また、法人が著作者となる場合や映画の著作物の保護期間にも注意が必要です。なお、保護期間について詳細を知りたい方は文化庁ホームページに掲載されている著作権テキストまたは著作権Q&Aをご覧ください。

コラム 例外的に了解を得ないで著作物等を利用できる場合について
 著作権法では、著作物等の私的な使用のためのコピー等、一定の例外的な特別な場合には、権利者の了解を得ずに著作物等を利用できることとされています。しかし、これは例外的なものであり、様々な条件が付されていますので注意が必要です。なお、詳細を知りたい方は文化庁ホームページに掲載されている著作権テキストまたは著作権Q&Aをご覧ください。